映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

うなぎ

2021年07月25日 | 映画(あ行)

うなぎを友とする男

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97年カンヌ国際映画祭にて、パルムドール賞受賞の作品。
その時に見逃していたのを、今さらですが、やっと見ました。

 

1988年、サラリーマン山下(役所広司)は、妻の不倫現場を目の当たりにし、
激しい怒りに駆られて妻を刺殺してしまいます。
その8年後、刑務所を仮出所した山下。
保護司の住職の世話で、小さな理髪店を開業します。
そんなある日、山下は、睡眠薬自殺を図り倒れている女性・桂子(清水美沙)を発見。
なりゆきで桂子が店を手伝うようになって、次第に店も繁盛し始めます。
そんな時、以前の刑務所仲間の高崎(柄本明)が現れる・・・。

 

山下は、妻を殺害した後すぐに自主。
刑務所でも模範囚で通し、その間に理容師の資格を取ったわけです。
先に廃業した理髪店のおんぼろ家屋を自身で改修して、開業。
実に地道でつつましい。
彼は一匹の“うなぎ”を飼っていて、ときおりうなぎに語りかけます。
そのうなぎだけが彼の友人であり、家族なのです。
殺人を犯し元元受刑者が、なぜうなぎなのか。
そんなところが、みょうにユーモラスでもあります。

 

殺人犯で刑務所に入っていたことは、周囲の人々には知らせていません。
まあ、それは当然ですね。
無愛想で口数少ない山下の元に、近所の川の漁師や、UFOを呼ぼうとしている青年が
ちょくちょく遊びにやってくる。
そして桂子も何かとお節介をやく。

同じく刑務所帰りで、しかし何をやってもうまくいかない高崎は、
そんな山下の様子を見てうらやましくてしょうがないのです。
そんなことから不穏な展開になっていく。

 

こんな、実直でおとなしそうな男が、瞬間的な怒りで人を殺してしまう。

うなぎだけが友だちのような男にも、親しく語りかける人々がいる。

生きていくのにやっとくらいの収入で、ようやく何人かと親しく口をきく程度の男を、
激しく妬み憎む男もいる。

愛憎入り乱れた様々な人間模様が、結局ほんのりとした人の絆に収束していく様が、
なかなか心地よい物語です。

 

<WOWOW視聴にて>

「うなぎ」

1997年/日本/117分

監督:今村昌平

原作:吉村昭

出演:役所広司、清水美沙、柄本明、田口トモロヲ、倍賞美津子、市原悦子

 

人間模様度★★★★☆

満足度★★★★☆

 



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