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「蟹工船」日本丸から、21世紀の小林多喜二への手紙。

小林多喜二を通じて、現代の反貧困と反戦の表象を考えるブログ。命日の2月20日前後には、秋田、小樽、中野、大阪などで集う。

多喜二「蟹工船」とストトン節(めい)

2009-06-10 23:11:45 | 多喜二研究の手引き

そういえば、今日北海道の父に電話した際に、「ストトン節」を唄ってもらいました。
♪スットトンスットトンっとかよわせて~というものも唄ってもらいましたが、男女のことを唄ったものではない歌詞もあるようでした。
レコードとかあったの?ときくと、”みんな唄ってたから、ちゃっこい頃覚えた。昭和のはじめか大正ごろの歌だべ”、とのことでした。
なんだか蟹工船の世界がまたひとつのぞけたように感じました。

 

 

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めいさん、相変わらず眼のつけどころがいいですね。

 

多喜二「蟹工船」に出てくる「ストトン節」は、http://sasakimikie.seesaa.net/article/24944145.html

で試聴することができますよ。

ストトン ストトンと通わせて  いまさら厭とはどうよくな
どうよく(胴慾)・・・ひどい、うらむ、ということ
 
  厭なら厭だと最初から 言えばストトンで 通わせぬ  ストトンストトン
今日は会社の勘定日  お金もしこたまもらったし
  芸者買うか 女郎買うか 嫁(かかあ)に相談してどつかれた ストトンストトン
二十三連隊の営門で ハンカチくわえて目に涙  どうぞスウちゃんに逢わせてよ
営門・・・司令部の門
   私のスウちゃん十二中隊 ストトンストトン
あなたみたいないい男 私みたいなお多福が 
  提灯釣り鐘釣り合わぬ 見捨てられても無理はない ストトンストトン
うちの父ちゃんはげ頭  隣の父ちゃんもはげ頭
  はげとはげとが喧嘩して どちらも怪我せんでよかったね ストトンストトン
向こう通るハイカラ美人 横目でチョクチョク僕を見る
  こいつてっきりお出でだと よく見りゃなんだい 藪にらみ ストトンストトン
藪にらみ・・・見当の違うこと
ストトンストトンと働いて 親父の日給が八十五銭
  物価高いのにやりきれぬ お嫁(かかあ)毎日質屋通い ストトンストトン
 
 
 ストトン節は、大正十三年頃流行した俗謡で、大震災後作曲され最も普及の勢いが盛んなものです。
流行の理由としては、ストトンという囃子ことばが、自然に舌を促して滑稽的に耳に入るので、模倣しやすかったようです。
 
 
 

この歌は、昭和3年「君恋し」を大ヒットさせた二村定一 ”ふたむらていいち”(1900~48),通称”べーちゃん”がレコーティングして多喜二の時代に流行ったようです。

http://www1.ocn.ne.jp/~sonny/beichan.html

 

○ストトン節
 こんな男女間のもつれてぎすぎすした感情をテーマとしている歌詞を,あっけらか~んと歌い上げていて不思議に心地よい。
 ♪ストトン ストトン と通わせて いまさら嫌とは 獰欲な
  いやならいやと最初から 言えばストトンと通(かよ)やせぬ 
  ストトン ストトン

 ストトン節というと,夢野久作(1889~1936)の短編集「いなか・の・じけん」に,「スットントン」という掌編が収録されている,

とある芸妓の話。芸妓という仕事は,つね日頃ありとあらゆる音曲をマスターしてなくては仕事が勤まらないので,普段から身の回りの音楽という音楽をすべてを耳にいれて仕事の肥やしとしていなくてはならない。

しかし,ある日,たまたま一緒に乗り合わせた車夫が,何気に鼻歌で”ストトン節”を歌っていた。芸妓,いつもの職業意識でそれを耳コピでさっそくマスターしようと試みるのだが,車夫の鼻歌があまりにも調子がはずれていてマスターできない。

今後,このストトン節を仕事先で「やれ」といわれたら,これはたいへんなので,しっぽをまいてその場から逃げてしまうという筋書きだったような。(←たしか「青空文庫」で読めるはず)。

夢野の短編を読んだときは,大正期の俗謡についてなんの前知識もなかったので”スットントン”という奇妙な表題にひかれて読んで,それで印象に残っているのだが,この二村の歌唱で,初めて,当時歌われていた”ストトン”の実態に触れ得たような気がしたので,この音源には大感謝してます。

 それにしてもこの”ストトン節”なのだが,基本的に”俗謡”なのだそうで,メロディも親しみやすく憶えやすく,メロディラインを誤らないで歌うのはそんなに難しくないと思う。それを調子っ外れで歌ったという件の車夫,果たして,どのような鼻歌だったのだろうか? そういうことに関心が向いてしまうのでありまする。なんか本題から逸れてしまった。

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