(2023年2月26日付毎日新聞朝刊)
毎日新聞の「村上春樹をめぐるメモらんだむ」を読んで知ったのだが、1月29日放送のTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」で以下のようなコメントをしている。
今日の言葉はロシアのプーチン大統領の言葉です。「ニューヨーク・タイムズ」の記事によれば、彼はウクライナの戦争で息子が戦死したある母親に、面と向かってこう言ったそうです。
「このロシアでは年間、何万人もの人がアルコール濫用や交通事故で命を落としています。あなたの息子さんは、ウォッカの飲み過ぎなんかで死ぬより、ずっと意味ある死に方をしたのです」
うーん、まったくすごいことを言いますよね。
でもこういうのって、巧妙なロジックのすり替えなんです。だってウォッカや自動車は本来、人を殺すために作られたものじゃありません。あくまで付随的な、アクシデンタルな結果として、不幸にして人が亡くなるという結果が生まれるわけです。
でも戦争はそうじゃない。戦争は基本的に、人を殺傷することを目的として行われる行為です。そういう、本来は同じレベルに置くべきではない事柄を並べて比較することで、ものごとをねじ曲げて正当化していく。これは何もロシアだけではなく、戦争に携わる国の指導者がしばしばおこなうごまかしです。
そして彼ら自身は決して戦場には行きません。みなさんもそういう連中に言いくるめられないよう、じゅうぶん気をつけてくださいね。
それではまた、来月。
この発言を読んで何故か最近話題になっている、質問したら答えてくれる対話型AIツール「ChatGPT」を思い出した。確かに回答は的確ではあるものの、よくよく考えたら誰でも思いつくような回答なのに、「村上春樹」だから、あるいは「ChatGPT」だからという付加価値で発言のクオリティーが5割増しになっているという感じである。いちゃもんと言われればそれまでだけれども、プーチン大統領の発言などどれも違和感の塊、あるいは「違和感製」なのだから、今更新聞で取り上げるほどのものとは思えないのである。
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