MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『Noise』

2017-07-26 00:37:53 | goo映画レビュー

原題:『Noise』
監督:松本優作
脚本:松本優作
撮影:末松祐紀
出演:篠崎こころ/安城うらら/鈴木宏侑/岸健太朗/仁科貴/小橋賢児/布施博
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017)

「長編小説」の「死」が垣間見える作品について

 狩野という男によって強行された秋葉原無差別殺人事件から8年が経った頃、その事件に巻き込まれて亡くなった母親を持つ高校生の桜田美沙は、事件後に失職しアルバイトをしている父親と暮しながらアイドル活動をしている。山本里恵は父親の山本大とそりが合わず家出をしている。スパルタ教育で暴力を振るわれながら育った美沙はアイドル活動においても世話になっていた高橋にそそのかされて危険な目に遭遇するのであるが、高橋自身によって暴行を免れる。一方で、里恵は家出をした後に、以前街中でスカウトしてくれた男に連絡をして簡単にモデルの仕事にありつけるのは父親の大に暴力を振るわれた経験がなかったことが理由なのかもしれない。
 大橋健は配達員をしながら水商売をしている母親と一緒に暮らしている。健は配達先の会社の受付嬢の声を録音して聞き入っていたのだが、やがて、何もしないで収入を得ているように見える受付嬢に怒りを覚え、脅迫電話をかけるようになる。急に母親が家を出た直後に母親が200万円の金を横領したことで男たちに家に押しかけられ殴られると、健は公衆電話から警察に脅迫をするようになる。健は読書家で中上健次の『十九歳の地図』や永山則夫の本を読んでいるのだが、読んでいる本が古いせいなのか「ネット世代」に対応できないのではないかと勘繰ってしまう。しかし現代において中上健次や永山則夫に代わる作家がいるのかどうかは疑問である。
 長回しのシーンが気になる。カレーを食べながら健が母親の愚痴を聞くシーン。ファミレスで母親と再会して言い訳を聞く健のシーン。最後で美沙と父親が語り合うシーン。いずれも子供の方が割を食っている印象なのだが、里恵と大が食卓を囲むも、大が隠し持っていた美沙とのチェキを見つけて気持ち悪いと非難しながら家を飛び出すまでのシーンの短さを勘案しても、「長回し」という撮影技法が若者に味方をしないように感じるのである。


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