原題:『そして僕は途方に暮れる』
監督:三浦大輔
脚本:三浦大輔
撮影:春木康輔/長瀬拓
出演:藤ヶ谷太輔/前田敦子/中尾明慶/香里奈/毎熊克哉/野村周平/豊川悦司/原田美枝子
2023年/日本
恵まれているボンクラについて
主人公の菅原裕一は5年同棲している鈴木里美という恋人がいるのだが、ある晩先輩が開いたコンパで知り合った女性と浮気をしてしまい、それが里美にバレてしまう。普段の生活態度もだらしなく、それを里美に指摘されると裕一は簡単に荷物をまとめて出て行ってしまう。親友の今井伸二の家に身を寄せるのだが、彼のだらしの無さが根本的に直るはずもなく、バイト仲間や姉の香とも似たようなことを繰り返している内に、裕一は母親の智子が住む北海道の苫小牧の実家まで戻るのである。
智子の新興宗教への勧誘に恐れをなした裕一が実家も後にしてバス停で座っているとたまたま10年以上会っていなかった父親の浩二と遭遇し、父親の住むアパートに行くことになる。裕一が父親と近所の映画館で観た映画『素晴らしき哉、人生』(フランク・キャプラ監督 1946年)を父親は「どうせハッピーエンドだよ。つまんねえよ」と言っていたはずだが、寧ろ裕一にとって重要なのは併映されていた『逃走迷路』(アルフレッド・ヒッチコック監督 1942年)の方であろう。怠惰な生活を送っていても母親が入院したという知らせを聞いた時には裕一の本気が出るには出るのである。
一連の出来事が終わり、後輩の加藤に「どうなりました、最後の結末は?」と聞かれた裕一の「まだ終わってねえんだよ。面白くなってきやがったぜ」という答えがどうも気になる。裕一が何歳か分からないが裕一を演じた藤ヶ谷太輔は30代で、そうなると『そばかす』(玉田真也監督 2022年)のヒロイン同様に20代ならば納得できるものの、30歳を超えてから自分の現状に気が付くというのはあまりにも遅く、裕一は恵まれた環境に甘えていると思わずにはいられないのである。
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