原題:『樺太1945年夏 氷雪の門』
監督:村山三男
脚本:国弘威雄
撮影:西山東男
出演:二木てるみ/岡田可愛/木内みどり/藤田弓子/南田洋子/赤木春恵/佐原健二/丹波哲郎
1974年/日本
史実を「短縮」する弊害について
1945年の樺太で起こった「真岡郵便電信局事件」をモチーフにした本作はいわゆる「グランドホテル方式」のストーリー展開で、メインストーリーは真岡郵便電信局の女性電話交換手たちの奮闘振りが描かれているのであるが、鈴本参謀長を中心とした日本軍の葛藤と共に、例えば、それと並行して安川房枝が2人の息子たちと共に避難している最中にソ連軍の戦闘機に銃撃されて2人の息子たちを亡くした房枝が捨てられていた赤ん坊を抱いて逃げ続けるものの、最期はソ連の軍人に銃殺されたり、恐怖で気が狂った母親を娘と息子が引っ張って逃げていく様子が描かれたり、本を抱えた少年がずっと一人で逃げていたりする。
さらに陸上自衛隊の協力や成田亨による特撮なども含めて本作における製作者たちの本気度は伝わる。
しかし例えば、坂本綾子が持っていたはずの青酸カリ入りの瓶を何故か最後は関根律子が持っていたりとおかしなシーンを見かけるのであるが、これは演出ミスというよりも本来ならば153分あるはずの上映時間が119分にカットされており途中の細かな経緯が省かれているため、短縮版だけでは作品の評価は難しい。