原題:『All the Money in the World』
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:ミシェル・ウィリアムズ/クリストファー・プラマー/マーク・ウォールバーグ
2017年/アメリカ・イギリス
「悪者」の偉大な功績について
確かに本作のメインストーリーは当時の世界一の大富豪だった石油王のジャン・ポール・ゲティの孫のジョン・ポール・ゲティ3世の誘拐事件であろうが、事件が解決しジャン・ポールが亡くなった後のラストシーンは考えさせられるものだった。
遺品を整理していた主人公のアビゲイル・ハリスは美術品として収集されていた偉人たちの胸像の中にジャン・ポール本人の胸像を見つけるのである。それは勿論ジャン・ポールの見栄を表すものではあろうが、逆に言うならばそのような人間でなければ胸像にはならないという皮肉とも取れる。さらに言うならば誘拐された孫の身代金でさえ出し惜しむ吝嗇家だからこそJ・ポール・ゲティ美術館のような膨大なコレクションを有する美術館を建設できたのであり、多少なりともその恩恵を受けている私たちはジャン・ポールを一概に悪人と決めつけられる立場にないのである。