映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「メグル」 乾ルカ

2013年10月14日 | 本(その他)
あなたは行くべきよ。断らないでね。

メグル (創元推理文庫)
乾 ルカ
東京創元社


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「あなたは行くべきよ。断らないでね」
無表情ながら美しく、奇妙な迫力を持つH大学学生部の女性職員から、
突然に声をかけられた学生たち。
店舗商品の入れ替え作業や庭の手入れなど、
簡単に思える仕事を、彼女が名指しで紹介してくるのはなぜだろう―。
アルバイト先に足を運んだ学生たちに何がもたらされるのか、
厄介事なのか、それとも奇蹟なのか?
美しい余韻を残す連作集。


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著者は北海道出身の方、
ということで、舞台は北海道、H大。
まあ、私などはそれだけで親近感を抱いてしまうわけですが・・・。
ストーリーは、学生部の女性職員が、
時々ふらりと訪れる学生にほとんど強引にアルバイトを押し付けます。
「あなたは行くべきよ。断らないでね」が決め台詞。
断りきれなかった学生がそのバイト先に赴き、
思いがけない体験をするというストーリーです。


はじめの「ヒカレル」では学生が壮絶な恐ろしい体験をします。
つまりはスピリチュアルな物語ではあるのですが、
だからといって全てがそうという訳でもありません。
次の「モドル」は失くしものが見つかる話しだし、
「タベル」も不思議なバイトだけれど、現実から逸脱するものではありません。


謎なのはこの大学職員悠木さんが、
どうしてこんなにもその学生にピッタリマッチしたバイトを充てることができるのか、ということですね。
学生がその時抱えていた問題が、
バイトでの体験により解決していくというおまけ付きなのです。
どうも悠木さんは、以前自身が引き受けたバイトの壮絶な体験によって、
シックスセンスとでも呼ぶべき不思議な力が身についたのかもしれません。
美人ではあるけれど、雰囲気が暗くて近寄りがたいところがある・・・、
謎めいていて、これも又良し。
また、なかには彼女が「お薦めしない」バイトなどもあり、
その行方に興味が惹かれます。


悠木さんに導かれたバイトで起こる奇跡。
ステキな物語でした。

「メグル」乾ルカ 創元推理文庫
満足度★★★☆☆