環境が万全ではないけれど、生き物を飼育する飼い主さんについて、私は悪い場合もあれば、いい場合もあると思います。飼育されている生き物が本当に幸せならば、環境が万全でなくてもいいのではないかと。
もちろん、一番幸せなのは、環境が万全で、飼い主もちゃんと知識があって、愛情もあることです。でも、本当に愛情があれば許される場合もあるのではないかと思います。もちろん、環境や知識をないがしろにしていい、というわけではありません。ペットショップのスタッフだった時の、一つのお話をしたいと思います。
あるとき、とっても困った顔をして、一人の少年が私に聞いてきました。
「僕の魚が背骨がすごい曲がってしまったんです。何とか治す方法はないですか?」
話を聞くと、とても大きくなる魚をほかのお店で買って、当然どんどん大きくなりますが彼の資金ではとても用意できないぐらいの大きな水槽が必要なのに買えないようです。しかも与えているのがクリルのみ。さあ、どうしましょう。
もはやどうしたって治せません。魚を診てくれる先生は少数います。けれどどう考えてもここまでひどく曲がってしまうとどうにも治しようがないでしょう。餌も問題です。クリルはおいしいのでよく食べます。でも栄養バランスがよくないので、おやつ程度か具合が悪い時にどうしても食べてほしい時にあげるとか、お家に来たばかりでナーバスになっている魚にとりあえず落ち着くまであげる程度にとどめてほしいところです。でも彼としては高価です。もちろん一番の問題は大きくなるのに水槽が用意できなければ買わなければいいというところです。売ってしまったお店が当然一番悪いです。でもほかのお店がやらかしたことです。
そうですね、治りませんと突き放すこともできますね。もうけを考えれば私のお店の健康なおんなじお魚を売り、その子の魚は捨ててしまえば、なんて答え方もあります。えんえん叱ることもできますね。どうしましょう。
話をさらに聞くと、彼はかなりのお店をまわっておんなじ質問をしたみたいです。そして、彼としては高価な、そしてよく食べる餌をあげています。彼は本気です。私はそう思いました。きっと、大事な大事なお友達なんです。だから聞いて回っているんです。背骨が曲がってしまったお魚はかわいそうです。でも愛されています。捨てるつもりはさらさらないようです。私は決心しました。
「正直に言うけれど、治らないよ。本当はもっともっと大きな水槽が必要だし、ごはんもクリルだけではいけないよ。栄養のバランスが悪いんだ。よく食べるよね?おいいしいからね。高いしお世話頑張ったと思うよ。一つだけ約束してくれる?その子を捨てないでほしいんだ。かわいがっているからそんなことしないよね。今からもっとひどくならないことを考えようよ。水槽を広くするのがいいけれど、難しそうだね。ごはんだけでも変えてみようよ。お魚を食べるお魚だよね。バランスよくいろんな種類のお魚をあげて欲しいんだ。でももしかしたらお金がかかるかもしれないね。近くの川があるよね。あそこで小魚を捕まえてきてみて。そうして一度冷凍してね。寄生虫が怖いんだ。それを溶かしてあげてごらん。時々生きたお魚をお店で買って少しだけでいいからあげてね。大きい本がお店のカウンターの中にあるよ。図鑑みたいで大きいの。いつでもいいから読みに来て。カウンターのイスも使っていいよ。みんなに言っておくからいつでも貸してあげるよ。」
怒りもしませんでしたし、もうけもないですし、時間も使いました。でも彼にしてあげられる精一杯のことを私はしました。それに魚は幸せだと思いました。大きい魚をきちんと最後まで飼える大人はそういません。お金があったとしても、思い通りに育たなければ・・・色が出ないとか、ひれが欠けたとか・・・でぽいっ、です。それで新しいのをぽんと買います。魚は本来の寿命をまっとうできないでしょう。ここまで体にゆがみが来ていれば、内臓だって傷んでいます。広い水槽も望めません。でも幸せだと思いました。
彼はそれから頻繁に私のお店に来てくれました。本を読むためです。もちろんもうけはないです。でも、きっと将来とってもいい飼い主さんになるでしょう。それで私は満足です。もしかしたら、お魚さんの病気を治せる獣医さんになってくれるかもしれません。飼われている魚も、納得してくれると思います。
いまごろ彼はどうしているかな、と時折思います。大人になってどんなふうになっているかなって。すてきな男性になっているでしょうね。私のことも・・・覚えていてくれたらうれしいな。そして、ぜったいあの背骨が曲がった魚のことは、一生忘れないと思います。
もちろん、一番幸せなのは、環境が万全で、飼い主もちゃんと知識があって、愛情もあることです。でも、本当に愛情があれば許される場合もあるのではないかと思います。もちろん、環境や知識をないがしろにしていい、というわけではありません。ペットショップのスタッフだった時の、一つのお話をしたいと思います。
あるとき、とっても困った顔をして、一人の少年が私に聞いてきました。
「僕の魚が背骨がすごい曲がってしまったんです。何とか治す方法はないですか?」
話を聞くと、とても大きくなる魚をほかのお店で買って、当然どんどん大きくなりますが彼の資金ではとても用意できないぐらいの大きな水槽が必要なのに買えないようです。しかも与えているのがクリルのみ。さあ、どうしましょう。
もはやどうしたって治せません。魚を診てくれる先生は少数います。けれどどう考えてもここまでひどく曲がってしまうとどうにも治しようがないでしょう。餌も問題です。クリルはおいしいのでよく食べます。でも栄養バランスがよくないので、おやつ程度か具合が悪い時にどうしても食べてほしい時にあげるとか、お家に来たばかりでナーバスになっている魚にとりあえず落ち着くまであげる程度にとどめてほしいところです。でも彼としては高価です。もちろん一番の問題は大きくなるのに水槽が用意できなければ買わなければいいというところです。売ってしまったお店が当然一番悪いです。でもほかのお店がやらかしたことです。
そうですね、治りませんと突き放すこともできますね。もうけを考えれば私のお店の健康なおんなじお魚を売り、その子の魚は捨ててしまえば、なんて答え方もあります。えんえん叱ることもできますね。どうしましょう。
話をさらに聞くと、彼はかなりのお店をまわっておんなじ質問をしたみたいです。そして、彼としては高価な、そしてよく食べる餌をあげています。彼は本気です。私はそう思いました。きっと、大事な大事なお友達なんです。だから聞いて回っているんです。背骨が曲がってしまったお魚はかわいそうです。でも愛されています。捨てるつもりはさらさらないようです。私は決心しました。
「正直に言うけれど、治らないよ。本当はもっともっと大きな水槽が必要だし、ごはんもクリルだけではいけないよ。栄養のバランスが悪いんだ。よく食べるよね?おいいしいからね。高いしお世話頑張ったと思うよ。一つだけ約束してくれる?その子を捨てないでほしいんだ。かわいがっているからそんなことしないよね。今からもっとひどくならないことを考えようよ。水槽を広くするのがいいけれど、難しそうだね。ごはんだけでも変えてみようよ。お魚を食べるお魚だよね。バランスよくいろんな種類のお魚をあげて欲しいんだ。でももしかしたらお金がかかるかもしれないね。近くの川があるよね。あそこで小魚を捕まえてきてみて。そうして一度冷凍してね。寄生虫が怖いんだ。それを溶かしてあげてごらん。時々生きたお魚をお店で買って少しだけでいいからあげてね。大きい本がお店のカウンターの中にあるよ。図鑑みたいで大きいの。いつでもいいから読みに来て。カウンターのイスも使っていいよ。みんなに言っておくからいつでも貸してあげるよ。」
怒りもしませんでしたし、もうけもないですし、時間も使いました。でも彼にしてあげられる精一杯のことを私はしました。それに魚は幸せだと思いました。大きい魚をきちんと最後まで飼える大人はそういません。お金があったとしても、思い通りに育たなければ・・・色が出ないとか、ひれが欠けたとか・・・でぽいっ、です。それで新しいのをぽんと買います。魚は本来の寿命をまっとうできないでしょう。ここまで体にゆがみが来ていれば、内臓だって傷んでいます。広い水槽も望めません。でも幸せだと思いました。
彼はそれから頻繁に私のお店に来てくれました。本を読むためです。もちろんもうけはないです。でも、きっと将来とってもいい飼い主さんになるでしょう。それで私は満足です。もしかしたら、お魚さんの病気を治せる獣医さんになってくれるかもしれません。飼われている魚も、納得してくれると思います。
いまごろ彼はどうしているかな、と時折思います。大人になってどんなふうになっているかなって。すてきな男性になっているでしょうね。私のことも・・・覚えていてくれたらうれしいな。そして、ぜったいあの背骨が曲がった魚のことは、一生忘れないと思います。