映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

われらが背きし者

2017年07月06日 | 映画(わ行)
飛んで火に入る夏の虫・・・



* * * * * * * * * *

英国人、大学教授のペリー(ユアン・マクレガー)と妻ゲイル(ナオミ・ハリス)は、
モロッコでの休暇中、
ロシアン・マフィアのディマ(ステラン・スカルスガルド)と知り合います。
ディマは国際的なマネーロンダリングに関係し、
彼のみならず家族の危機にさらされています。
そこで彼は、重要な情報の入ったUSBメモリをペリーに託し
MI6に渡すよう依頼しようと思い、ペリーに近づいたのです。
交換条件として、ディマと家族の安全を保証することとして・・・。
そんなことに巻き込まれるのはゴメンだとペリーは思うのですが、
彼の家族、妻や子どもたちの命がかかっていると言われると、
断ることができません。
ペリーを引き止めていた妻も、ついに同意してしまいます。
MI6のヘクター(ダミアン・ルイス)は、この取引に乗り気で、
ロシアン・マフィアと英国政治家との癒着をなんとか暴こうとするのですが、
上司の許可が降りず、独断でことを進めようとしますが・・・。



まず冒頭、モスクワで、ある一家が全員惨殺されてしまうシーンから始まります。
そしてモロッコ。
一体どういう話しなのかとドギマギしてしまうのですが、
冒頭で殺されたのはディマの知人一家。
それで、ディマは次は自分の番だと悟るのです。
私たちもディマの動きには本当に家族の命がかかっているのだと、
恐れおののき納得させられます。
そのためには必要不可欠なインパクトのあるオープニングというわけでした。



レストランでいきなり親しげに話しかけてくるディマはいかにも怪しげで、
ペリーもかかわらないほうがいいのに・・・と、見ている私たちは思うのですが、
飛んで火に入る夏の虫とでもいいましょうか、
あえて危ない方へ行ってしまうということもときにはあるものですね。



さて本作の題名「背きしもの」は、
つまり組織に背き、情報を売り渡そうとするディマのことと思われますが、
でも、登場人物それぞれのことでもあるようなのです。



ペリーはこの時妻とうまく行かなくなっていたのですが、
どうも彼の浮気がもとであるらしい。
つまり、妻に背いたわけです。

そして、MI6のヘクターもまた、
上司、つまりは組織に背いてことを進めようとしている。



そんな彼らをつなぎとめるものは「信義」です。
正しいと思うことを貫くためには
多少の危険にも躊躇なく足を踏み入れる。
そしてそれができるのは互いを信じるからこそ。
ディマは確かに悪事に手を染めていた人物ではありますが、
彼が家族を思う心はホンモノだろうと、ペリーは信じたのですね。
プロではない一般人のペリーを主役としたことで、
感情移入しやすく、とても面白く拝見しました。



われらが背きし者 [DVD]
ユアン・マクレガー,ステラン・スカルスガルド,ダミアン・ルイス,ナオミ・ハリス
Happinet


「われらが背きし者」
2016年/イギリス/109分
監督:スザンナ・ホワイト
原作:ジョン・ル・カレ
出演:ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ダミアン・ルイス、ナオミ・ハリス、ジェレミー・ノーサム

サスペンス度★★★★☆
信義度★★★★☆
満足度★★★★☆