『負け犬の遠吠え』(酒井順子著/講談社刊)という本が売れ、女優の杉田かおるの結婚・離婚騒動が話題になったことで、「負け犬」という言葉が世間に定着した。

また、ビジネス界では「負け組」という言葉をよく耳にする。そうした負け犬(組)はなぜ早死になのか、データをもとに明らかにし、様々な格差に悩む人がどうすれば健康に、幸せになれるかを説く。

要約

「負け犬」は早死にか?

 今の日本では、未婚で子供を生まない女性、あるいは既婚でも子供を持たない女性は、社会にとって有害な存在であるかのように思われている。

 その最も大きな原因は少子化である。

 森喜朗前総理は「子供を生まない女性には年金を支給すべきではない」などと発言し、物議を醸した。つまり、未婚の女性、子供を生まない女性に、目に見えない形で圧力を加えようとする動きが始まったのだ。

有配偶はがんによる死亡が最も多い

まず、男性ですが、有配偶ではがんによる死亡は最も多く36%であるのに対し、未婚や離別男性のがんでの死亡率は低いようです。

その代わり、未婚も離別も自殺での死亡割合が高く、未婚で7%、離別で4%となっています。

しかし、これは、全年齢を対象としていますので、未婚の自殺割合が高くなってしまうのは、15~44歳までの男性の死因の第1位が自殺であるためで(2018年人口動態調査より)、決して「未婚だから自殺が多い」ということではありません。

後ほど出てくるグラフにありますが、45~64歳での自殺構成比は未婚より有配偶のほうが多く、さらに離別のほうが圧倒的に多いのです。離別男性の自殺が多い点については、以前『「離婚した男性」の自殺はなぜこんなに多いのか』という記事に考察を書いていますので、ご参照ください。

女性は有配偶より未婚・離別のほうが長生き!?

一方、女性のほうは未婚が82歳、離別が81歳と女性トータルの88歳よりは早いですが、男性ほどその差に開きがありません。何より、女性の場合、未婚および離別という独身のほうが、有配偶より長生きしている点が特徴的です。有配偶女性の死亡年齢中央値は約78歳ですから、有配偶男性の81歳よりも早いということになります。言い換えれば、結婚している夫婦の場合、女性より男性のほうが長生きだということになります。

もちろん、夫婦は夫が妻より年上の場合が多いので、実際夫が妻より先に亡くなるパターンが多くなるわけですが、配偶関係別に見た場合、女性は夫がいる有配偶状態が最も早死にしているという事実は驚きではないでしょうか。

配偶関係別の死亡状況全体の傾向をまとめると、男性の場合、有配偶より独身のほうが短命で、女性の場合は、独身のほうが有配偶より長生きという、男女で正反対の構造になっています。「一人になってしまうと生きていけない男、一人のほうが長生きできる女」と言っても過言ではないかもしれません。