青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

盛り場の昔語り ~中央弘前にて~

2019年02月20日 22時00分00秒 | 弘南鉄道

(川のほとりの裏路地に@中央弘前駅)

柏農高前での撮影を終え、宿のチェックインだけを済ませて食事がてらと弘前の市街に出て来ました。初日は弘南線、二日目を大鰐線の撮影に充てようと大まかのプランを立てていたのですが、ちょっとだけ大鰐線のロケハンを兼ねて中央弘前へ。中央弘前の駅はレンタカーのカーナビでもないと非常に分かりにくい一方通行に囲まれた路地裏的な雰囲気の場所にあり、正直言って「時代から取り残された」という言葉がぴったりな黄昏の中にありました。オレンジの電飾看板が弘南スタイルですが、元々は弘前電気鉄道という別会社が敷設した路線のターミナルでもあります。


中央弘前の駅の作りは、土淵川と言う小さな川に沿った片面1線の行き止まりのホームのみ。弘南鉄道大鰐線は、ここ中央弘前から大鰐までの約14kmを、弘前市街から岩木山の西麓を走って30分で結びます。川のほとりにある国鉄と離れたターミナルを、都会を走っていた電車が折り返していく姿は、何となく上毛電気鉄道の中央前橋の駅を思い出したり…。「中央」弘前と名乗るだけあって、以前は駅のある土手町や川端と呼ばれる地区はデパート(中三デパート)を中心とした繁華街だったと聞きますが、現在はR7バイパスが通る駅の東側(城東地区)に出来た新興の量販店へ賑わいは移り、かつての繁華街から賑わいは失われてしまいました。

 

路地に立ち並ぶ飲食店に、夜な夜な酔客が集うネオン華やかなりし時代を偲ぶ。地方都市におけるかつての繁華街の地盤沈下は日本全体の病理なんだけど、ここ弘前も御多分に漏れず…と言ったところでしょうか。川のほとりの赤ちょうちん、フラッと路地からギターを持った因幡晃あたりが出て来そうな…津軽に来てからアタマの中がすっかり昭和歌謡じみているんで、その辺りはわかって下さいという事で(笑)。


粉雪そぼ降る夜の中央弘前。夜の川端町、と言った方が雰囲気が出ましょうか。軽くストロボで舞い落ちる雪をはらりと写し込む。駅裏に続く路地の先を見やれば、それこそ昭和演歌の似合いそうな雑居ビルに、花札のような色とりどりのスナックの小さな看板が連なる風景。川端町から鍛冶町、桶屋町、銅屋町、親方町と続く小路の街の名前も最高に雰囲気のある、雪の城下町の夜。

  

食事がてら弘前の街に出て来たはずなのに、中央弘前の駅とその界隈の雰囲気に魅了されてしまうこと小一時間。すっかり冷え切った街の空気にたまらず駅舎へ飛び込んだ。弘南線同様、5分前改札の大鰐線。弘南線に比べると大鰐線の収支は大変厳しく、ラッシュ時間を除けば発車する列車は1時間に1本のみと、何年か前に存廃が取り沙汰されて以降ダイヤもだいぶ軽量化されてしまったようだ。この「乗る人がいないから減便します→余計乗る人がいなくなる」の無限ループをどうにかして止めなければいけないのだよねえ。私に出来る事と言えば、ささやかにグッズを買ったり乗ったりするくらいしかないのだけど。


「大鰐行き 20時30分発 改札開始します」
改札係を務める妙齢の女性が待合室の乗客に声を掛けると、ダルマストーブの暖かさにうとうとしていた待合室のお客さんが、そそくさと列車に消えて行きました。
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