『生きる僕ら』 原田マホ著 徳間文庫
いじめからひきこもりとなった24歳の麻生人生。
八ヶ岳の自然、離婚、認知症まで
現代の世相を巧みに取り入れた小説。
残されていたのは年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。
「もう一度会えますように。私の命があるうちに」
マーサ婆ちゃんから?人生は4年ぶりに外へ。
祖母の居る蓼科へ向かうと予想を覆す状況が待っていた。
人の温もりに触れ、米作りから大きく人生が変わってゆく。 (解説より)
婆ちゃんが孫に見せたい風景があると連れ出したのが、
なんと御射鹿池だった。
新緑の溢れる緑を映す鏡のような湖面、
そこに現れた幻のような一頭の白馬。
東山魁夷の「緑響く」のスケッチの原点。
婆ちゃんと孫(人生)の夫々の思い。
二人の後ろ姿を靄が優しく包む。
この場面に心騒いだ!!
私も数年前にこの御射鹿池に惹かれて
蓼科を訪ねたのだった。
緑の季節では無く紅葉の時季ではあったが、
池は黄金の静かな静寂に包まれていた。
心の隅に白馬がす~と現れて消えてゆく。
その白馬についておいでと
道案内をしてくれるような錯覚を感じたものだった。
引きこもりの青年が蓼科に祖母を訪ね農業に携わり
自立してゆく課程をドラマチックに仕立ててあった。
最近には無い感動の物語。
◎ 録画を見た。山田太一のドラマ追悼番組
『今朝の秋』
余命3ヶ月の息子と蓼科に住む老いた父
ある日病院を抜け出して二人で父の住む蓼科へ
八ヶ岳の山並み、木々の緑、小鳥のさえずり
若い時代を過ごした自然を満喫する息子。
都会に住む母親と息子の家族も訪ね来てひとときの夏を楽しむ。
紅葉の美しい風景の中での息子の黄泉への旅立ち。
「家族はいいな~」と涙を流す息子の言葉が胸に響く。
残された人たちは夫々の道をまた歩き出すのだが、
新しい家族の構築が暗示されている。
ここでも蓼科という場面があり深夜まで見てしまった。
笠智衆の台詞の少ない言葉には、いつもながらの哀愁が満ちていた。
数年前、蓼科を訪ねたときは紅葉の季節だった。
泊まったホテルで買ったベージュのニットのジャンパーを
思い出して着てみる。
あのときの想い出が浮かんで懐かしい。
山田太一
小説家、脚本家
「ふぞろいの林檎たち」
「岸辺のアルバム」 「男たちの旅路」
名作を残して残念な旅立ちであった。
サンシュユの花
早くもユキヤナギ
ローズマリー
ばあちゃんと孫を包むもやを想像するとヒンヤリとした空気の中の幻想的な情景が浮かんできます。
読んでみたくなる説明ですね。
寒の戻りで最近は朝夕は勿論寒い日が続きますね。
まだまだ暖房は手放せません。
蓼科は何だか心引かれる場所で、
よく出かけたものです。
コロナ禍以降は旅行はご無沙汰ですが
また足を運んでみたいと思います。