映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

噂の二人

2009年04月09日 | 映画(あ行)
噂の二人 [DVD]

20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

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ないことの証明は難しい・・・
                       
                * * * * * * * *

この作品はウィリアム・ワイラー監督が、
「ベン・ハー」以来2年ぶりに製作・監督したものということです。
ずいぶん違ったジャンルに・・・と思ったら、
もともと、自身で監督した作品をまた更にリメイクしたものということで、
このストーリーにはかなりの思い入れがあったのでしょうね。
オードリー作品でも、これはコメディではなく、シリアスな作品。


カレン(オードリー・ヘップバーン)とマーサ(シャーリー・マクレーン)は
学生時代からの親友で、
共同で、寄宿の女学校を経営しています。
カレンにはジョーという医師の恋人がいて、結婚を決めるのですが、
なぜかマーサは浮かない顔。

そんな時、地元の有力者ティルフィールド婦人の孫娘、メアリーが、
カレンとマーサが、おかしなことをしているのを見たと言い出します。
この子は、虚言癖のある子なんですが、
すっかりそれを信じ込んだ婦人が
子どもたちの親に、二人は同性愛だと言いふらし、
学校には誰もいなくなってしまう。

50年近くも前の話です・・・。
今なら確かに噂にはなるでしょうが、
それで社会的に抹殺されるほどのことにはならないでしょう・・・。
町の人たちの奇異なものを見るような視線。
見方してくれていたジョーまでもが、いつしか疑惑を抱いていた・・・。
あることの証明は簡単なのですが、ないことの証明は難しい。
ちょっと、先日見た「ダウト」を思い出してしまいました。

さて、このような理不尽なことで生活が立ち行かなくなってしまったら・・・、
どのようにして乗り越えていけばよいのでしょう。
・・・私は、この二人が勇気を振り絞って、この問題に立ち向かい、
生きるすべを取り戻してゆく、
そういう展開を期待したのですが、残念ながら・・・。

この作品中に、こんなセリフがあります。
「実際に、そういう関係の人たちはいる。
けれど、彼女たちは自ら覚悟して、そういう道を歩み、闘っている。
でも、私たちは違う・・・。」
そうなのです。
だから、余計に絶望感が深い。

この作品では、オードリーよりもシャーリー・マクレーンが光っていました・・・。
今は大御所で、時々スクリーンにも登場するこの方。
古い作品を見ると、時々このように思いがけず、
現在大御所の、とっても若いお姿に出会うのも楽しいですね。

しかし、この映画で更に目立っているのは、
この嘘つき少女のメアリーでした!
ものすご~く、かわいくないのです。
見ていても、腹が立ってきます。
・・・というのはつまり、名子役ということ? 
かわいい子ぶりっ子なら、大抵の子ができてしまいます。
でも、ここまでふてぶてしく憎々しい演技は難しいのでは・・・? 
すごい存在感でしたね。

初めは、同性愛者への偏見を描いた、
今となってはもう過去の作品なのかと思いながら見ていましたが、
実際に体の関係の有無だけで問うことができない、
その問題の深さ、
また、いったん抱いた疑惑は消し去ることは難しく、
そのあとそれを修復するのは不可能に近い・・・など、
時代を超えた問題が多々。
今見ても十分考えさせられる作品でした。

1961年/アメリカ/109分
監督:ウィリアム・ワイラー
出演:オードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー、ミリアム・ホプキンス