現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

止まらない少子化と増え続ける財政赤字-このままでは日本は確実に破綻する-

2023-04-16 10:18:09 | 政治
 最近、国では次元の異なる少子化対策というような言葉で少子化対策を打ち出そうとしている。日本の人口動態を考えると、遅きに失したという状況にあるが、いずれにしても今の日本にとっては少子化対策が喫緊の課題であることは間違いない。

 まずは2020年の人口ピラミッドを見てみよう。



 日本の人口は約1億2500万人で、14歳以下が約1,500万人(約12%)、15歳から64歳が約7,400万人(約59%)、65歳以上が約3,620万人(約29%)となっている。
 日本の歴史上、最も出生数が多かった団塊世代が前期老年人口となっており、その子供達の層であり、年間200万人前後の出生数であった団塊ジュニア世代が40代で生産年齢人口を支えている構図となっている。2020年時点で、退職となる60歳から65歳の人口に比べ、新たに就職する18歳から22歳の人口が少なくなっており、企業が人手不足になることがはっきりと認識できる。

 次に今から約20年後の2040年の人口ピラミッドを見てみよう。2012年の出生数は80万人を切っており、彼らが20歳になる頃の人口ピラミッドである。



 年少人口のうち15歳の数を見ると80万人を超えているが、この推計よりも現実の出生数の方が少ないので、年少人口はさらに減るだろう。
 2040年の推計値では、日本の人口は110,919千人(約1億1千万人)で、14歳以下が約1,200万人(約11%)、15歳から64歳が約6,000万人(約54%)、65歳以上が約4,000万人(約35%) となっている。
 日本の将来推計人口(平成29年推計)(中位推計)(国立社会保障・人口問題研究所)

 この人口ピラミッドで団塊ジュニアは65歳を超えており、現在の日本の年金制度が維持されていれば年金を受給する状況となる。生産年齢人口は2020年に比べ5%減少し、高齢者は6%も増加しており、年金を支えるためには現役世代の保険料負担を増やさざるを得ないだろう。さらに、年金だけではなく、高齢者の医療費を現役世代が支えているため、現役世代の社会保険料はさらに増えるだろう。
 現状では、この2040年の人口ピラミッドの15歳以上の部分はほぼ確定であるため、上記のように現役世代の社会保険料負担は確実に増大するのである。ただし、高齢者が多く死ぬような感染症の流行、地震や戦争などにより人口の構造が大きく変動することがあれば人口ピラミッドの形状も大きく変動する可能性がある。


 次に、日本の財政状況を見てみよう。



 国債発行残高は平成10年(1998年)頃から急速に増え続け、現時点では1,000兆円を超える状況となっている。他方で利払費は日本銀行による金融緩和、ここ10年間は異次元緩和によって金利を低く抑えているため(近年はマイナス金利政策を導入)、平成12年(2000年)から低下し、低い水準で推移している。しかし、日本銀行が金融緩和をやめれば金利が上昇し、利払費も増え続けることになる。
 財政に関する資料(財務省)

 債務残高の国際比較(対GDP比)



 日本の財政赤字は対GDP比で250%を超えており、ワースト2位のイタリアの約150%に比べても突出していることがわかる。このような巨額の財政赤字を抱える日本で、高齢化がどんどん進展しており、本来は歳出削減と歳入確保(増税)によって財政均衡あるいは財政黒字を確保していく必要があるにも関わらず、選挙のことしか頭にない政治家は借金によるバラマキに終始しているのである。

 日本の人口ピラミッドと財政状況を見れば、このままでは日本が破綻することは確実である。選挙での勝利が最大目的の政治家と現状維持を望み変化を嫌う国民の組み合わせから、日本は確実に破綻するだろう。

 破綻を回避するための方策はないのだろうか。

 まず1点目は、財政赤字を解消するため、財政収支の黒字化を達成することが必要である。毎年、国の予算では歳入(収入)よりも歳出(支出)が大幅に上回り、年間30兆円もの借金(赤字国債が約30兆円、建設国債を含めると約37兆円の借金)をしているのである。新たな借金をせずに収支を均衡させる(借金の利払費は借金で賄うことも可能)のがプライマリーバランスの黒字化、借金の利払費も含め、新たな借金をせず、むしろ借金を減らしていくのが財政収支の黒字化である。プライマリーバランスの黒字化ではなく、財政収支の黒字化まで進まなければ、財政赤字を解消することはできない。
 財政収支を黒字化するためには、既得権益となっている各種団体への補助金の見直し、給付と負担の見直しなどによって歳出削減を図るととともに、資産課税の強化を含めた税制の見直し(増税)や租税特別措置法による法人への優遇措置を見直すことにより歳入の確保を図ることである。

 2点目として、増え続ける高齢者への支出の見直しが挙げられる。国の予算に占める社会保障費の額は増える一方(1990年度に11.6兆円だった社会保障費が2021年度には35.8兆円にまで増加)である。年金に57.7兆円、介護に12.3兆円、後期高齢者医療費に14.5兆円を要しており、これだけで年間84.5兆円を使っており、これらの費用を税金、社会保険料のみならず借金でまかなっているのが日本の現状となっている。
 日本国民の金融資産は2000兆円を超えているが、その6割以上を60歳以上の高齢者が保有している。年金しか収入がない高齢者の多くは住民税非課税世帯に該当するだろうが、他方で、多額の金融資産を保有しているのである。金融資産も確実に把握し、資産の多い高齢者には自己負担を増やしていただくことが必要だろう。高齢者の年金や医療費の多くを現役世代が負担しているが、現役世代の負担を軽減し、高齢者の負担を増やすことが日本の持続可能性を守るために必要であり、また、少子化対策にとっても必要だろう。

 3点目は若者の非婚化、晩婚化対策である。今も日本政府は次元の異なる少子化対策を検討しているが、少子化の大きな原因として若者の非婚化、晩婚化が挙げられる。なぜ若者が結婚しないのか、なぜ結婚できないのか、その原因を調べ、対策を打つことが必要だ。新自由主義の要請に基づいて非正規労働を拡大したが、非正規労働の範囲を小泉政権以前、あるいは橋本政権以前にまで縮小し、若者が正規労働者となれるような労働改革が必要ではないか。

 4点目は生産性の向上である。中小企業、特に小規模零細企業の労働生産性は大企業の半分にも満たない。



 しかし中小企業は日本企業の99.7%を占め、中でも小規模零細企業が全企業の84.9%を占めている。生産性の低い企業を市場から退出させ、M&Aなどにより中規模企業を増やし、さらに大企業化を促進するような対策を取ることで、少子化によって生産年齢人口が減る中でも日本の生産性が向上し、その結果として日本の経済成長、労働者の賃金上昇に結びつくのである。

 5点目は移民労働者の積極的な受け入れである。現在、技能実習生制度が存在するが、これも限定的で外国人労働者にとって不利益な制度となっている。日本の賃金が国際的に低下する中で、積極的な外国人に日本に移住してもらうため、外国人がより日本で働きやすく、さらに権利を保障し、日本人と同等の待遇を得られるような制度を構築する必要がある。

 いずれも今の日本では採用されることはないだろう。従って、今の日本の状況では、日本は衰退し続け、いずれ破綻するのである。日本の将来を考えるのであれば、人口動態と財政状況をしっかりと認識し、対応を考える必要がある。
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国際情勢の捉え方-アングロ・サクソン的視点からの脱却-

2023-01-15 17:09:29 | 政治
 文藝春秋2023年1月号に「ウクライナ戦争の真実 プーチンの論理と日米関係の矛盾」という対談記事が掲載されている。この中でエマニュエル・トッド氏は、ロシアの方針を普遍主義的特殊主義と呼んでいる。それぞれの国家の特殊性を尊重し、自国の価値観を強制しないという普遍的な態度である。

 歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏は、世界の家族制度を研究した結果、、「第三惑星」という著書の中で、1、外婚制共同体家族、2、内婚性制共同体家族、3、非対称共同体家族、4、権威主義的家族(直系家族)、5、平等主義核家族、6、絶対核家族、7アノミー的家族、8、アフリカ・システムの8つの型を提示している。

 直系家族は、親子関係は権威主義的であり、兄弟間は不平等である。この直系家族に分類されるのは、日本、韓国、ドイツ、スエーデン、スコットランド、アイルランド、そしてユダヤの家族制度もこれであるという。
 平等主義核家族は、親子関係は自由主義的であり、兄弟間は平等主義である。この家族の型はパリ盆地を中心とするフランス北部、イベリア半島の大部分=スペイン、ポーランド、ルーマニア、ラテン・アメリカ諸国の地域が平等主義的核家族になる。
 絶対核家族は、親子関係は自由主義的であるが、兄弟関係は平等に対する無関心が特徴である。この家族類型はイングランド、そしてアメリカに見られるものであり、アングロ・サクソン的なものである。
 外婚制共同体家族は、親子関係は権威主義的であり、兄弟関係は平等主義的である。この家族の型はイタリアのトスカーナを中心とするイタリア中部、ロシア、中国、ベトナム、フィンランド、ブルガリア、旧ユーゴスラビアなどである。

 個人主義を徹底し、ホモ・エコノミクス(合理的経済人。全ての行動が合理的で、自己利益を最大化するために行動する人間)を前提とし、個人の自由を最大限の尊重する現代のグローバル・スタンダードは絶対核家族であるアメリカ、イギリスで生まれたものである。
 アングロ・サクソンの家族形態は絶対核家族であるため、イギリス連邦を構成しているアングロ・サクソンが支配的なカナダやオーストラリアも違和感なく受け入れる価値観である。(ちなみにG7を構成する国は、 日本、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアの7カ国であり、このうちアメリカ、カナダ、イギリスの3カ国がアングロ・サクソン系である。)
 この徹底的な個人主義、集団ではなく個人の自由を最大限尊重する個人主義を世界の各国は受け入れられるのであろうか。

 イスラム教が支配的な地域では内婚制共同体家族が一般的である。中国やロシアは外婚制共同体家族である。日本やドイツは直系家族であり権威主義的とされている。
 イギリスやアメリカが自分たちの価値観、すなわち絶対的な個人主義(各個人が何をするのも自由であり、個人の自由が最大限尊重される必要があるという個人主義)を各国に強制しようとしても、そもそもの家族制度が異なるため受け入れられない地域があるのは当然である。

 2022年2月、ロシアがウクライナを侵攻し、それに対し西側諸国と西側メディアは徹底的にロシアを批判している。ロシアのウクライナ侵攻は国際法違反であり、ウクライナの主権を侵すものであり、認めることができないのは当然である。しかし、その後、西側諸国、西側メディアはロシアのプロパガンダに勝るとも劣らないような一方的な報道を繰り返している。
 例えば、ノルドストリームの爆破についてもロシアが行ったものであるかのような報道を行っていたが、その後の経過や検証については報道がなされていない。これについてロシア国防省はイギリス海軍が関与しているとの見解を示している。
 また、ポーランドにミサイルが着弾し、住民が死亡した事件についても、ウクライナはロシア軍による攻撃だと主張していたが、アメリカのバイデン大統領は否定的な見解を示しており、その後、この問題についての報道は行われていない。
 G7諸国をはじめとする西側諸国では、イギリス・アメリカ的価値観が支配的価値観となり、それに異を唱えるものは報道では見られないような状況となっているのだろう。

 アメリカやイギリスは自国の価値観(絶対的個人主義)が絶対的なものであるかのように、世界中にその価値観を強制するような立場で国際社会の中で立ち回っている。それに対し、中国やロシアは、各国には各国の価値観があり、それぞれの価値観に基づいた国家運営があるべきだという立場で英米に対抗しているように感じる。

 サウジアラビアがロシアや中国との関係を強化しようとしているのは、英米的価値観(絶対的個人主義)の強制に対する反発なのではないか。日本のメディアでは、G7などの西側諸国が全て正しく、中ロなどは権威主義的国家であり間違っているという前提で国際社会に関する報道を行っているように感じるが、世界各国からすれば、欧米による一方的な価値観の押しつけと捉えられても仕方が無いだろう。

 また、欧米社会そのものが個人主義が絶対であり個人の権利は全て擁護されなければならないというものへの反発を抱えている。アメリカではトランプ熱狂支持者のように、排外主義的で権威主義的な人達が一定の勢力を持っている。イギリスは国民投票によってEUから離脱し、スエーデンでも右翼政党(スエーデン民主党)が閣外協力をする右派政権が誕生し、イタリアでもムッソリーニが率いたファシスト党の流れを引く政党が政権を握った、フランスでは以前から国民戦線(フロン・ナシオナール、現在は国民連合)が勢力を強め、ドイツではAfD(ドイツのための選択肢)が勢力を強めており、欧米諸国で右翼・極右政党が伸張しているのである。日本でも自民党反主流派(自民党右派、右翼)である安倍派が政権を担っており、岸田政権になっても安倍派への配慮が非常に強いものとなっている。

 中国の台湾に対する圧力を問題にする報道が多く流れるが、以上のような国際社会の状況を踏まえれば、アメリカ、イギリス的な価値観(絶対的個人主義を根底に置く価値観)で状況を判断するのではなく、より幅広い視点から事象を捉えることが必要だろう。
 さらに、アメリカは自国の覇権を守るために、半導体製造装置の輸出規制などにより中国のこれ以上の経済的な勢力拡大を阻もうとしている。日本は、集団的自衛権を主張し、敵基地攻撃能力(反撃能力)を身につけ、アメリカと共同戦略をとろうとしているが、仮に中台紛争が発生し、そこにアメリカが軍事的に介入すれば、集団的自衛権の行使として日本の自衛隊が米軍と共同で行動し、その先には、日本本土が戦場に化すこともあるだろう。

 NHKの国際情勢に関する報道は、アメリカ・イギリス的な視点に基づいた報道を繰り返している。「民主主義国家vs権威主義国家」という構図で国際情勢について繰り返し報じているが、エマニュエル・トッド氏の分類であれば、ロシアや中国のみならず、日本やドイツも権威主義国家であると言えるだろう。
 放送法では、放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを義務づけているが、NHKは放送法など念頭にないような一方的な報道を行っている。

 国際情勢に関しては、NHKなどの偏った報道に影響されることなく、幅広い視点から物事を捉え、判断することが求められているのである。  
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物価対策と財政のバラマキ-衰退しつつある日本-

2022-09-10 11:47:04 | 政治
 岸田政権は、9月9日に、住民税非課税の1,600万世帯への5万円の給付金(総額約9千億円)や、ガソリン価格の高騰押さえるための石油元売り会社への補助金の延長(費用約1兆3千億円)などを柱とする物価対策を決定した。この対策の中には、等道府県や市区町村が発行するプレミアム商品券などに使う地方創生臨時交付金6,000億円も含まれている。
 この財源には予備費が使われるが、この予備費の財源(裏付け)は赤字国債である。

 この物価高は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの回復による需要の増加に加え、サプライチェーンの混乱、ロシアのウクライナ侵攻に伴う先進国のロシアへの経済制裁が原因となっている。
 また、アメリカやEU各国が物価高対策として中央銀行の金利を引き上げたことから、マイナス金利政策を取る日本銀行との金利差が大きくなり円安が急激に進んでおり、輸入価格が上昇していることも、物価高の原因となっている。

 ウクライナ情勢がどうなるのか先が見通せない。ロシアが占領しているドンバス地域などの奪還に向け、ウクライナ軍が反撃を行っているが、そのウクライナ軍に対してはアメリカやイギリスが武器を提供し続けるので、ウクライナ兵士の補給さえあれば反撃をやめることはないだろう。ウクライナでは18~60歳までのウクライナ人男性は出国が禁止されており、彼はいずれ徴兵されることから、ウクライナ兵士は長期間にわたって補給されるだろう。ウクライナはロシア軍が撤退すれば別だが、プーチン氏が大統領である限りロシアと戦争を続けるだろう。つまり、ウクライナとロシアの間で停戦協定が結ばれることはないだろう。

 このため、先進国のロシアへの経済制裁は長期間になると思われるので、日本の物価上昇は一時的なものでなく、長期にわたるのではないか。市場関係者や経済アナリストは物価の上昇は定着しないとの見方だが、今までも市場関係者や経済アナリストの予測の多くは外れている。

 資源価格の高騰に加え、円安が加わることで、日本の物価上昇率は2%ではなく、さらに上昇するかもしれない。その時に、賃金上昇率がこの物価上昇率を下回れば、人々の実質賃金は低下し、国内消費は低迷してしまうだろう。

 そうなれば、日本政府は、今回の物価高対策と同じように、またまた赤字国債を発行して国民に対するバラマキを拡大させるのだろう。現時点でも、赤字国債によって、つまり将来世代に負担を押しつけ、物価高対策を行っているが、こういう政策が継続されるのだろうか。
 そしてどんどん積み上がる赤字国債(=財政赤字)。日本の財政赤字はGDP比で200%を超え、先進国ダントツの赤字比率となっており、EUであれば認められない水準まで悪化している。
 その財政赤字、つまり赤字国債を日本銀行が異次元緩和の名前で買い支えている。財政法で禁止されている「財政ファイナンス」を日本銀行が行うことで、国債の利回りを抑えているのである。

 将来世代への負担の押しつけ、将来需要の先食いは、日本の潜在成長率をさらに引き下げるものであり、日本の将来をさらに暗くするものである。このまま財政赤字を増やし続け、バラマキを行い、現状維持を図るようなことを繰り返せば、日本はいつまで経っても賃金が上昇せず、他方で財政赤字が膨らみ、「老衰国家」となって死にゆくことになるだろう。
 政府が破綻に近い状況になって改革をすれば、多くの国民が預金を失うという酷いことになる。つまり、急激なインフレによる貨幣価値の大きな低下(1個130円のハンバーガーが500円に値上げ、コンビニ弁当が1500円に値上げなど)によって実質的な預金の目減り、あるいは、預金に対し税率50%の預金税を課税するなどの歳入確保によって預金が失われるのである。
 今から、多少の痛みを伴ったとしても、金融資産課税の強化や法人税率の引き上げなどによる財政の健全化を図る必要がある。
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歪んだNHKニュース-NHKが垂れ流すプロパガンダ-

2022-08-10 20:57:32 | 政治
 数年前からNHKの報道姿勢には疑問を抱いている。つまり、NHKの報道姿勢が、第2次安倍政権成立のときから、政権にとって都合の良い報道を行うようになったと感じる。それ以前は、与野党双方の言い分を放送し、さらに政権(自民党政権、民主党政権にかかわらず時の政権)の主張の疑問点を指摘するような報道だった。しかし、現在は自民党の広報番組とも言えるような報道になっている。さらに、ロシアのウクライナ侵攻をめぐっては、アメリカの戦略に従った報道を行うようになったと感じる。このNHKの姿勢は当面変わることはないだろう。であれば、今後、NHKがどのような報道を行うのか予想してみよう。

 まず、9月に予定されている安倍元総理の国葬である。NHKはこの国葬を生中継するだろう。そして、その中で、過去の安倍元首相の国会での所信表明演説や答弁を垂れ流すだろう。その答弁が虚偽答弁であるか、質問をはぐらかした答弁であるかは全く関係ない。視聴者に訴えかけるような映像を垂れ流すだろう。
 森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会に関する問題、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「統一教会」という。)との関連を示す問題にはほとんど触れないのではないか。特に、統一教会との関係については一切触れないのではないか。統一教会との問題こそが、安倍元総理への銃撃事件の原因となったにも関わらず、NHKは視聴者の安倍元総理への印象が悪化するような問題には触れないだろう。
 そして、憲法改正に関する報道についても、安倍元総理が望んだ自民党改憲草案の反民主主義的、国家主義的な観点を隠蔽しつつ、視聴者が自民党の憲法改正草案に賛成するよう誘導するような報道を繰り返すだろう。

 国際社会をめぐる問題については、アメリカの戦略に則った報道を繰り返すだろう。
 まず、ウクライナ侵攻問題では、徹底的にロシアを悪と決めつけた報道を繰り返すだろう。ロシアへの経済制裁によって原油価格や天然ガス価格が上昇しているが、それはすべてロシアの責任だという報道を繰り返すだろう。サハリン2に対する日本の権益についても、すべてロシアの責任だという報道をするだろう。
 ウクライナの人達が犠牲になった場合でも、全てロシアの責任だとするだろう。ゼレンスキー大統領がロシアと交渉し、妥協点を見出せばウクライナの人達の犠牲は食い止められるが、戦闘を続行し、国民の被害を拡大させるゼレンスキー大統領は正義を実現する偉大な英雄として報道するだろう。

 アメリカが最も警戒する中国についても、同様の報道を繰り返すだろう。中国は悪であり、中国の習近平主席は独裁政治を行っており、ウイグルやチベットの人達の人権を侵害している。習近平体制は悪の政権であり、アメリカや日本、台湾は正義を実現する素晴らしい政府だという報道を繰り返すだろう。
 中東問題についても、イスラエルとサウジアラビアは正しい、シリアとイランは悪の国だという姿勢で報道を行うだろう。

 特に、自民党保守派の悲願である憲法改正をめぐって、中国やロシアの脅威を繰り返し視聴者に訴えかけ、外国からの軍事的脅威に対抗するためには日本国憲法の改正、特に憲法第9条の改正が必要だというような報道を行うだろう。

 放送法の第4条では、「第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
 一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二 政治的に公平であること。
 三 報道は事実をまげないですること。
 四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」
と規定しているが、NHKの報道姿勢は放送法を無視しているようである。

 アメリカではFOXニュースがキリスト教福音派などの保守層のためのニュースを放送しているが、日本では、日本放送協会という公共放送が自民党のためのニュースを報道しているような印象を受ける。
 NHKスペシャルなどの素晴らしい番組も制作しており、政治が絡んでいないような部分では公共放送の名に恥じない放送をしていると感じるが、政治に関連するNHKニュースについては、自民党のプロパガンダを垂れ流すような報道機関となっているように感じざるを得ない。
 ここまで堕ちたNHKニュースをNHK関係者はどのように感じているのだろうか。
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ロシアのウクライナ侵攻に関する報道-プロパガンダ-

2022-07-16 12:01:41 | 政治
 ロシアのウクライナ侵攻に関する報道が繰り返されているが、その報道内容には常に驚かされるものがある。
 今の西側のメディアは「ウクライナ=善、ロシア=悪」という単純で感情的な二元論で報道を行っており、ロシアが行っていることは全て悪であり、他方でウクライナが行っていることは全て善であるというものである。ロシアの軍事侵攻が国際法上許されないことは当然である。その点で、ロシアが批判され続けられることは当然のことである。

 しかし、ウクライナの実態がどのようなものであったのかを報道するものはほとんど見かけない。
 2004年の「オレンジ革命」と呼ばれているものの実態や2014年の「マイダン革命」と呼ばれているものの実態、ウクライナの経済状況や人口動態などについて、全くと言って良いほど触れられていない。
 「独立以降、産業・貿易構造の転換を果たせていないことが、今に至るまでのウクライナの経済の不調の根幹にある。さらに、産業・貿易構造の転換を本来なら促すべき政治が長期にわたって不安定であり、堅実な経済運営がなされてこなかった。そうした中でIMFやEUから課された構造調整策がウクライナの経済の体力を奪うという構造が出来上がってしまったと言えよう。」(「マクロ経済の視点から見たウクライナ問題」土田陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング))

 不安定な政治状況の中で、コメディアンであったゼレンスキーが大統領に選ばれ、素人政治家のゼレンスキー大統領がどのような政治を行っていたのかなどについては、報道されることがない。ポピュリズム政治を行っていたのか、あるいは、ウクライナの将来のことを念頭に行政運営をしていたのか、全く不明である。
 ミンスク合意「2014年に始まったウクライナ東部紛争を巡る和平合意。ロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの首脳が15年2月にベラルーシの首都ミンスクでまとめた。ロシアを後ろ盾とする親ロ派武装勢力とウクライナ軍による戦闘の停止など和平に向けた道筋を示した。大規模な戦闘は止まったものの合意後も断続的に戦闘が続いた。」(日本経済新聞、2022年2月24日)をウクライナのゼレンスキー大統領は履行することなく、反故にしていたが、それがロシアの軍事侵攻を招く大きな理由だったのではないか。

 ロシアが軍事侵攻をした理由は何か、それまでのウクライナをめぐる情勢はどのようなものだったのか、ウクライナの国内の動きはどうだったのか、アゾフ大隊とはどのような組織なのか、ドンバス地方をめぐる動きはどうだったのか、ミンスク合意はどうなったのか、NATOの動きはどうだったのか、NATOの拡大に対するロシアの対応はどうだったのか、など、重要な情報は全く報道していない。

 「「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。」(「第三次世界大戦はもう始まっている」エマニュエル・トッド著、大野舞訳、文春文庫)
 世界的な知性であるエマニュエル・トッドの指摘の方が正しいのではないか。

 ロシアのウクライナ侵攻に関する話題について、日本のメディアは公平・公正な視点で報道をして欲しいものである。現状では、ロシアの報道はプロパガンダと決めつけている西側のメディアであるが、日本をはじめとする西側メディアの報道もまたプロパガンダではないかと強く感じてしまう状況である。
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