写真21.清浄中の本体の様子
インテークには、ゴミの侵入を防ぐためにこうやってフタをしておきましょう。
写真22.インテークのOリング
今回は再利用。パーツクリーナーで汚れを落としてから、シリコングリスを薄く塗って取り付けましょう。
写真23.キャブ取り付け
グリグリねじって取り付けます。
写真24.エアクリBOXとキャブを結ぶインシュレーター
ここにもOリングがあるので、同様にして清掃、グリスアップ。どうでも良いんですが、なんでOリングが緑色なんでしょう?
写真25.取り付け時の干渉注意
キャブ本体のクランプをマイナスネジで閉めればキャブの固定が完了しますが、その際に一点だけ注意。
取り外し段階で説明した、クラッチのリフタージョイント金属とキャブが接触しないように、クラッチレバーを動かしながら当たらない場所で組み付けるのです。
写真26.ガソリンホースのクリップ
取り付け時にはタイラップバンドをぶった切ってしまったから、ありあわせのホース用クリップでしっかり留めておきました。明らかにサイズが合ってないのはご愛嬌ということで…
さて、ここまで済んだところで再度試運転。
前述の赤文字で記載した不具合箇所のうち、2番目に書いたアイドリング不安定は見事に解消した。アイドリングは超安定、吹け上がりも超良好。キャブレターは完璧と言ってよかろう。
しかし相変わらず、突然のガス欠症状と、ナゾの加速不良は発生する。
はっきり言ってキャブOHに全く落ち度は無いという自信があったため、「キャブは完璧、原因はそれ以外」という方向で躊躇無く探求を行うことが出来る。
ここで一旦ザクコへ進捗報告してみたところ、彼女曰く
「もう十分じゃない?」
しかし私はまだ納得いかないので、さらなる修理のためもう1週間もらうことにした。
まずはナゾの加速不良について。
試運転していて、主に減速後なのだが、突然加速が悪くなる時がしばしばあった。
しかし、そのまま停車して空ぶかしをすれば極めてよく吹けあがる。うーん何故だ?
何度か試していて、気づいた。ある時加速不良に陥り、そのままバイクを手で押そうとしたところ、何だか動きがムチャクチャ重いではないか。
はじめは「なんだ、パンクか?」と思ったのだが、すぐに違うことに気が付いた。
そう、フロントブレーキを引きずっているのだ。
どうやら、ブレーキングのあと、レバーを戻してもシューが戻っていない様子なのだ。
その理由は、「ブレーキのカムが固着している」しか考えられない。
加速不良の原因は間違いない、これだ!
そうなれば話は早いので、フロントをバラしにかかる。
写真27.フロントアクスルのナット
サイズは19mm。反対側のナットも同じです。スパナをかけてびっくり、メチャクチャ緩い…。
この段階で速攻作業中断。その他すべてのナット類を増し締めしました。命に関わるよこの整備不良っぷり。メイド・イン・ジャーマニー、大丈夫っすか?!
写真28.スピードメーターケーブル
これまた手で緩むくらい、緩んでました。
グリスが流れ出ていて、スピードメーターはアル中患者の指先ごとくプルプル震える状態です。問答無用でグリスアップ(もちろんグリスアップ後はメーターはスムーズに動くようになったよ)。
今は取りあえずケーブルをホイールから抜き取ります。
写真29.ブレーキワイヤーを外します
ここは特に説明いらないでしょう。アジャストボルトをめいいっぱいまで締め込みワイヤーをダラダラ延びきった状態にして、タイコ部分を抜いてやります。
写真30.前輪撤去
フロントホイールのアクセルシャフトは、抜き取る必要はありません。シャフトはフォーク側のツメに載せてあるだけなので、ナットを緩めるだけでホイールが外せます。この辺の仕組みは自転車と全く同じ。さすがモペッドです。
ホイールが抜けると車体は自重でリアに傾きますが、万一に備えてとりあえずビール箱で保護。
なおフロントのブレーキパネルはフォーク側の切り欠きとシッカリはまるように出来ているので、取り付け時は注意です。
写真31.ブレーキパネルの取り外し
ホイールを抜いた後になって、さらにパネルがナットで締められていることに気づく。ホントはホイール取り外し前にナットを緩めればよかったのですが、写真のようにブレーキのカムリフターを手で押さえてブレーキが掛かった状態にすれば、パネルがホイールごとしっかり固定され、難なく緩められるのだ!
写真32.ブレーキのカム
今回、主にこの部分を清浄してグリスアップするのが目的です。ここが汚れると、今回の症状のようにブレーキの引きずりが起きるのです。長期放置以外のケースでも、内部が汚れると起こりやすいです。
なおグリスには熱に強いシリコングリスを使うのがマストとなります。しょぼいグリスを使うと熱で溶けてドラムにグリスが移ってしまい、ブレーキが効かずに即時死亡→朝刊掲載、となります。
写真33.シューを固定するロッド
主に原チャリのドラムブレーキでおなじみのこいつは、結構クセものでして、外すのはラクですが、嵌めるときに色々コツが要ります。しかもそのコツは車種ごとに違っていたりして、なかなか難儀です。
このザックスも、嵌めるのが中々大変でした。
写真34.新品同様のブレーキシュー
このブレーキシューは純正品の新品だったようです。全然減ってませんね。
とりあえず、セオリー通りカドをヤスリで削って落として鳴き止め&初期効きの改善を講じておきましょう。
写真35.シューの比較
上、無修正。
下、カドを落としたもの。
分かりますか?
写真36.ドラム側
こちらの内部もパーツクリーナーでよく洗浄。
シャフトの部分はおそらくベアリングにグリスが封入されていているので、クリーナーは吹きません。
常識ですが、ベアリング部分には絶対CRCを吹いたりしないこと。
写真37.ブレーキパネルの取り付けナット
「フォークとドラムパネルの間の細めのナット」のことを言っています。
上述通り、うっかりホイールを取り外してから存在に気づいたナットでしたが、取り付けるときは、逆にフォークに仮付けしてから締め付けましょう。
あとは普通に取り付けてフロントブレーキ終了。
レバーを握っただけで分かりますが、明らかに戻りが違います。これで引きずりは解消。
ここでまた試運転。結果超オーライ!
赤文字不具合箇所の3番も消えた。
あとはガス欠症状だけじゃ~。
さて、このガス欠的な症状なのですが、これはガソリンが来ていないか点火不良のどちらかだろう。
ミクシーのザックスコミュニティを覗いてみたのだが、「走行中突然失速し、そのままエンスト」の報告は結構ある。持病に近いのだろうな。
「それも含めて、手のかかる可愛いヤツ」
なんていう心優しい意見もあったが、私個人としては、工業製品にこんな持病が存在するのは許せない。絶対に原因を突き止めてやる!
まずはプラグを換えてみた。しかし症状変わらず。
続いてガソリン。コックがイカれててガソリンが流れないのではないか?
ホースを抜いて確認してみると、案の定コックが「ON」あるいは「RES」なのにガソリンが流れてこない。つまりガス欠に間違いなかったようだ。
それにしても、ガソリンコックなんて普通そう壊れるものではないんじゃないか?
いろいろ試してみたところ、コックではない箇所に原因があることがスグに判明した。
それがガソリンキャップ。ガソリンを補給する時に開けるアソコのことだ。
というのも、「ON」でガソリンが流れてこないこのガソリンコックであったが、ガソリンキャップを取り外しさえすれすれば勢い良くガソリンが流れ続けるではないか!もちろん「OFF」にすればしっかり止まる。
しかし一旦キャップを嵌めたとたんに、ガソリンの流れがか弱くなり、やがてほとんど出なくなる。
「ナンタラの法則」だか忘れたが、要するにプッチンプリンと同じで、空気穴が無ければ、密閉された液体は下側に流れない。
だからオートバイのガソリンキャップはちゃんと空気穴が開いている。俗に「呼吸」といわれるヤツだ。
ところが、このザックスはキャップの息抜きがイかれている様子だ。その証拠に、走行中にガス欠症状が起きた時、すかさずキャップを半回転緩めて息抜きをしてやり、即また閉めればバイクのガス欠症状は途端に完全に治るのだ。明らかにキャップが死んでいる。
とりあえず、キャップにクリーナーを吹いたりエアーを噴いたり色々やったのだが、若干良くはなったものの完全には改善しない。
これについてはキャップを交換するしかないみたいだ。
しかし幸か不幸か、このザックスのガソリンキャップはキーレスだ。キャップだけ変えても、キーを換える必要は存在しないので、単純に部品交換で直るであろう。
写真38.ガソリンホース途中の可視部分
ふつうこのパーツはタンク内のサビを確認するためのガソリンフィルターなのだが、ザックスの場合フィルター機能は無い単なる可視パーツである。
ガソリンの流れが目視できるのだ。ここを目視することで、ガソリンがちゃんと流れているのかどうか確認できる。
写真39.キャブ全景
ガス欠症状が出たとき、例の黒ボタンを押してみても、可視部分でソリンがチョロチョロ動くのが目視できないようならば、キャップ不良でガソリンタンクが息詰まりしているのが原因である。100%間違いない。
なお、ガソリンがしっかり流れている場合ならば、ボタンを押して数秒もすればダラダラとキャブからガソリンが漏れてくる。
しかし息詰まり時は、ボタンを惜し続けていても一向にオーバーフロウしてこない。
これにて原因究明。ザックスのガソリンキップ、しょぼすぎ。
思うに、ザックスが混合給油であることとキャップ劣化には関係あるのではないか?
ガソリン給油後にオイルを注入するのがこのバイクのセオリーになるのだが、ガソリンタンク上部でオイルがうわずんでいるままキャップを閉めてしまうことで、息抜き孔にオイル分が詰まることが、キャップ不良の起きる原因なのではないかな?
あくまで想像だけど。
その他細々した部分を整備してみたが、ともあれ、SACHS整備はこれで終了である。これなら売りに出しても文句は言われないだろう。
試運転中にも思ったことであるが、快調の状態で乗ってみるとこのバイクは結構気持ち良い。日本車に飽きてしまったマニアには打ってつけであろう。グリップによるギアチェンジ、始動時のマニュアルデコンプ、左足でもかけられるブレーキ、等々、普通の現代のバイクでは味わえないマニアックな機能が満載なためだ。わが手許のへたれザックスは、ガソリンキャップさえ新品に交換すれば、もうどこへでも行ける気にさせてくれるだろう。
セールストーク、おわり(笑)
さあ、誰かもらっておくれよ。
うちの庭に置いておくのもジャマだから…。