原題:『The Good Lie』
監督:フィリップ・ファラルドー
脚本:マーガレット・ネイグル
撮影:ロナルド・プラント
出演:リース・ウィザースプーン/アーノルド・オーチェン/ゲール・ドゥエイニー/サラ・ベイカー
2014年/アメリカ・ケニア・インド
ジョークが物語の重要な要素を占める作品について
見た目で誤解されるかもしれないが、本作はアフリカとアメリカのカルチャーギャップをコミカルに描いたものではない。冒頭のスーダンが描かれるシーンにおいて既に登場人物たちが聖書を持ち歩いているように本作は同じクリスチャンであるにも関わらず、何故住む場所が違うだけで生活の質までが変わってしまうのかという問題が提起されているのである。その良い見本としてアメリカのカンザスシティーに移住出来たマメールが一緒に暮らしているジェレミアとポールに披露するジョークがある。「ワイ・ディドゥ・ザ・チキン・クロス・ザ・ロード?」と聞いた2人は「何故その臆病者は神を拒んだのか?(Why did the chicken cross the lord?)」と捉え、その意味深長な問いに黙りこんでしまったのであるが、「向かい側に渡るため(To get to the other side)」という答えを聞いて2人は「何故そのひよこは道を横断したのですか?(Why did the chicken cross the road?)」という質問だったことに気がつく。
このジョークが暗示していることは彼らが信仰心の篤いクリスチャンであるということと、スーダンには整備された道がないということである。少なくとも「ロード」と聞いて「道(road)」よりも先に「神(lord)」を連想するような環境で育っているのであり、実際に作品の前半は登場人物たちが道が整備されていないアフリカの草原をもくもくと歩くシーンが続く。さらにポールがこのジョークを思い出して笑いだすシーンまであるのだから、本作におけるこのギャグの重要性は言うまでもない。
タイトルの意味に関しては敢えて言及しないでおくが、マメールにとって『ハックルベリー・フィンの冒険』の白人のハックルベリーの友人で黒人のジムがテオとダブっていたことを把握しておく必要はあるように思う。