原題:『L'evenement』
監督:オドレイ・ディワン
脚本:オドレイ・ディワン/マルシア・ロマーノ
撮影:ロラン・タニ―
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ/ケイシー・モッテ・クライン/ルアナ・バイラミ/サンドリーヌ・ボネール/アナ・ムグラリス
2021年/フランス
エイリアンの「元ネタ」について
1963年、フランスのアングーレームの大学の文学部に通うアナは優秀な学生で授業中に教師に急に指名されても的確にアラゴンの詩を分析できる。商家の家族にはかなり期待されており、本人もさらに進学して勉強を続けるつもりだったのだが、不本意にボーイフレンドのマキシムとの遊びで妊娠してしまい人生設計が狂い始める。当時は人工妊娠中絶は違法で、アナはなす術がなかったのである。
以前ならば『エイリアン』(リドリー・スコット監督 1979年)というSF作品としてシガニー・ウィーバーを介して暗示程度で描かれていたことをついに直接描写する作品が制作されたといった感じで、アナが強いられる孤独な闘いはなかなか直視できないシーンもあるのだが、映画としてはとてもよく出来ている。
ところで個人的には当時のフランス文学に対する登場人物たちの言及も興味深かったのだが、アナの友人の「カミュは分かりやすいがサルトルは曖昧だ」という発言には納得せざるを得ないものの、例えば、彼女たちの住んでいる寮の部屋の壁にはサルトルの戯曲『ネクラソフ(Nekrassov)』(1955年初演)のポスターが貼ってあったり、アナが堕胎の費用を稼ぐためにサルトルの小説『壁(Le mur)』(1937年)を売ったりしており、好き嫌いはともかくやはりフランスの大学生はサルトルと無縁ではいられなかったように思う。
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