情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

共謀罪隠しか?!~検察官の取調が録音録画化へ~百害あって一利なし

2006-05-10 00:31:36 | 適正手続(裁判員・可視化など)
共謀罪の参考人質問が行われ,強行採決が噂された5月9日,検察官取調の一部が録音・録画されることが発表された。共謀罪の反対理由として日本の刑事手続きにおける人権侵害の実態があったが,密室での取調への批判をかわそうという思惑があったのだろうか?!しかし,この録音録画化は,百害あって一利なし。絶対に阻止しなければならない。一部でも録音・録画されたら前進だという評価もありうるだろうが,それは取調の実態を知らない者の評価だというほかない。

朝日新聞(ここ←)によると,具体的な録音・録画の内容は次のとおりだ。

■■引用開始■■

 最高検によると、ビデオ撮影を実施するのは、裁判員制度の審理対象となる、殺人や現住建造物等放火などの重大事件に限定。いずれの事件でも警察の捜査段階でのビデオ撮影は実施せず、送検後の検事の取り調べに限って行うとしている。

 事件ごとの担当検事が、容疑者が強制でなく、自分の意思にもとづいて供述したかどうかが公判の争点になる可能性があると判断した場合、容疑者に告げて撮影を行い、撮影場面も検事が選択する。

 具体的には、取り調べの中で、容疑者が(1)犯行の経緯を供述(2)警察官作成の調書が強要されたものでないかどうかの確認のため、その作成状況を供述――などの場面での撮影が想定されている。

 ただし、捜査の過程で、客観的な物的証拠や、容疑者だけが知りうる「秘密の暴露」を含む自白調書を得ている場合、撮影の必要はないとしている。

■■引用終了■■

すなわち,①警察官の取調は対象とならず,検察官の取調のみで,②重大事件のみで,③全過程ではなく検察官が必要だと判断した場面のみを録音・録画し,④秘密の曝露がある場合は録音録画されない~というもの。

はぁ,警察は対象とならない~。
警察の最初の取調でガンガン責め立てるんだろうが。
検察の取調なんてほとんどが一丁上がった後の話ではないか。
逮捕したときから警察に連行される過程も含め,警察の支配下にある時間は全て録音・録画されるべきだ。
警察で痛めつけられて「正直に」「自白」するようになった後で,検察官の取調を録音・録画しても仕方ないだろ。
かえって,適正にしていますから,という宣伝に使われるだけだ。

はぁ,重大事件のみ。簡単な事件だからこそ,面倒くさいから,強引に自白に持ち込んで終わらせることだってある。

はぁ,全過程を録らないぃ。
意味ないじゃん。自白を強要してその気にしたところから,はい,スタートって撮り始められたって,そんなのには意味がない。

しかも,読売(ここ←)によると,【法務・検察当局が検察官による容疑者取り調べの一部を録音・録画する「可視化」の試行を決めたことについて、最高検は9日、録音・録画は容疑者に事前に告知した上で実施し、拒否された場合は差し控えるとの見通しを示した。】ということだ。

はぁ,本人が拒否したら撮らないぃ。
拒否しているかどうか後になってしまったら分からないじゃないか。違法な取調をしておいて,「いやぁ,本人が拒否したもんですから}なんて言うつもりだろう!

共謀罪にも腹が立つが,今回の一部録音・録画化は,完全に社会をなめ切っているというほかない!

朝日によると,【これに対し、警察庁では、事件の初期段階から取り調べを行う警察は検察と立場が違うので、可視化を検討することはないとしている。】という。

初期段階だから必要なんだよ!!!!!!!!!!!

渥美東洋京都産業大学法科大学院教授も,「一部であれば,検察側に都合の良い部分だけを有罪立証の材料に使われる恐れがある」(東京新聞)とばっさり。

取調の可視化をこのような形で導入するのは絶対に反対だ。



※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。