出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

今までにない悩み

2007年05月24日 | 制作業務
正確に言うと「制作業務」というより「編集」についてなんだが、私にとっては企画も編集もDTPも制作業務のカテゴリーに入る。

『日本でいちばん…』が出たせいで(おかげで)、次の本にプレッシャーを感じている。いや、いつもの自意識過剰が大半なんだろうが、もしかして世の中に「あの出版社の新刊」という目で見てくれる読者がいるかもしれないと思うと緊張する。

あるアイデア(企画未満)があって、それは『日本でいちばん…』を書いていたときや直近の新刊を作っているときも常に頭にあった。それはじっくり…と思っていたんだが、他のアイデア(こちらも企画未満)は実用書なので後回しにしたい。「あの出版社の新刊」にはふさわしくないような気がする。なので、じっくりのほうを先に出したい。

この自意識過剰について周りに探りを入れてみると、やはり「気にしたほうがよかろう」という言葉が返ってくる。

じっくりのほうは、うちの本としては自慢できるものになりそうなのでいいんだが問題が2つある。明るくないし、シンプルじゃない本なのである。

『日本でいちばん…』を読んでくれた人の感想を見ていると、大きく分けて2つある。ひとつは「出版の業務でいろいろわかった」というもの。出版業界の人でそう言ってくれる人もいて、それはそれで「いや、私も知らないこと多いのであいこです」と思ったりする。もうひとつは、「好きな仕事を前向きにしてるのがよろしい」というもの。明るい感じでいいらしい。それはそれで「本人は大真面目なんだが、傍から見ると面白いのか」と思ったりする。

で、気になっていたのがその「明るい感じ」である。私自身は明るい本も暗い本も好きだが、「より受け入れられる」という意味では明るいほうがいいんじゃないかと思う。

あと、編集の方に頼んで『日本でいちばん…』の企画書をもらっていたんだが(勉強のため)、改めて見てみてまた勉強になった。その企画書は、「企画書の書き方」なんて本にあるような必要項目を埋めるという感じではなくて、編集の方が「面白いんじゃなかろうか」と思う点が簡単に箇条書きになっている。それがいちいち、読者の感想と一致するのである。

私は世の中にあまりない本を出したいと思っていて、「こう考える人もいるんですよ」というメッセージのつもりで作る本も多い。だから、うちの本は圧倒的多数に支持されることもないし、読者の感想が真っ二つに分かれたりもする。

けれども、『日本でいちばん…』の「受け入れられ方」を見ていると、シンプルさが非常にいいもののように思えてくる。

巷で「わかりやすい本」という話題が出るとき、わかりやすいとは「理解するのが簡単」なことだと思っていた。つまり、図解とか文章が易しいとかいうことだと思っていたんだが、そればっかりじゃないとわかってきた。

読んで「そうだね」と言いたくなる度合いが高いとか、「そうだね」という人が多いとか。。。

で、明るくもないしシンプルでもない本を「次に」出すか、考え込んでしまうのである。企画に関してこういう悩み方をするのは初めてである。

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