内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

融ける北極海の氷海 (その2)

2012-10-03 | Weblog
融ける北極海の氷海 (その2)
 夏になると、特に8月から10月に掛けて北極海の氷海が縮小し、地球規模での温暖化の進行として懸念される一方、夏期限定ではあるがシベリア大陸やカナダ領の北方諸島との間に海路が出来るなど、ビジネスチャンスが広がっている。
 北極海の氷原の動きについては、アラスカ大学の国際北極研究センターが衛星写真を長期に亘りモニターし、夏期に氷原が縮んでいる状況を公開しているが、日本の宇宙航空研究開発機構も2012年8月、北極海の氷原が近年で最も縮小していることを公表し、また米国宇宙航空局も同様の分析結果を公表している。
 1、縮む北極海の氷海は地球温暖化の警鐘か (その1で掲載)
 2、北極海に広がるビジネス・チャンス 
 北極海の氷海が縮小し、シベリア大陸やカナダ領の北方諸島との間に海路が出来ると、北極海航路や資源開発などビジネスチャンスが広がる。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路」である。将来海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となる。もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路」である。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。
 また北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 このように北極海の氷原の縮小は温暖化への警告であるが、現実論として北極海に新たな経済開発の可能性が出て来ている。
 北極圏問題については、ノルウエーに北極評議会が設置されており、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することを目的として協議が重ねられている。北極海周辺に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国と外延のアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成され、日本のほか、中国、韓国などがオブザーバーとして参加できることになっている。
北極点の周辺には大陸はないが、周辺5カ国による大陸棚の線引きの問題について、2008年5月、周辺5か国は、国連海洋法条約(1982年に採択)に基づいて解決策を見出すことで合意し、当面領有権などを凍結している。しかしより長期の視点が必要であると共に、海運や資源開発等の面で国際的なガイドラインが必要になっていると言えよう。北極海の気象情報や航路情報を提供するシステムや緊急時の援護システムなども必要になって来よう。
 だが北極圏に広がるビジネスチャンスは、同時に温暖化への警鐘でもあるので、南極大陸同様、北極における大陸棚の領有権の凍結や調査・研究を除く経済活動の制限など、国際管理が必要になっていると言えよう。
(2012.08.12.)(Copy Right Reserved.)(不許無断転載・引用)

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