彩音は、ある時点から見知らぬ女と度々出会うことに気づいた。
それは、彼女が住む雇用促進住宅の前の路上であった。
さらに、買い物の途次に、彩音を待っていたように女が眼前に立っていたのである。
相手の女は、常に彩音を冷笑するような気味の悪い視線を向けていた。
それは、自分に向ける敵意に満ちているような、ぞっとするような、人を見下げるような悪意に満ちたような視線であった。
「あなた、変な女が私を見張っているようなのよ。とても、気味が悪い!」彩音は昭に訴えていた。
その女の正体こそアンナだった。
昭は、露骨なまでのアンナの彩音に対する付きまといに困惑する。
だが、昭は男の狡さから、アンナに対して彩音への付きまといを見過ごしてきたのだ。
そして、事件は起きた。
アンナが、あろうことか妊娠した彩音の腹部を正面から怒りに任せて、下駄の脚で蹴ったのだ。
雇用促進住宅には風呂があったが、彩音は時々、好んで街の銭湯に行っていた。
そして、その日はアンナも同じ銭湯に居合わせていた。
裸体の彩音の母体を眼前としたアンナの怒りが、強度までも異常に爆発したのである。
先に銭湯を出ていたアンナは、彩音を許せないと身勝手までにも興奮して待っていたのである。
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