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「真田太平記(十一)大坂夏の陣」池波正太郎

2010年12月27日 | 真田太平記
真田幸村落命

真田太平記(十一)大坂夏の陣 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社


         * * * * * * * *

ああ・・・。
何だか解説する気力も失せるような・・・。
さみしくて・・・悲しくて・・・そして呆然。
解っていたことではありますが、この巻でついに真田幸村が命を落とします・・・。
大坂夏の陣。


冬の陣の後、関東勢と豊臣勢のまあ、ちょっとした休戦状態だったんだね。
しかし、この間に大坂城の壕が関東勢によってみな埋め立てられてしまった・・・。
それを黙って見ていた関西方も情けないよね・・・。
各地から集まった豊臣に味方しようとする人たちは、そのまま大坂城に残っていたのだけれど・・・。
こんな状態ではもう大坂城に立てこもって籠城することはできない。
討って出て、闘わなければ・・・。
しかし数の上では圧倒的に不利。
大坂勢はもうほとんど負けを覚悟している・・・。
というか、秀頼を取り巻く重臣たちはここに至ってもまだ、
家康の怒りがとけて許されることを期待している・・・。
幸村は、そんな様子をあきれながら、あとは自分の出来るだけのことをするまでと、割り切っているね。
攻められるのを待っていないで、こちらから積極的に攻めなければ・・・
などと言ってもほとんど、耳を貸そうとしない豊臣の人たち・・・。


こんな休戦中のひとときに、幸村は密かに信之と対面を果たしますね。
信之は家康から幸村を徳川側につくよう説得するようにとの命を受けて、
この対面となるのだけれど・・・
信之はもともと説得できるとは思っていなかった。
幸村の気性をよく知っているから。
幸村も、そんなつもりはさらさらなくて、ただ最後に、兄と会ってみたかった。
双方、それだけだったんだね。
静かに酒を酌み交わしながら語り合う二人。
これが最後と二人には解っていた。
ううん・・・じんわりと来るシーンです。


ところで、ここで信之さん、今までのイメージでは考えられないことになってしまいますね。
うん、この二人の出会いをお世話したのが小野のお通という女性なんだけど・・・。
このひと、何故か徳川側の人や豊臣側の人、どちらとも密かに通じているような怪しい雰囲気の人だったよね、これまでは。
そうそう、信之も実はそう思っていた。
でも実際あってみると、謙虚で温かみがあって、すごくステキな雰囲気の人だったんだ。
で、思わずぽーっとなってしまった信之さんは、
何とかまた会いたくて、長い手紙を書いたりする。
それであげくに振られてるのね!
うーん、いい年して、信之さんのこのていたらくは、アンビリーバボーだ・・・。
いや、でも、緊迫感いっぱいのこの巻で、ここだけはすごく微笑ましくて救われたよ・・・。
たぶん、信之の千々に乱れた心の迷いごとなんだよ・・・、ね。


そんな休戦もつかの間、5月(現代の6月)いよいよ決戦の火ぶたが上がった。
関東勢15万5千。
大坂勢7万8千2百・・・。
幸村はとりあえず協力し合えそうな者と作戦を練るのだけれど・・・
できるだけ我慢して、敵をうんと引き付けてから、一挙にたたこう・・・という風に。
けれど、彼らは我慢できずに幸村との約束も忘れて飛び出してしまう。
とにかくこの戦いは幸村が大将のわけではなくて、
何事も彼の思うように運ぶことが出来ない。
そんなもどかしさの中で、あきらめの笑みを口元に漂わせて・・・
それでもやはり、彼は自分の戦いをしようと思う。
一挙に家康を討ち取って見せようと・・・。
最後の真田勢はすごかったですよ・・・。
本当に家康の陣へまっしぐらに突き進んできた。
家康を守るべき者たちの中でも、
あまりの恐ろしさに逃げ出してしまった者も多かったという・・・。
そう、すばらしい戦いぶりでした・・・。
ただ、あまりにも敵の数が多かったんですね。
傷つき疲れた幸村はついに・・・。
幸村49歳ですね。
若くして死んだというイメージが合ったけど、そう若くもないか・・・。
いや、そりゃ当時の平均寿命かも知れないけど、
今で言う49歳なら充分早死にでしょう。
思うに、九度山の蟄居がやっぱり問題だね。
この間にすっかり安穏と生きることに嫌気を感じてしまったんじゃないかなあ・・・。
そんな気持ちが彼を死に急がせてしまった気がするね・・・。
実際、そこで寝返って、徳川にへつらって長生きしてもよかったんだよ・・・。
いやあ・・・そうなったら、真田幸村の名前はぜんぜん残らなかっただろうけどねえ・・・。


幸村が命を落としたのは茶臼山の安居(あんご)神社付近・・・ということでした。
茶臼山は、今動物がある?
そう。思わず地図をみてしまったよ。
かつての合戦の場が今では遊園地だったりする・・・。
時の流れだねえ・・・。
今度、大坂城とかその近辺、是非行ってみたいですね。


それから、幸村の息子大助くん。
彼も最後は幸村と寄り添って最後まで闘いたかったけれど、幸村の命で秀頼の元に行く。
幸村は秀頼に何とか一度でも先頭に立って、皆の気持ちを鼓舞してもらいたいと思っていた。
それで、その話を伝えるために大助を大坂城の秀頼のところに行かせたんだ。
でもぐずぐずしている内にもう敵が攻め込んできて、城に火を放った。
秀頼や淀君とともに大助も命を落とす・・・。

壮絶なのと共に、何だか滅び行くものの美を感じてしまうね。
全く、動揺してしまう一冊でした・・・。


さて、いよいよ残り一冊となりました。
幸村のいない真田太平記・・・。
考えただけで寂しさがこみ上げてしまいますが。
信之のところでもう一波乱ありそうですよ。
では・・・また。


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