創作 人生の命題 8)

2024年09月13日 11時09分03秒 | 創作欄

漆原将司の母親里子は、あろうことか、娘たちのを説得して、自分が信奉する宗教への入信を導いたのである。

将司は、妹たちに「若いくせに今時、宗教でもないだろう。よく頭で考えろよ」と翻意を促したが彼女たちは全く聞く耳をもたなかった。

「医学部へ進学していた秋子の妹まで、何故なんだ」彼は頭が混乱するとともに、母親を激しく憎むこことなる。

そして、大学を卒業したことを期に、家を出た。

彼は母親が願っていた教師になることもなく、新宿の証券会社に勤務する。

何度も、彼が住む三鷹のアパートに母からの手紙が来ていたが、その手紙を一度も読むことはなかった。

太宰治の終焉の地である三鷹の住人となっことで、彼は太宰を偲んで独り酒を飲むこととなる。

母親は酒を飲めなかったが、彼は酒好き、そして、ギャンブル好きの父親の血を引く息子であったのだ。

 

 


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