原題:『The Power of the Dog』
監督:ジェーン・カンピオン
脚本:ジェーン・カンピオン
撮影:アリ・ウェグナー
出演:ベネディクト・カンバーバッチ/ジェシー・プレモンス/コディ・スミット=マクフィー/キルステン・ダンスト
2021年/オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・イギリス・アメリカ
「野蛮」な知性の対決について
1925年のモンタナ州。主人公のフィル・バーバンクは弟のジョージと共に牧場を経営しているのであるが、その牧場を25年前に2人に譲ってくれた亡きブロンコ・ヘンリーを祝そうとフィルは提案するのだが、イェール大学で古典を学び卒業している、優秀だが素行が荒い兄に対して大学を中退して兄に拾ってもらった感じのジョージはヘンリーに対する想いも兄ほどではなく、そもそもカウボーイという生き方が苦手で毎日風呂に入って身なりを整える方が性に合っており、そこへ現れたのが宿屋を営むローズ・ゴードンと息子で医学生のピーターで、ローズは4年前に夫を自死で亡くしており、すぐに宿を売り払ってジョージとローズは結婚するのである。
結婚してみたものの、どうもローズとフィルが気が合わない。ローズがジョージと結婚した理由は金目当てだとフィルは思っているからで、インテリのフィルは、かつて映画館でピアノ弾きをしていたローズが知事夫妻を自宅に招いて披露するためにピアノでおぼつかない手つきで練習している曲をバンジョーで難なく弾きこなしてしまい、やがてローズは隠れてアルコールを飲むようになってしまうのである。
当初は、か弱そうで紙で花を作るようなピーターもフィルは嫌っていた。とにかく中身が無いのに貴族を装うジョージやローズがフィルにはバカに見えるのであるが、ヘンリーとフィル以外に誰も気がつかなかった、牧場の目の前にある山に吠える犬の影を見いだせたピーターに才能を感じたフィルはピーターに馬の乗り方など教えるようになる。
そして遂に牛の革を巡ってフィルとローズが大喧嘩をしてしまい、フィルはピーターにローズのアルコール依存症を治すように提言する。1925年当時のアルコール依存症に対する一般的な認識は個人の心の弱さだと見なされていたからなのだが、母親のアルコール依存症の原因はフィルの存在で生じるストレスであると分かっているピーターは牛の死体から抽出した炭疽菌とフィルの同性愛気質を利用してフィルを「暗殺」するのである。自分自身が最もスマートだと信じて疑わず、ヘンリーと自分の関係をピーターで再現できると信じたフィルは、まさか子供に足をすくわれるとは想像もしていなかったであろう。
ローズに「ピアノ・レッスン」をさせるカンピオン監督の演出が意図的なのかどうかは原作を読んでいないので分からないのだが、ロケーションも素晴らしくやはり映画館のスクリーンで観ることを勧めたい。
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