原題:『Un carnet de bal』
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ/アンリ・ジャンソン/イヴ・ミランド/ジャン・サルマン/
ピエール・ヴォルフ/ベルナール・ジマー
撮影:フィリップ・アゴスティーニ/ミシェル・ケルべ/ピエール・ルバン
出演:マリー・ベル/モーリス・ベナール/フランソワーズ・ロゼ/ルイ・ジューベ
1937年/フランス
二人の感傷的な対話について
主人公のクリスティーヌ・ シュルジェールをピエール・ヴェルディールが「クララ」と呼ぶのはフランスの詩人のフランシス・ジャム(Francis Jammes)の小説『クララ・デレブーズ(Clara d'Ellebeuse)』由来らしい。ここでは2人が唱え合ったポール・ヴェルレーヌの『感傷的な対話(Colloque sentimental)』を和訳しておきたい。因みにこの詩には曲も付いていて作曲はクロード・ドビュッシー(Claude Debussy)で『艶なる宴 第2集』(1904年)で発表されている。
「Colloque sentimental」 Paul Verlaine 日本語訳
人気の無い冷ややかな古びた公園で
今しがた二つの人影が過ぎ去って行った
彼らの目は死んだようで唇に締まりはなく
お互いの会話はほとんど聞き取れない
人気の無い冷ややかな古びた公園で
二つの亡霊が過去を思い出した
「君は僕たちの昔の忘我を思い出すかい?」
「一体どうしてあなたは私にそれを思い出させたいの?」
「君の心は僕の名前だけでいつでもときめくのかい?
今でも君は夢の中で僕の魂を見るのかい?」
「いいえ」
「あぁ、言葉に尽くせない幸福なあの美しい日々!
僕たちはただ唇を重ね合わせた」
「無きにしも非ず」
「なんて空は青く、希望は大きかったことか!」
「希望は黒い空に向かい、打ち破った」
こうして荒れ果てたカラス麦の中を二人は歩いていた
夜だけが二人の会話を聞いている
Philippe Jaroussky : "Colloque Sentimental" de Debussy et Verlaine