映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アンナ・カレーニナ

2013年10月18日 | 映画(あ行)
地道が一番・・・だけどやはり憧れる情熱の愛



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ジョー・ライト監督にキーラ・ナイトレイとくれば、
私の大好きだった「プライドと偏見」。
さて本作は・・・。
実はもう少し本格的な歴史絵巻的作品かと思っていました。
(すみません、又例によって原作は読んでいないので・・・)
普通の作品とは少し手触りが異なっていまして、
本作は舞台の背景をそのまま映画に移行したような・・・
ちょっとユニークな演出がなされています。
その訳は…、また後で考えてみます。



19世紀末ロシア。
政府高官カレーニンの妻であり社交界の花であるアンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)。
夫との間には子供が一人。
夫カレーニン(ジュード・ロウ)を愛してやまないとはいわないけれど、
まあ、貞淑な妻ではあったのです。
ある時、兄を訪ねてモスクワへ行き、
青年将校ヴロンスキー(アーロン・ジョンソン)と出会い恋に落ちます。

たちまち燃え上がり愛しあう二人。
(私なら見るからに軽薄そうな、こんな男は敬遠しますけど・・・)
アンナはすべてを捨て、愛に生きようと決心します。
当然のことですが、あまりにもあからさまな二人のことはたちまち噂になり、
夫の耳にも入ります。
火遊びならばまだよかった。
しかし、ヴロンスキーの子を孕むまでになっては…。



彼女は愛に負けるのではない。
社交界から爪弾きにされ生きる場を失ってしまう、
いわば世間に負けるのです。

ですが、良き夫であり善き妻であることを演じ、
良識ある善き人であることを“演じる”当時のこの社会。
暗黙のその了解を破ってしまった自由なアンナへ、
人々は余計に憎しみをぶつけたのかもしれません。
何かを演じなければならなかった家庭・社交界、
そういうことを現すために舞台背景的を用いたのではないでしょうか。
皮肉を込めて。
でもそれは現在の社会でも言えること。
そう思うと身の回りの何もかも、舞台背景の書割のようにも見えてきてしまいますね・・・。


けれども、ここにもう一つ、裏のストーリーがあります。
地方地主のリョーヴィン。
彼はキティという娘を愛していて、求婚したのですが、
その時キティはあのヴロンスキーに夢中で、あっさり断られてしまいます。
でもその直後に、ヴロンスキーはアンナに夢中となりキティのことなど忘れ去ってしまう。
リョーヴィンは大変質素な生活をしており、
農民とともに汗を流し草刈りをしたりします。
このリョーヴィンの家のみが、舞台背景ではなく、大自然を背景に映し出されます。
しばらくしてリョーヴィンは再度キティに求婚しますが・・・・。
これが意外な拾い物といいますか、
そもそも彼女を愛したことに誤りはなかったと申しましょうか・・・・
アンナのたどった道と対比して、なんと地道で力にあふれているのでしょう…。
私はむしろ、こちらのサイドストーリーの方に感動してしまいました。


人はやはり地に足をつけて生きるべきだ・・・・。
燃え上がる恋よりも、結局は穏やかに包み込むような愛が心にしみる…。
とはいえ、女であれば、やはり燃え上がる情熱の艶やかさ、
そういうものに憧れてしまう部分もありますねえ・・・



あの舞踏会のダンスのシーンはとても印象的でした。
アンナとヴロンスキーの気持ちが通じ合う情熱的なダンス。
・・・やっぱり憧れてしまう・・・かな?

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「アンナ・カレーニナ」
2012年/イギリス/129分
監督:ジョー・ライト
出演:キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・ジョンソン、ケリー・マクドナルド、マシュー・マクファデン

斬新な演出度★★★★☆
満足度★★★☆☆