tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

今いちばんエッジの効いているテレビ番組 NHK Eテレ「ねほりんぱほりん」

2017-01-19 13:09:34 | 雑感
「エッジの効いている」などという手垢のついた表現を、恥ずかしげもなく使ってしまった。
でも、この表現がぴったりくる。NHK Eテレの「ねほりんぱほりん」

「顔出しNGのワケありゲストはブタに、聞き手の山里亮太とYOUはモグラの人形に扮することで
「そんなこと聞いちゃっていいの~?」という話を“ねほりはほり”聞き出す新感覚のトークショー。
作りに作り込んだEテレお得意の人形劇と、
聞いたこともないような人生の“裏話”が合体した人形劇×赤裸々トーク(番組公式サイト)


これまでのゲストは、「偽装キラキラ女子」「元国会議員秘書」「元薬物中毒者」
「二次元しか本気で愛せない女たち」「ハイスぺ婚の女」「保育士」「宝くじ1億円当せん者」
「痴漢えん罪経験者」「占い師」「養子」「億り人(すご腕投資家)」「ナンパ教室に通う男」。

番組の存在に気づいたのは放送途中からだが、なんだ、再放送を通じて、全ての回を見てるわ。

顔出しNGのワケありゲストに、いかに本音を喋らせるか。
「モザイクをかける」という処理方法はありきたりだし、犯罪者や密告者などを連想させ、
どうしても雰囲気が硬くなる。仕上がりがそういう画になると想像されてしまえば、
ゲストから滑らかなトークは引き出せない。見ている方も、延々モザイクが続くのは辛い。
そもそも、たとえ仕上がりで正体をぼかそうとも、「カメラを向けられた」時点で、
普通の人なら大いに身構えてしまうだろう。
ならば、ということで、このキャラクター化が図られたのか。
聞き手の山里亮太、YOU、さらにスタッフさえもキャラクターにしてしまい、
すべてを人形劇に仕立てることで、独特な世界観を作りあげた。
“場の世界観”は大事だ。
「徹子の部屋」の出演者は「徹子」なりのトークの流儀に自然と導かれるわけだし、
「新婚さんいらっしゃい」の出演者は「新婚さん」なりのトークの流儀に自然と導かれる。
昨今の情報番組・バラエティー番組では、「顔を映しときゃ画が引き立つだろ」とでも言いたげな、
「スタジオゲストのリアクションの小窓」をVTRの最中に漫然と切り替え続ける
安直な手法が依然流行のようだが、
(これを指す業界用語「ワイプ」も今や注釈抜きで使われるようになってきている)
それに対するアンチテーゼと言ってもいい。
視聴者は、ある種無機質な
(と言っても、振付、小道具、カメラワークなどに周到な演出が施されているのは間違いないが)
「ぬいぐるみの顔」に、喋り手の生々しい表情を読み解こうとするのだ。
出演者の顔が映らず、声を頼りにし、声に聞き入ろうとするがゆえに、引き込まれる。
その意味で、山里とYOUというキャスティングも絶妙。声を聞けば誰かすぐにわかるもの。
特に、ラジオでも鳴らしている山里など、うちのお袋はその存在について「声から知った」らしく、
「テレビで見て、こういう人(ビジュアル)だったのねと初めてわかった」などと言っている。
逆に言えば、「声から、喋りから、人を引き込める」才能が山里にはあるわけだ。

単純に裏話を訊いてみたくなるタイプのゲストもいる。
(「元国会議員秘書」「元薬物中毒者」「占い師」「保育士」)

見つけ出す苦労、出演を口説く苦労が窺われる特殊な境遇のゲストもいる。
(「宝くじ1億円当せん者」「億り人(すご腕投資家)」「痴漢えん罪経験者」「養子」)

社会的に広く知られているとは言えない存在にスポットを当てる感度の良さもある。
(「偽装キラキラ女子」「ハイスぺ婚の女」「ナンパ教室に通う男」「二次元しか本気で愛せない女たち」)。

しかし、これら、「特殊な人々の特殊な生態」を聞き出すだけでは、
「エッジが効いている」とは言えない。
この番組は、その名の通り、深く掘り下げていることに醍醐味がある。
「ナンパ教室に通う男」など、軽薄な題材と思いきや、ゲストの「暗部」に見事に切り込んでいた。
「偽装キラキラ女子」「ハイスぺ婚の女」など、人生相談の体をなすような回もある。
不覚にも、泣きそうになる回さえある。

「あのNHKが!」「しかもあのEテレが!」という驚きの表明は、
事情通を気取りたがってるみたいであまり気乗りしないが、
「ヤン坊マー坊」風のシュールなアニメが出てきたり、
YOUがことあるごとに「SEX」と連呼したり、
「具体的な企業名・商品名は表示しない」のが“鉄の掟”と思われるNHKの番組において、
(NTTドコモの施設を取り上げた昨晩の「探検バクモン」でも、
 案内役社員のジャケット胸の小さな社名ロゴに、きっちりボカシをかぶせていた)
「ハッピーターン」だのなんだのの具体的な商品名がそのまま発言として電波に乗ったこともあるし、
映し出された資料に消費者金融の社名が堂々と出ていたこともあった。
些末なしきたりに囚われない“番外地”であるのなら、それは結構なことだ。

ところで、僕には、今後この番組でゲストに呼んで欲しい人がいる。
「生活保護のケースワーカー」だ。

生活保護「なめんな」、上着にプリント 小田原市職員ら

神奈川県小田原市の生活保護を担当する職員らが「保護なめんな」などの文字をプリントしたジャンパーを着用して職務にあたり、生活保護家庭への訪問時に着用することもあった。2007年以来使っていたという。

ジャンパーは胸のエンブレムに「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」や、×印がついた「悪」の字がある。背中には「私たちは正義。不正を見つけたら追及する。私たちをだまして不正によって利益を得ようとするなら、彼らはくずだ」と不正受給を批判する内容の英文が記載されている。

小田原市では07年、生活保護費の支給を打ち切られた男が市職員3人を杖やカッターナイフで負傷させる事件があった。市によると、当時の生活保護担当職員らが事件後、不正受給を許さないというメッセージを盛り込み、このジャンパーを作った。その後、担当になった職員らが自費で購入。現在は28人が所有しているという。

市は、16日付でジャンパーの使用を禁止。加藤憲一市長は17日、「配慮を欠いた不適切な表現であり、市民の皆様に申し訳なく、おわびします」とのコメントを出した。市は、監督する立場の福祉健康部長ら同部職員7人を厳重注意とした。部を所管する加部裕彦副市長は給与の10分の1を1カ月間辞退する。(朝日新聞)


彼らもこのジャンパーが、コンプライアンス的・倫理的にまずいということは充分承知であったろう。
公になれば批判を浴びせられ、重大問題化することもたやすく想像できただろう。
“にもかかわらず”、28人もの職員を連帯して行動させるに至った動機とはなんだったんだろうか?
しかも、こういった「福祉職員の反逆」は、今に始まったことでない。(「福祉川柳事件」など)。
「不適切な行動だ」と責め立てているだけの“お上品な”議論からは、本質が見えてこない。
彼らのポリシーは…?モチベーションは…?ストレスは…?
現場に何が起きていて、そこにいる人間が何を考えているのか、タブーなき本音をぜひ聞いてみたい。