メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

1、祈ってみたりもするけれど

2011年12月12日 | 月夜の散歩
実家に着いたのはもう深夜1時だった。

勝手口を開けると台所のストーブの前で半纏にくるまって眠らされているジャムの姿がすぐそこにあった。

第一印象はまさに死にゆく最中といった感じだった。
目は開かず、体も動かせず、呼吸の度に全身を小刻みに震わせていた。

母が起きて世話をしていたが僕は駆け寄りジャムをさすりながらひとしきり泣いた。

抱っこしてみると恐ろしく軽かった。
母が「もう体重も2キロ台になっちゃったのよ」と言った。
そして「さよならする時はこうしておかあさんの腕の中よ、約束よ」と抱っこしていた。

普段一緒に暮らしている母には完全なる覚悟が出来上がっているようでまるで動揺の様なものは無かった。

ご飯は食べないが水を口元に持っていったらたくさん飲んだ。

そうして母の布団の中に寝かせる。
どうか明日も生きていますように、と祈るように。

その後僕はネットで老犬介護の経験者達の記事を明け方まで読み、
ジャムに出来る事は何か?を考えていた。


翌朝まだ眠りの中に体半分以上が居るような状態でも僕はジャムの事を考え始め目が覚めた。

まだ生きていた。

父が庭を歩かせていた。
相当よぼよぼだがまだ歩けることが嬉しくて少しホッとした。
母同様父も覚悟しているようで、もう病院などには連れていかず自然に逝かせてやろうといった考えである。

僕も同じだが、ジャムが生きている間はほんの僅かでも苦しんで欲しくないし、
ほんの僅かでも生命の営みを行おうとしている間は手助けしたいと考えた。

僕は近所のショッピングモールのペットショップに行き液状の食事を直接口に流し込む為の道具を探す。
見つけられなかったので店員さんに聞く
店員さんが僕に
「老衰ですか?何も食べませんか?」と聞いてくる
僕は
「老衰ですね。もう3日も何も食べないんです」
と言うが、言い終わりで思わず涙がこぼれそうになった。

そうして勧められた注射器状の餌やり道具とほとんど水のような介護食、
さらに寝心地の良さそうな、暖かそうなベットを買って帰る。

帰ってすぐにベッドに寝かせ半纏をかけ早速その餌を試す。

するとジャムは力強くペチャペチャと飲んでくれた。
それだけで泣くほど嬉しかった。

コレで少しでも寿命が延びてくれれば・・・と少しだけ希望を抱いた。

ずっとジャムのそばに居た。
やがて夜も更けた。

そうして翌日の会社に備え後ろ髪をひかれる思いで実家を後にした。

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