原題:『Magic in the Moonlight』
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
撮影:ダリウス・コンジ
出演:コリン・ファース/エマ・ストーン/サイモン・マクバーニー/ハミッシュ・リンクレイター
2014年/アメリカ
マジシャンと映画監督の仕事の類似性について
何故舞台設定を1928年にしたのか勘案するならば、そもそも冒頭のタイトルバックと音楽からしてクラシカルな雰囲気を醸し出している。主人公のイギリス人のスタンリー・クロフォードは優秀なマジシャンであるがニーチェをこよなく愛する悲観論者であり、やがて対峙することになるアメリカ人の女性占い師のソフィー・ベイカーはディケンズ好き(?)の楽観論者である。
結局、唐突にハッピーエンドで幕を下ろす本作を観ているとどうしてもエルンスト・ルビッチ監督の作風を思い出してしまう。実はこの単純な物語を描いたウディ・アレンはストーリー展開そのものよりもルビッチ作品の雰囲気を作り出そうと試みたのではないのかと想像する。そうだとするならば本作はルビッチ作品を現代に甦らせる「マジック」としてとても優れていると思うのである。