青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

弘南津軽烈風記

2019年02月03日 12時00分00秒 | 弘南鉄道

(雪原のブルーモーメント@尾上高校前駅)

冬の津軽は、朝から強い風に乗って横殴りの雪が降る一日。今回の津軽行は、そんな津軽平野のインターアーバン・弘南鉄道を訪ねて参りました。津軽と言えば、この時期「ストーブ列車」の津軽鉄道(津鉄)に観光客の視線が集まりますが、対して弘南鉄道は地元の生活に根付いた弘前圏の郊外電車と言うイメージ。弘前の中心街から東の黒石、南の大鰐に向かって二つの路線を持つ弘南電車。路線図を広げてみれば、途中駅には大学や高校をはじめ学校の名前がとにかく多く、学生を中心に通勤通学の根強い需要に支えられているのだな、という事が分かります。田んぼの中にぽつんとある、尾上高校前の駅。今は一面の雪原の中。


簡素なホームに小さな待合室だけの、尾上高校前の駅。駅と言うよりは停留所のような場所。昼間は、広大な水田地帯の上を渡って来る物凄い風が、降る雪もろとも地表の雪を巻き込んで襲い掛かり、全ての視界を奪っていた。「ホワイトアウト」などと簡単に言うなかれ、実際に立ってみると、風で吹き飛ばされそうになるのと視界のなさに平衡感覚が狂いそうになって、余計に怖さがある。日が沈み、辺りがブルーモーメントに染まる頃合いに改めて駅を訪れてみると、ようやく風も少し収まって来たようだ。それでも時折、思い出したように突風が吹いては、列車を待つ私に雪つぶてを容赦なく叩き付けて来る。

とうに下校の時刻は過ぎてはいたのですが、いつの間にか待合室から一人、高校生がホームに。胸にしっかと握られたノートの束、待合室でも勉強をしていたのだろうか。ホームに立って、遠くから次第に大きくなる電車の灯りをじっと見ていた高校生。心の中を覗いてみれば、きっと「早く暖かい車内に入りたいな」なんて思っているに違いない。そんな生徒の気持ちを知ってや知らずか、あくまでもゆっくりと雪の中を踏みしめるように近付いてくる弘前行きの列車。待合室の優しい灯りと、近付く列車の小さな灯りが、生徒の家路を包み込むように輝いていました。

これからしばし、冬の津軽のあれこれと、弘南鉄道のお話にお付き合いくださいますよう。
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