映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マダム・マロリーと魔法のスパイス

2014年11月04日 | 映画(ま行)
美味しいものに国境はない



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南フランスの山あいの小さな町。
老舗フレンチレストランを経営するマダム・マロリー(ヘレン・ミレン)。
ミシュランの星1つをずっと維持しています。
それだけでも大変な努力ですが、彼女にはそれなりのプライドもあります。
さて、その店のちょうど真向かいに、
怪しげなインド人一家が越してきて、インド料理の店を開くという。
騒々しいし、店もけばけばしい。
自分の店の品位まで下がるようで、マダム・マロリーはオカンムリ。
あろうことか、相手の店の初日メニューの食材を買い占めてしまうなど
嫌がらせまでしてしまう。
・・・と、これがマダム・マロリー側の視点。



ところが本作は、実はこのインド人一家の次男・ハッサンの視点で描かれています。
家族で開いていたムンバイのレストランが火災で消失。
その時に一家を支えていた母親を亡くしています。
一家はロンドンに移り住んだのですが、
あまりいい食材と巡りあえず、ヨーロッパに渡る。
各地を転々として、南仏のこの地を通りがかった時に、
運命に導かれるように、ポンコツ車がついに故障。
「フランスでは誰もインド料理なんか食べない」という皆の静止を振り切って、
父親がここで店を開くと言い張る。
なかなか劇的な展開であります。
双方には双方の事情というものがある。
しばらく、この2店は敵対状況が続くのですが・・・。


ハッサンは、天才的な料理のセンスを持っています。
だから無論インド料理はお手の物ですが、
フランス料理にも興味が出てきます。
マダム・マロリーが彼の天才的な料理の腕を知ることから、
双方の歩み寄りが始まるのです。



片や高級フレンチの店。
そしてもう片やリーズナブルなインド料理。
悪くないですよね。
人は時と場合でそれを使い分けるのだし、
美味しいものに国境なんかない。
…映像的にも、双方あまりにも美味しそうで、これを空腹で見ると辛いです!


ハッサンはマダムの店のまだ駆け出しの料理人・マルグリットと親しくなるのですが、
ハッサンが腕を上げ店の中心となっていくことで
その関係が微妙になっていく。
簡単に「おめでとう!」とはならないところが、なんだかリアル。
それこそが、マルグリットのプライドでもあります。



料理は食べる人との距離も大切なんだなあ・・・と思います。
地元で取れた新鮮な野菜で、親しい人達に囲まれて、
その人達を喜ばせたいと思いながら料理をする。
そしてお母さんから受け継いだ「魔法のスパイス」さえあれば、
美味しくないわけがない!!
ラッセ・ハルストレム監督らしく、“家族”の大切さを描く一作。



ハッサンの作るスパイシーなオムレツ、どんなふうなのか。
食べてみたいなあ・・・。


なんと本作は制作にスティーブン・スピルバーグも加わっています!


「マダム・マロリーと魔法のスパイス」
2014年/アメリカ/122分
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ヘレン・ミレン、オム・プリ、マニッシュ・ダヤル、シャルロット・ルボン、ミシェル・ブラン

食欲をそそる度★★★★★
満足度★★★★☆