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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『男と女』(1966年)

2017-10-12 00:07:06 | goo映画レビュー

原題:『Un homme et une femme
監督:クロード・ルルーシュ
脚本:クロード・ルルーシュ/ピエール・ユイッテルヘーヴェン
撮影:クロード・ルルーシュ
出演:アヌーク・エーメ/ジャン・ルイ・トランティニャン/ピエール・バルー/シモーヌ・パリ
1966年/フランス

フランスの「ミュージカル映画」について

 第19回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得し、さらに第39回アカデミー賞でも外国語映画賞と脚本賞を獲っている本作を初めて観る観客が多少戸惑うとするならば、監督のクロード・ルルーシュがドキュメンタリー映画出身だということと大いに関係していると思う。実際に、主人公のジャン=ルイ・デュロックが関わるレースは実際に行われたものを撮影しており、彼らの2人の子供たちの演技も含めてアドリブが多用されているようで、いわゆる作り込んだ「ドラマ」ではないのである。
 むしろ「ドラマ」として描くべき、同じ主人公のアンヌ・ゴーシェの夫でスタントマンのピエールの撮影時における事故死も、レース中に事故を起こした夫を心配する余り妻のヴァレリーが精神のバランスを崩して自殺してしまうことも詳細に描かれることはなく、ジャン=ルイとアンヌの何気ない再会や別れが「ドラマ」として描かれているのである。それはつまりクロード・ルルーシュがドキュメンタリー映画出身であることが大きく影響していると思うのである。
 本作はクロード・ルルーシュ監督と音楽を担ったフランシス・レイのコンビによる傑作であるが、フランスではジャック・ドゥミ監督とミシェル・ルグランのコンビによる『シェルブールの雨傘』(1964年)や『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)も制作されている。しかしこの2組の「ミュージカル」は対照的な作風で、クロード・ルルーシュのラフな作風に対して、ジャック・ドゥミは計算し尽くした作風であり、確かにフランス映画がミュージカル映画というジャンルそのものを牽引していた時期はあったのである。
 もう一つ興味深いことを書いておくならば、クロード・ルルーシュ監督の作品のタイトルはどれも簡単なもので、「男と女」はもちろん、フランシス・レイのみならずミシェル・ルグランも参加した、邦題が『愛と哀しみのボレロ』でさえ原題は「あんな人たちやこんな人たち(Les Uns et les Autres)」という単純なものである。


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