青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

四半世紀を、瞼に浮かべて。

2023年09月07日 17時00分00秒 | 一畑電車

(稲穂青く揺れる駅@高ノ宮駅)

宍道湖沿いの田園地帯、国道から見ると集落に隠れたような位置にある高ノ宮駅。正式には「高ノ宮」であるはずなのですが、何故か駅舎代わりの小さな待合室に掲げられた駅名板には「高の宮」と真ん中のノの字がひらがなに化けている。そのあたりの理由については知る由もなく、駅は静かに青々とした稲穂の向こうで佇んでいました。宍道湖周辺の出雲平野は山陰でも有数の大きな穀倉地帯で、あちらこちらに規模の大きめな水田が広がっています。出雲の国のコメ作り、斐伊川上流の山間部(木次とか三刀屋とか奥出雲とか)のあたりのコメは「仁多米」などと呼ばれてブランド化していますが、出雲平野の方のコメはどんなもんなんでしょうかね。

特徴ある赤屋根の家並み。切妻、入母屋、寄棟、錣(しころ)屋根・・・その形は様々ながら、どれもこれも重厚な造りの集落を横目に、2100系が松江から戻って来ました。島根県東部の出雲地方で採取される「来待(きまち)石」という石から作られた釉薬(うわぐすり)を使って焼き上げられた独特の赤い瓦は「石州石見瓦」と言われていて、出雲の国らしい景観の一つ。この赤屋根の街並みが、リアス式海岸の漁港に向かってダーッと続いてて、そんな街並みの路地の先にぽっかりと青い日本海が見えるような感じが、個人的には夏の山陰のパブリックイメージでもあります。

おそらく20年以上前、まだ社会人になって間もないころの話。神奈川の自宅を車で出て、天橋立あたりから日本海沿いに、まだ高速道路も通っていない山陰地方をひたすらドライブしたことがある。目的地は、その夏を最後に廃止となってしまった、日本海を望む小さな競馬場・益田競馬であった。あの夏、ひたすら国道9号線を西に西に向かいながら見た山陰の景色がまさにそんな感じで、赤い瓦屋根を見ながらそんな思い出が瞼に浮かんだ。この夏の旅路は、あれ以来だもんなあ。山陰。


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