MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ありがとう、トニ・エルドマン』

2017-09-23 00:10:44 | goo映画レビュー

原題:『Toni Erdmann』
監督:マーレン・アデ
脚本:マーレン・アデ
撮影:パトリック・オルト
出演:ペーター・シモニシェック/ザンドラ・ヒュラー/ミヒャエル・ヴィッテンボルン/イングリット・ビス
2016年/ドイツ・オーストリア

「悪ふざけ」の功罪について

 作品の冒頭で主人公で学校の音楽教師のヴィンフリート・コンラーディは生徒たちと一緒になって『バットマン』のキャラクターであるジョーカーのメイクをして先生の送別会に臨むのであるが、その後、メイクをしたまま娘のイネス・コンラーディに会いに行った際に、イネスと一緒にいた人たちはそのメイクに驚くもののイネス本人が驚かないところを見ると、ヴィンフリートはイネスが子供の頃からこのような悪ふざけをしていたのだと推測できる。
 イネスはルーマニアのブカレストにある「モリソンズ」というコンサルティング会社で働いているのだが、娘のところに遊び行ったヴィンフリートにはイネスが幸せそうには見えなかった。そこでヴィンフリートはドイツに帰国した振りをして、再び「トニ・エルドマン」というキャラクターでイネスたちの前に現われる。2人の友人と一緒にいるイネスの前に現われた「トニ・エルドマン」を見てすぐに父親だと気がつくが、敢えて父親であると友人に言わないイネス。さすが父親の「教育」が行き届いている。
 しかしそのように父親を「泳がせて」いたイネスがさすがにうんざりするようになった頃、父親に鍵のない手錠をかけられ、イースター・パーティーで父親のピアノ伴奏で「グレイテスト・ラブ・オブ・オール(Greatest Love of All)」を歌わされた後、イネス自身が誕生日会を「裸体パーティー」で開催するようになるのであるが、同僚たちにはあまり理解されなかったらしく、祖母の葬式が行われた頃にはシンガポールにあるマッキンゼーに「栄転」することになる。幼児教育の大切さを痛感させられる作品ではあるが、まさか娘がボーイフレンドに射精させたザーメンのたっぷりかかったカップケーキをおいしそうに食べるほど「悪ふざけ」が好きなことは「トニ・エルドマン」でさえも想像さえしていないであろう。


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