MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』

2015-05-11 00:35:55 | goo映画レビュー

原題:『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』
監督:押井守
脚本:押井守
撮影:町田博/工藤哲也
出演:筧利夫/真野恵理菜/福士誠治/太田莉菜/森カンナ/吉田鋼太郎/高島礼子
2015年/日本

今、最もリアリティーを持つSF作品について

 『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年)はアニメーションであったため違和感がなかった演出が実写映画の本作においては違和感満載で散見される。例えば、キャバレーの舞台で踊っている女性ダンサーを堪能していた第二小隊隊長の後藤田継次が警視庁に呼び出された際に、後藤田が浴衣のまま出勤しているという状況はアニメーションであるならばギャグとして笑えるが実写で見るとなめているようにしか見えない。
 作品前半のそのような日常の描写には前衛作品と見間違えるぎこちなさが残るが、後半の戦闘シーンはさすがに見応えはある。「首都決戦」と称しながら「グレイゴースト」と呼ばれる最新鋭戦闘ヘリ一機で警視庁が壊滅状態に陥ったり、肝心の特車二課の警察用レイバーが二機共にポンコツであることや、さらには灰原零が、自分が使っているバスケットボールには「ASH(灰)」とサインしていながら既に平成7年2月に亡くなっており、攻撃をしかけていたのが誰なのか謎のまま終わってしまうところなど、映像は恐らく予算不足により強いられた安っぽさなのであるが、そのチープさこそが却って日本の危うい「正義」にリアリティをもたらしているように見えるのは私だけなのかもしれないと思う理由は、公開初週で観客が異常に少なかったからで、宮崎駿監督と並び称されるべき監督の作品としては寂しいかぎりである。


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『海にかかる霧』

2015-05-10 00:04:59 | goo映画レビュー

原題:『Haemoo(海霧)』
監督:シム・ソンボ
脚本:ポン・ジュノ/シム・ソンボ
撮影:ホン・ギョンピョ
出演:キム・ユンソク/パク・ユチョン/ハン・イェリン/イ・ヒジュン
2014年/韓国

年齢にもかかる「霧」について

 ポン・ジュノが関わるシリアスな作品にハズレはないと思うが、逆に言うならば『スノーピアサー』(ポン・ジュノ監督 2013年)のように少しでもコメディー的な要素を持ち込むと失敗してしまうのである。その点本作はシリアスに徹しているために見応えはあるが、想像以上に陰惨な光景を目撃してしまうことにもなる。
 一つだけ疑問を呈しておきたい。舞台は1998年10月である。ところがパク・ユチョンが演じる見習い乗組員のドンシクが年齢を訊かれて26歳だと答えた時、密航者の一人であるホンメは、それならば1974年生まれだと言い、ドンシクも否定しないのであるが、これでは単純計算でも1998年ではなくて2000年になってしまう。字幕が間違っているのか脚本の問題なのか、あるいは韓国には独特の年齢の数え方があるのかいまいちよく分からなのであるが、本作の元となった「テチャン号事件」は2001年に起こっているから脚本のミスかもしれない。ラストで6年後にドンシクが食堂でたまたま目撃した、自分の子供かもしれない女の子は5歳くらいに見えたから特殊な数え方はないように思うのだが。


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『エイプリルフールズ』

2015-05-09 00:41:32 | goo映画レビュー

原題:『エイプリルフールズ』
監督:石川淳一
脚本:古沢良太
撮影:大石弘宣
出演:戸田恵梨香/松坂桃李/ユースケ・サンタマリア/寺島進/里見浩太朗/富司純子
2015年/日本

コメディー作品といえども気になる演出ミスについて

 七つのエピソードを上手く収斂させている手腕はさすが古沢良太が脚本を務めているだけのことはあるが、敢えて一つだけ述べておくならば、寺島進が演じた宇田川勇司がゴルフの練習をしている、千葉真一が演じる暴力団幹部に向かって歩きながら持っていたカバンに手を入れて取り出したものが拳銃ではなく芋けんぴだったのであるが、これは宇田川が誘拐したが実は宇田川の実の娘の江藤理香が食堂で宇田川と同じバッグを持っていた、戸田恵梨香が演じる新田あゆみのバッグとこっそりと入れ替えていたからである。宇田川はどうして自分のバッグに拳銃の代わりに芋けんぴが入っていたのか記憶を辿っていき、娘の理香の仕業であると思い至るのであるが、宇田川は新田あゆみの存在に気がついていなかったのだからこれはあり得ない。事実だけを描いて宇田川は気がつかないままという演出が正しいはずなのである。
 出来るならば全てのエピソードが一つにつながっていれば上手く大団円を迎えられ、より感銘を受けたと思う。


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『恋する・ヴァンパイア』

2015-05-08 00:38:44 | goo映画レビュー

原題:『恋するヴァンパイア』
監督:鈴木舞
脚本:鈴木舞
撮影:梅根秀平
出演:桐谷美玲/戸塚祥太/三戸なつめ/田辺誠一/大塚寧々/柄本明
2015年/日本

「最高の素材」が全く活かされない作品について

 吸血鬼を主人公とした映画は数々観てきており、ほとんどそれなりに仕上がっており「外れ」というようなことはなかったが、吸血鬼映画でこれほど出来が悪い作品はないと思う。何が悪いのか具体的に指摘してみるならば、桐谷美玲が演じるキイラの相手役の哲を演じている戸塚祥太に問題があるように見える。ヴァンパイアのキイラが苦手としているニンニクを入れたガーリックチャーハンを作った際に、その匂いで気を失って倒れるキイラに何故か戸塚の視線が追わないという細かい話はともかく、力彦とまりあと共にキイラを救出に行った哲がヴァンパイアと格闘している時に、何故か一緒に行っていた力彦とまりあが姿を見せて助けることもなく、ラストで記憶を失くした哲のバンドがライブをしている会場にキイラが駆け付けた後に、観客を置き去りにして哲がキイラの後を追いかけてくるなど演出が荒いのである。
 しかし一番不可解なのはわざわざ韓国や台湾や香港から俳優をキャスティングしているところで、例えば『僕の彼女はサイボーグ』(クァク・ジェヨン監督 2008年)のようなものはあるが、私が想像するのは実は戸塚祥太の演技に問題があり、それをごまかすために外国人をキャスティングしたのではないだろうか。私は最初戸塚もアジアのどこかの国の俳優かと思って観ていたくらいだから。いずれにしてもヴァンパイアとして最高の素材であるはずの桐谷美玲が全く活かされていないために桐谷の無駄遣いだと思う。
 ここまで書いて以下のような文章を目にした。「今回がつか(こうへい)作品3作目(『広島に原爆を落とす日』)の主演となった戸塚祥太さんの台詞回しは見事であった。白系ロシアと日本の混血であるがゆえに不遇を強いられた主人公の悲痛な叫びを聞いているうちに、隣の母娘も、背後に座っていた男性も、そして自分自身もすすり泣いていた。」(「ブックマーク」篠田尚子 毎日新聞夕刊 2015.4.27)
 この文章を信じるならば演出に問題があったのかもしれない。


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『龍三と七人の子分たち』

2015-05-07 00:23:52 | goo映画レビュー

原題:『龍三と七人の子分たち』
監督:北野武
脚本:北野武
撮影:柳島克己
出演:藤竜也/近藤正臣/中尾彬/品川徹/樋浦勉/伊藤幸純/吉澤健/小野寺昭/萬田久子
2015年/日本

ギャグを優先させるという悪い癖を持った映画監督について

 本人が主役をしていない場合「代わり」の主演俳優がまるで本人のように振る舞う『マジック・イン・ムーンライト』(2014年)のウディ・アレン監督作品のように、本作の主役を演じている藤竜也もまるで北野武のように見える。基本的にコメディー作品であるから細かいことはどうでもいいのかもしれないが、それでも気になってしまった細かいところを指摘しておきたい。
 例えば、オレオレ詐欺で50万円と多少なりとも価値のあるものを持って待ち合わせ場所で待っていた主人公の高橋龍三が犯人と話し合っているところに仲間のマサがたまたま通りかかったことで未遂に終わったのであるが、その後犯人を追いかけたり龍三の息子の龍平に電話をかけて確認したりするという伏線の処理がなされていないことで演出が下手に見えてしまう。
 あるいは龍三とマサが店に入って来る客が何を頼むか賭けをしている時に、若いカップルが入って来て賭けの対象にされてしまうのであるが、2人に怒鳴られた後でもカップルが一緒の席について食事をしようとしている点も不自然で、それはラストにおいてもあっという間に大勢の警官が現場に揃っているところなど結局ギャグを優先させるために設定がありえなくなってしまうのである。
 しかしその無理やりなギャグも決して上手くいっているわけではなく、どのネタもベタなために爆笑とまではいかず、唯一笑えたシーンは競馬場で龍三がモキチに指で購入する馬券を教えた際に、龍三の指が欠けていたために「5-5」ではなく「5-6」でもなく「5-3」だったというところで、このギャグだけは意表をついたもので上手いと思った。
 因みに「死体ネタ」は、例えば、『運が良けりゃ』(山田洋次監督 1966年)などの前例があり珍しいものではない。


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『ジュピター』

2015-05-06 00:51:41 | goo映画レビュー

原題:『Jupiter Ascending
監督:ラナ・ウォシャウスキー/アンディ・ウォシャウスキー
脚本:ラナ・ウォシャウスキー/アンディ・ウォシャウスキー
撮影:ジョン・トール
出演:ミラ・クニス/チャニング・テイタム/ショーン・ビーン/エディ・レッドメイン
2015年/アメリカ・オーストラリア

絢爛豪華さが却って災いする現代のSF作品について

 結局、本作で描かれている物語は地球上で貧しいながらも普通に暮らしている主人公のジュピターを、世継問題を巡りケインとバレム王の兄弟が奪い合うだけであり、明らかにつまらない部類に入るものであるが、例えば、クライマックスにおいてジュピターを担いでケインが脱出するシーンは、そのチープさが却って過去のモノクロの古典SF作品を想起させたりする。しかしそれは決してウディ・アレン監督が『マジック・イン・ムーンライト』(2014年)で意図して試みたようなレトロ感ではなく、偶然かあるいは才能の欠如によるものであろうが、いずれにしても敢えて白黒にして観るならばストーリーの単純さも相まって意外と味わい深い作品なのかもしれない。やらないけれど。


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『マジック・イン・ムーンライト』

2015-05-05 00:35:09 | goo映画レビュー

原題:『Magic in the Moonlight』
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
撮影:ダリウス・コンジ
出演:コリン・ファース/エマ・ストーン/サイモン・マクバーニー/ハミッシュ・リンクレイター
2014年/アメリカ

マジシャンと映画監督の仕事の類似性について

 何故舞台設定を1928年にしたのか勘案するならば、そもそも冒頭のタイトルバックと音楽からしてクラシカルな雰囲気を醸し出している。主人公のイギリス人のスタンリー・クロフォードは優秀なマジシャンであるがニーチェをこよなく愛する悲観論者であり、やがて対峙することになるアメリカ人の女性占い師のソフィー・ベイカーはディケンズ好き(?)の楽観論者である。
 結局、唐突にハッピーエンドで幕を下ろす本作を観ているとどうしてもエルンスト・ルビッチ監督の作風を思い出してしまう。実はこの単純な物語を描いたウディ・アレンはストーリー展開そのものよりもルビッチ作品の雰囲気を作り出そうと試みたのではないのかと想像する。そうだとするならば本作はルビッチ作品を現代に甦らせる「マジック」としてとても優れていると思うのである。


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『グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~』

2015-05-04 00:07:38 | goo映画レビュー

原題:『The Good Lie』
監督:フィリップ・ファラルドー
脚本:マーガレット・ネイグル
撮影:ロナルド・プラント
出演:リース・ウィザースプーン/アーノルド・オーチェン/ゲール・ドゥエイニー/サラ・ベイカー
2014年/アメリカ・ケニア・インド

ジョークが物語の重要な要素を占める作品について

 見た目で誤解されるかもしれないが、本作はアフリカとアメリカのカルチャーギャップをコミカルに描いたものではない。冒頭のスーダンが描かれるシーンにおいて既に登場人物たちが聖書を持ち歩いているように本作は同じクリスチャンであるにも関わらず、何故住む場所が違うだけで生活の質までが変わってしまうのかという問題が提起されているのである。その良い見本としてアメリカのカンザスシティーに移住出来たマメールが一緒に暮らしているジェレミアとポールに披露するジョークがある。「ワイ・ディドゥ・ザ・チキン・クロス・ザ・ロード?」と聞いた2人は「何故その臆病者は神を拒んだのか?(Why did the chicken cross the lord?)」と捉え、その意味深長な問いに黙りこんでしまったのであるが、「向かい側に渡るため(To get to the other side)」という答えを聞いて2人は「何故そのひよこは道を横断したのですか?(Why did the chicken cross the road?)」という質問だったことに気がつく。
 このジョークが暗示していることは彼らが信仰心の篤いクリスチャンであるということと、スーダンには整備された道がないということである。少なくとも「ロード」と聞いて「道(road)」よりも先に「神(lord)」を連想するような環境で育っているのであり、実際に作品の前半は登場人物たちが道が整備されていないアフリカの草原をもくもくと歩くシーンが続く。さらにポールがこのジョークを思い出して笑いだすシーンまであるのだから、本作における
このギャグの重要性は言うまでもない。
 タイトルの意味に関しては敢えて言及しないでおくが、マメールにとって『ハックルベリー・フィンの冒険』の白人のハックルベリーの友人で黒人のジムがテオとダブっていたことを把握しておく必要はあるように思う。


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『イントゥ・ザ・ウッズ』

2015-05-03 00:37:42 | goo映画レビュー

原題:『Into the Woods』
監督:ロブ・マーシャル
脚本:ジェームズ・ラパイン
撮影:ディオン・ビーブ
出演:ジェームズ・コーデン/エミリー・ブラント/アナ・ケンドリク/マッケンジー・マウジー
2014年/アメリカ

また呪われるかもしれない問題の解決方法について

 そのシンデレラも登場する本作は、「事件は森で起きている」ということをコンセプトに『シンデレラ』、『赤ずきん』、『ジャックと豆の木』、『ラプンツェル』の4つのグリム童話を組み合わせたものである。一度はそれぞれのキャラクターの望みが叶い収束に向かおうとした物語は空から落ちてきた2つ目の豆を見逃してしまったことから再び混沌とし始める。森に対してはみんなで力を合わせて暮らしていくことが一番だという結末になるそのストーリーそのものは悪くはないのであるが、感動があるかどうかとなると微妙である。事の発端が不妊であり、問題の解決が巨人の妻の死であることからその結末が素直に良いとは受け取れないのである。


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『シンデレラ』

2015-05-02 00:27:44 | goo映画レビュー

原題:『Cinderella』
監督:ケネス・ブラナー
脚本:クリス・ワイツ
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:リリー・ジェームズ/ケイト・ブランシェット/ヘレナ・ボナム=カーター
2015年/アメリカ

意外と知らないおとぎ話の詳細について

 『王妃の館』(橋本一監督 2015年)がまるで学芸会のように見えた原因は、その前にかつて学校の学芸会で観たはずの本作を観てしまっていたからだと思う。絢爛豪華なセットもさることながら、原作よりも主人公のシンデレラのたしなみに気品があり好感が持てるのである。
 何故シンデレラのガラスの靴だけが魔法が解けて元に戻らなかったのか長い間不思議に思っていたのであるが、靴だけはシンデレラの持ち物を変えたのではなく、フェアリー・ゴッドマザーが用意したものだからであり、よってその「魔法の靴」は足のサイズに関係なくシンデレラの足にしか合わないという設定だったことが分かった。そのフェアリー・ゴッドマザーを演じたヘレナ・ボナム=カーターのキャラも「コスチューム・プレイ」の本領を発揮していた。


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