内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

2012-12-14 | Weblog

日本の選択―消費増税、景気対策、原発、統治機構―

 12月16日の総選挙にむけて、12の政党の論戦も終盤に入った。今回は戦後50年以上続いた自民党から政権交代を実現した民主党政権の3年3ヶ月間の実績が問われることになる。しかし政権交代を遂げたばかりの新政権が3年3ヶ月で個々の政策の全てを実現することは政党がどこであれ所詮困難なことは明らかであり、個々の実績を問うことはあまり意味がない。今回の総選挙における基本的な国民の選択は、どの政党を選ぶかではなく、日本の民主主義制度、従ってその下での統治機構、今後の制度設計をどうするかであり、非常に大切な選択を行わなくてはならない。争点となっている主要な問題に沿って選択肢を提示し、国民の選択に委ねたい。

1、 消費税増税の実施 VS 制度改革による抜本的コスト削減

消費税増税か否かが問われているようだが、消費税増税法案は8月に民主党の他、自民、公明、国民新党の賛成で可決されており、日本維新の会の石原代表も消費税増税に支持を表明しているので、この5党が支持する限り総選挙後の国会で2014年4月からの実施を止めることは困難であろう。法案実施上の条件は、経済情勢の好転であるが、日本の産業回復に最も関係する為替水準など、国際経済情勢が大きく影響するので、それを現在予想、判断することは難しい。

問われるべきことは消費税増税への賛否ではなく、破綻状態の国民年金や借金依存の国家財政を増税前に大胆なコスト削減など、どう改革するかであろう。

増税に賛成している5党なども、国家財政は福祉予算を中心として増税や公債発行をしなければ立ちいかないことは承知の上での増税であるので、そうであれば抜本的な行・財政改革と議員制度改革によりコストを削減しなければ国家財政の立て直しは困難であることは理解出来るであろう。

財務省も他省庁の横並びから、国民から抜本改革への信託を受けた政党、政権が方針を示さない限りなかなか抜本改革を行えないのも事実だ。もっとも、日本が厳しい財政の中で国難に遭遇しているわけであるので、行政当局も抜本的なコスト削減を図らないと行・財政の立て直しは図れないことを自覚し、抜本的コスト削減に取り組んで欲しいものだ。

2、 公共事業増加による景気対策 VS 円高是正や企業減税等の産業振興策

自・公両党が消費増税と建設国債の発行を前提として、年間10兆円から20兆円の公共事業により景気の回復を図るとしている。伝統的な景気対策であり、一定の効果は期待できる。しかし国民総生産への寄与は2%から4%程度と限定的である上、建設国債も国の借金であることには変わりがなく、将来世代が支払わなくてはならない。1990年半ばよりのバブル経済崩壊後、公共事業による景気対策が繰り返されたが、結果として公的債務は1、000兆円超に積み上がった。その利払いを含む公債費は毎年20兆円を超え、税収等の歳入の半分内外に達しており、借金のツケで毎年20兆円以上が消えている。

 更に公的債務を増やすべきであろうか。

 ここ2、3年の最大の問題は実体経済を越える過度な円高であり、円高の是正が行われなければ日本の輸出産業や裾野の中小企業が壊滅的な打撃を受けるであろう。逆に1ドル90円から100円への円安、ドル高是正が図られれば輸出産業や裾野の中小企業の再起が図られ、景気は改善し、雇用も戻るであろう。景気や雇用回復のためには、産業を回復することが第一であろう。

 また消費増税を実施するとしても、景気へのマイナス要因を少なくするために企業税や地方事業税の引き下げの他、生前贈与税の引き下げ、公益事業団体への出資、拠出への更なる優遇税制を行うなど、企業活動や個人、団体活動を促進することが望まれる。

 一部で日本の消費税は欧米より低いとの評もあるようだが、消費税の外にガソリン税や暫定税率、自動車関係諸税や環境税、復興税、各種の公共手数料などが存在しているので、消費税増税を行うのであれば、これらを原則撤廃することも景気対策、生活支援になろう。

 しかし既存の制度や既得権や既得利益に立つ限り、これらの措置やコスト削減は困難であろう。

3、 原発依存からの脱却 VS 結論先送り

福島原発事故により原子力発電の安全性が問われ、自民党の結論を3年後とするとの先送り論以外は、ほとんど全ての政党が原発依存を低めることで一致している。

 争点は、直ちに原発ゼロとするから2030年以降にゼロとするなど、期間の問題となっている。理由は、原発ゼロとした場合の電気料金引き上げによる経済的影響である。

 しかし原発を日本の国土で継続するか否かは、経済や日常生活への影響などではなく、日本の国土で原発の安全性が保てるかどうかという国民の生存、近隣地域社会の存続という根本的な問題なのである。巨大地震が何時来るか、巨大津波が何時来るか、誰にも予測は出来ない。また巨大災害は待ってもくれない。

 地域住民の生命と健康の問題が掛かっている以上、国民から信託を受けた政府としては、安全が確認されなければ原則として原発は再開も存続もさせないということで仕方がないのではないか。電力コストの問題については、電力会社のコスト削減努力、競争原理の導入、地域間の電力融通、電力源の多様化など、多様な選択肢がある。また電力の節減努力も必要であろう。

 しかしこの選択も、既存の制度、既得権益に立脚している限り困難であろう。

4、 統治機構の選択― 中央統制型行財政 VS 主権在民の地方分権型統治

中央統制型統治か、主権在民に立脚した地方分権による統治かは、民主党が実現できなかった課題である。戦後の統制経済の時期を経て、50年以上にわたって構築された行・財政制度であるので、3年3ヶ月の政権交代で変えられるものでもない。

 “政治主導”という言葉がマスコミで踊り、民主党は官僚を使うのが下手であると旧政権与党や一部保守層が批判しているが、主権在民のもとで国民より信託された政権与党が政治を主導し、基本的に行財政当局がこれを誠実に執行することは当然のことであろう。しかし残念なことに、日本は行政当局もマスコミや伝統的な有識者も政党が交代する本格的な政権交代に不慣れであったため、政権が交代しているにも拘らず、予算の削減、優先度の変更、予算の組み換えなどを行政当局に迫って反発され、一部メデイアも制度擁護に回った。欧米のどの国でも政権交代が有り、方針も変わる。それが国民の選択だからである。日本の各分野、各層が政権交代、政策の転換に慣れる必要がありそうだ。もっとも政権運営に経験のない一部閣僚等が、政治主導の意味を誤解し、上から指示すれば官僚が従うような高圧的な態度を取り対立を増幅させたと見る向きもある。これが事実だとすると残念であるが、やはり人を動かすためには一定の信頼関係と説得努力が必要であろう。

 上記の問題の他、破綻状態の国民年金を含む社会保障制度の改革、TPPへの交渉参加(自由化の促進か農業保護か等)、憲法を改正し、米国との集団的安全保障の実施や国防軍の創設を容認するか、そして議会運営の改善など、今後の日本の進路を左右するような重要な課題が提示されている。しかし個々の問題で政党を評価しても余り意味がない。これらの問題は全て、既存の行・財政制度や既得権益に立脚して解決を図るのであれば、何を言っても大きな変化は望めないことは経験済みだ。

現在直面しているのは、戦後の統制経済を経て確立されて来た中央統制型の行・財政制度や議会制度、運営のあり方など、統治制度をどうして行くべきかという根本的な問題なのであろう。その判断は国民の選択に委ねられている。

 (2012.12.14.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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