長寿社会の現代。
医療は多くの人々を支える重要な役割を果たしている。
「危機の時代に生きる希望の哲学」
沈黙の臓器の腎臓
成人の約8人に1人が慢性腎臓病を患っているそうである。
気付かない間に腎機能が低下し、進行すると透析や腎移植に至る。
血液をろ過して尿を作る腎臓は、その過程で、体内の水分量や体液の成分が一定になるようコントロールしている。
また腎臓は、各臓器に酸素を届けるために赤血球を増やしたり、血圧を調整する指令を出したりしている。
血液は腎臓1日に何度も流れ込み、ろ過され、常にきれいな状態に保たれている。
そして極力、無駄な老廃物だけを輩出するようにしている。
腎臓は生命の恒常性を維持する「命を守る土台」と言える。
人体のネットワークを円滑に調整する要の役割を果たしている。
この腎臓とともに、人体にとって有害な物質を分解する肝臓の役割は、生命活動の源となることから、中国伝統の医学でも重要視され「肝腎=大切な」という言葉も生まれた。
健康という観点からの予防の智慧。
早期発見・早期治療が大切である。
歩くことの効用「病気が少ない」「消化がよい」「よく思索できる」
これは現代医学との見解とも一致する。
周囲の人に尽くす生き方。
つまり、利他の行動が健康に良いのだ。
「支援する生き方」「支援される生き方」で、死亡率は違う。
他者に対して支えとなる生き方を貫いた人は、そうしなかった人と比べ長生きする。
現代はストレス社会といわれるが、周囲のために動いたり、優しくしたりする利他の行動で、脳内のオキトシンというホルモンが分泌される。
このオキトシンには、ストレスの軽減に大きな効果を持つことが分かっている。
まさに利他の行動こそ、身体も心も健康にするものだ。
他者に尽くすことは自分のためにもなっているのである。
利他という行動に触発され、あらゆる生をはぐくむ、生命本源の力が慈悲や英知のエネルギーとなって、絶え間なくわきあがるのだ。
他者のために心を砕き、他者に勇気と歓喜を与える行動には、自分だけでなく、周囲も健康にする力がある。
まさに他者に尽くす行動こそ「命を守る土台」であり、その心が広がっていくことこそ「健康の世紀」を開く鍵である。
目の前の一人一人に成長のために心を尽くす「人生の師」の姿を目の当たりにし、利他の心の大切さ素晴らしさを高校生の時に学んだことが生涯の財産となっています。そして、人生の師との出会いが、人々の健康も守る医師を志す原点になっています。
自他共の幸福の道を開く最高の生き方を教えていただい師への感謝を胸に、どこまでも苦悩を抱える方々に寄り添い、真心の励ましを送りながら地域の人とともに利他の心を広げていく決意です。
医師 金子 洋子 つくばセントラル病院理事長