出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

避けたい自費出版

2005年09月20日 | 制作業務
最近、いわゆる自費出版というものに関わった。

ご存知のとおり、うちは「棚ぼた取次口座」で始めたので、儲けるために特殊なことをするって感覚は非常に薄い。書店直販もそうだし、電子出版もそうだ。なんとなく、正常ルート&普通の出版を、楽しみながらやりたいと思っている。わざわざ「大変そうなこと」や「出版の人にあざ笑われそうなこと」をする気にはなれない。

すべての自費出版が「あざ笑われそうなこと」とは言わない。

が、前回の本のように、人によっては「あざ笑う一歩手前」みたいな反応をする人がいるのは事実。あれは無名の著者だったし内容がそういうジャンルだったので、ある程度は覚悟していた。でも、手塩にかけて作ったので、そういう反応をされるとちょっとムカつく。

それはいいとして、「本当の」自費出版。

以前うちで出した著者がもう1冊出したいといってきたんだけど、うちで出せるような本じゃなかったので断ったら、金を出すからと言ってきた。あんまりそういうことに関わりたくなかったので、社内の別の人間に作ってもらった。

あと私自身が最近、ある出版社の自費出版のDTPだけを請け負った。

やってみた感想は、とにかく面倒だ。

なんというかプロの著者やライターと、こだわるところが違う。何が違うって説明するのは難しいんだが、「売ることに直結してない」と言うべきか。

文芸作品なんかは別として(っていうかやったことないので知らないが)、編集者が出す要望は「分かりやすく」も「読みやすく」も「ターゲットが云々」もすべて、売るためのことだと思う。ヒットを狙ってあこぎなことをするなんて場合じゃなくても、同じ。つまり「いい本を作る」ための要望と「売れる本を作る」要望は、ある程度一致するんじゃないか。(ここでコスト云々のパフォーマンス的話は無視する) で、プロの著者やライターは(こちらの要望に応えてくれるかは別として)それを分かってくれる。

が、自分の本を出すために金を出す人々は、あまり意見を言ってもらいたくないようだ。

けれども、「金を出すのは自分なんだから黙ってろ」とか、「とにかく好きなように作らせてくれ」というのとは、微妙に違う。そういう人は、きっとこっちも分かりやすいと思う。はい、わかりました、「どうぞご勝手に」なり、「他へ行って」なり、対応も決めやすい。

そうじゃなくて、「彼らなりに売れる本を作るための考えがあって、そこんとこの議論はしたくない」って感じだろうか。セミナーとか取引先とか彼らの守備範囲の例を出して、とにかく譲らない。

彼らの守備範囲でめちゃくちゃ売れるんだったら問題ない。というより、守備範囲でめちゃくちゃ売れるようなときは、書店売りでも「その系統で間違いない」ってなことになったりする。

で、めちゃくちゃは売れない人たち。原稿を前に話してるときは「議論はしたくない」んだが、その後飲みに行ったりすると、「たくさん売りたい」だの「○○さんからいろいろ教わりたい」だのと言う。

そうですね、なんて相槌は打つが、ハッキリ言って非常に面倒だ。

できれば避けたい自費出版。きっとそう思わない人たちが、バカスカ儲けているんだろう。

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
完全自費出版 (上石)
2005-09-21 19:56:19
素人の考えに嫌気をさすのがプロなんでしょう。製本までしてくれる印刷屋でさえ、原稿の感想を聞けば同じようなことを言います。これでは自費出版よりも出版社そのものを作った方が早いかもしれませんね。
返信する
おぉっ! (さくらん☆)
2005-09-21 22:35:02
いつもひっそり勉強させて頂いておりますので更新を待ってました~



自費出版ではありませんが、先日こんな一件がありました。



とある会合にて、弊社の著者A氏と学会のライバルB氏が会ってこんな話が出たそうです。



A氏「C社から本出したんだ」

B氏「へぇ~どれくらい?」

A氏「○千部」

B氏「僕も昔そこから出して○万部売れたよ」

A氏「(カチーン)」



すぐさまA氏から「増刷はいつだ!大手書店でさえ見かけないのはナゼだ!」と電話アリ。

・・・・・・・・・・・・。

B氏が出した頃は本が売れる時代だったしさ~、

それだけ売れる内容だったらしいしさ~、

A氏の本、うちとしては他の本に比べて頑張って売ってるんですけどねぇ…はぁぁぁぁ。

2日に1回「○○書店××店置いてありません」という連絡にノイローゼ気味です(苦笑)
返信する
素人の考えに嫌気 (タミオ)
2005-09-22 17:26:42
自分もハンシロなので、なるったけ知識を総動員してニュートラルに判断しようとは思ってますけど、それもあるかもしれませんね。考え自体に嫌気がさすわけじゃないんですけど、「そこで偉そうなこというなら、もう少しましな原稿書け!」とか、密かに考えていたりします。
返信する
A氏の文句 (タミオ)
2005-09-22 17:32:31
私の場合そういうことを言われると、内省ぐるぐる状態。著者の力と版元の力の間で、悩める子羊になります。



ある人が「書店に並べるのは版元の力、売れるのは著者の力」って言ってました。



しかし、2日に1回ですか! それは大変ですね~。見にいく暇があるなら、営業してきてくれるといいですね(笑)



PS:もすこし、更新するようにします(ペコリ)
返信する

コメントを投稿