原題:『不良少年』
監督:羽仁進
脚本:羽仁進
撮影:金宇満司
出演:山田幸男/吉武広和/山崎耕一郎/黒川靖男/伊藤正幸/瀬川克弘/佐藤章/中野一夫
1961年/日本
「リアル」な映画の存在意義について
昭和35年4月30日に起こした宝石店の強盗の容疑で主人公の浅井弘がもう一人の仲間と捕まる。昭和17年5月生まれの浅井は18歳になったばかりで、昭和20年に父親は戦死していた。
少年院では当初、クリーニング科に配属されたが、班長たちとの折り合いが悪く、教官たちの会議の末に木工科に転属され、良い班長に恵まれようやく仕事に身を入れるようになる。
素人によって演じられた不良少年たちの喧嘩腰の言葉を聞いているうちに、これは北野武監督が撮る「アウトレイジ」シリーズではないかと思わせるのだが、例えば、大量のコッペパンを床に並べて口に含んだ水を満遍なく吹きかけた後に、上から蒲団を敷いて寝た翌日に潰れたコッペパンを集めて仲間に配るシーンがあるのだが、これは善意なのか悪意なのか微妙で、当時の公衆衛生の感度の低さが推し量れる。あるいはタバコの吸い殻を吸うために、綿に何かを混ぜて自家製の「フィルター」をつくるのであるが、その何かが説明がないともはや分からないとしても、要するに本物の不良少年たちをキャスティングした、当時の風俗の記録として残るドキュメンタリータッチの映画の良さなのであろう。