【おさびし十首選 塔8月号①】
聞きかへされるときにをとこのにほひして前向いたままもう一度言ふ(岡本伸香)
紙とプラよりわけながら根本のなにが違っていたのかわれら(田村龍平)
あれは鳥それは木これは花 パパは君に何にも教へられない(益田克行)
口ずさむ軽薄な歌詞の後半にそんなこともあるよねつておもふ(西村玲美)
にんげんのおんなの足の膨れゆく夕ぐれという時間があかい(金田光世)
ぼんやりとしたさみしさを吸い込みてつやつやとせりひじきの煮物(金田光世)
ただついて行けばよかつた旅だつた ひとりの春がひつそりとまた(坂 楓)
洗面し食器を洗ひ洗濯し水つかふ時水を抱きしむ(山下昭榮)
去年咲き今年は塩に漬けられて桜はなびらあんぱんに乗る(岡本幸緒)
素粒子とは何であるかを引いたのちナルシシズムについてしらべる(岩野伸子)
「塔8月号②」につづく