映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ディア・ハンター

2012年02月05日 | 映画(た行)
戦争に“正義”などない

                  * * * * * * * *

1960年代、ベトナム戦争下にあるアメリカです。
ペンシルバニアの製鋼所で働くマイケル、ニック、スティーブンの3人。
その日はスティーブンの結婚式で、友人たちは朝からお祝いで大騒ぎ。
彼ら3人はそのすぐ後に出征することになっているので、
楽しいことの仕納め、そんな気持ちも働いているのです。
この作品、3時間もの長い作品ですが、
初めの1時間くらいがこのどんちゃん騒ぎの1日を描写しています。
けれど、この浮かれた1日がどんなに幸福で貴重な時間であったのか、
私たちは後で思い知ることになります。


場面は一転してベトナムの戦場。
彼ら三人は戦場で再会を果たしますが、ベトコンの捕虜となってしまうのです。
そこで強要される残酷な拷問のようなゲーム・・・。
単なる遊び事に命をかけなければならない。
マイケルの命がけの作戦により辛くも脱出し、
3人はとりあえず生き残ることができたのですが・・・。


彼ら3人が戦地に赴く前には、どこか浮かれた様子もありました。
そんなとき戦争帰りの一人の兵士に合うのですが、
彼は無口で、3人が何か聞いても全く応じようとしない。
けんかを始めそうになる彼らでしたが、かろうじて気持ちを抑える。
マイケルは戦地から帰還したときに、この兵士の気持ちをイヤというほど思い知ります。
思い出すのも忌まわしいことばかり。
口では言い表せない戦争の残酷さ、狂気・・・。
その中で、精神を正常に保ち得たマイケルは、
むしろ特異な存在と言うべきなのかもしれません。


さて、彼らは時折山に入り鹿狩りを楽しんでいました。
ニックはライフル1発で鹿を仕留めることを誇りとしています。
戦争もこのように1対1で相手と対峙し、正当な勝負をつけるのだったら、
マイケルも兵士として誇りが持てたかもしれません。
けれど戦争はそんなものではなかった。
どこにも正義などない。
ただあるのは殺戮、残虐、退廃、狂気・・・。
リアルに苦い作品でした。


ロバート・デ・ニーロがかっこいいです。
友情に厚く、タフな体と心。
あこがれますね・・・。(かなり手遅れですが。)
メリル・ストリープも若い!!

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クリストファー・ウォーケン,ジョン・サヴェージ,メリル・ストリープ,ロバート・デ・ニーロ
UPJ/ジェネオン エンタテインメント


「ディア・ハンター」
1978年/アメリカ/183分
監督:マイケル・チミノ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ジョン・カザール、 クリストファー・ウォーケン、ジョン・サベージ、メリル・ストリープ