「蟹工船」日本丸から、21世紀の小林多喜二への手紙。

小林多喜二を通じて、現代の反貧困と反戦の表象を考えるブログ。命日の2月20日前後には、秋田、小樽、中野、大阪などで集う。

蟹工船」ブームの背景とその広がりを追う―雑誌掲載記事を中心に―

2012-11-04 11:04:14 | 多喜二研究の手引き
蟹工船」ブームの背景とその広がりを追う―雑誌掲載記事を中心に―



小林多喜二展―「蟹工船」ブーム検証チーム







『蟹工船』は、1929(昭和4)年に雑誌「戦旗」に発表された(売禁止処分)。『蟹工船』の単行本は、雑誌発表と同じ年に戦旗社から発行されたが、これも発禁処分を受けた。翌1930年、発禁の該当箇所を削除した普及版が発行されて半年の間に3万5千部が売れた。戦後1954(昭29)に刊行された新潮文庫版の『蟹工船・党生活者』は、50年間に100万部の売り上げを記録し、最近は年間5千部の売れ行きだった。



それが、2006年に『マンガ蟹工船』が刊行されて、同年の「赤旗まつり」だけで1000冊近い記録的売上となり、書籍流通関係で話題となった。「蟹工船」発表80年後の2008年には1年間だけでも50万部に迫る売り上げとなった。上野駅構内の書店が新潮文庫版を150部仕入れて完売したのに続き、各大型書店が『蟹工船』平積みコーナーを設けるとバカ売れ。5月には、読売新聞を皮切りに、朝日、毎日、産経、日経の全国紙が大きく取り上げ、蟹工船ブームが一気に全国化した。共産党は7月11日、「第6回中央委員会総会(6中総)」志位和夫委員長幹部会報告で、ワーキングプア問題などへの取り組みに若年層を含めて支持が広がったことで党員が増加傾向にあること、昨年9月以降は月1000人単位で増え、これまでに計9000人増加、「(小林多喜二の)『蟹工船』が若者を中心にブームになり、マルクスに関心が集まるなど、党が体験したことのない状況にある」と報告した。このことで、解散間近との政治的警戒が強まりマスコミの取材攻勢は止まり、ブームは沈静化したかにみえた。しかし、同年末の「新語・流行語大賞」で流行語トップ10に「蟹工船(ブーム)」が選ばれた。2009年にはSABU監督による新作「蟹工船」が制作され、若者たちを中心に未曾有の規模と質でブームは続いた。



今回の「小林多喜二展―「蟹工船」ブーム」コーナーでは、その推移を2006年『マンガ蟹工船』刊行以降から現在までの動きをたどり展示・検証した。



◎印は展示物、〇はスペースの関係で出展できなかったもの。※記事タイトル/執筆者/掲載誌/掲載号



◇ ◇ ◇



【2006年】〇『マンガ蟹工船』(原作・小林多喜二,作画・藤生ゴオ,解説・島村輝「「蟹工船」を解体するキーワード」),2006,11,07



【2007年】★「蟹工船」読書エッセーコンテント(小樽商科大学、白樺文学館多喜二ライブラリー主催、朝日新聞社、北海道放送、秋田県立図書館、東銀座出版社後援)



〇「「蟹工船」再読」立松和平,遊行社,モルゲン74 ,9.2007-9



【2008】★雨宮処凛と作家の高橋源一郎の対談「格差社会:08年の希望を問う」,毎日新聞,2008,01,09



★「「蟹工船」重なる現代 小林多喜二、没後75年」由里幸子,朝日新聞,200,2,14



○「春夏秋冬 「蟹工船」ブームに思う」湯地朝雄,社会評論 (154), 2008



○「中古典ノスヽメ(9)現代版『蟹工船』--鎌田慧『自動車絶望工場』の巻」斎藤美奈子,スクリプタ 3(1), 2008



○「この一冊 『蟹工船』小林多喜二著」富田武,現代の理論 17, 2008



◎高校のひろば(特集 『蟹工船』2009--今、若者は何を問いかけているのか) 70, 2008○「座談会 若者たちは今、連帯することに展望を見出している」沖田朋子,山口さなえ,山田真吾 [他] /○「『蟹工船』ブームと現在の日本社会 」小森陽一



○「日野原先生をとおして見えた『蟹工船』とハルピン」 吉中丈志,病院図書館 28(3), 2008



○「私と多喜二 『蟹工船』--その可能性の中心 (特集 小林多喜二没後75年)」浅尾大輔,民主文学 (508) (558), 2008-02



○「小林多喜二『蟹工船』に見る昭和初期の検閲 」関麻理菜,北の文庫 (47), 2008-02



★小林多喜二没後75周年記念第20回杉並・中野・渋谷多喜二祭で不破哲三・社会科学研究所所長記念講演「時代に挑戦した5年間」



○「マンガ本「蟹工船」まで (特集 格差と貧困をうたう)」猪野睦,詩人会議 46(4), 2008-04



◎「『蟹工船』立ち上がる若者たちのバイブル (名作をたのしむ) 」雨宮処凛、女性のひろば (351), 2008-05



◎経済 (152), 2008-05(今、僕たちは『蟹工船』の中にいる--若者が読んだ小林多喜二)○「多喜二が僕にくれた希望、そして光 」小松 史郎/○「生きるか死ぬかのたたかいを起こす時」山田真吾



★ めざましテレビ:80年前の小説「蟹工船」今ブームの理由>5/27放送



◎「「蟹工船」ブームの小林多喜二は「エリート銀行員」だった!」週刊新潮 53(20), 2008-05-29



◎「青年トーク「蟹工船」を語る (多喜二の文学を語る集い特集)」 浅尾大輔,山口さなえ,狗又ユミカ,民主文学 (512) (562), 2008-06



○「「名ばかり店長」こそ現代版『蟹工船』だ!」サンデ-毎日 87(21), 2008-06-01



★ 関西テレビスーパーニュースで「蟹工船」特集>



◎本家「ジェイン・オースティンの?」より熱い!? 週刊朝日"腐女子部"の「蟹工船」読書会@かに道楽」、週刊朝日 113(25), 2008-06-06



○「「ビートたけしの21世紀毒談(第938回)若者たちの『蟹工船』ブームで「共産党ってトレンディ!」の時代がやってくるぜっての」ビートたけし,週刊ポスト 40(28), 2008-06-20



★ 読売CS 日テレG+ 特集「蟹工船」と現代の若者>6/9放送



★ 毎日放送「VOICE」で、特集「いまどきなぜ-「蟹工船」にはまる若ものたち」>6/27放送



★おはよう日本で「蟹工船」と若い世代>6/29放送



○「なぜ今『蟹工船』なのか 小林多喜二にすがる危うき現代社会」桑原 聡,正論 (436), 2008-07



◎「「蟹工船」と新貧困社会--これは「第二の敗戦」だ」吉本 隆明,文芸春秋 86(8), 2008-07



○「ニュースを見に行く!『現場の磁力』(91)小樽 蟹工船を読んでボロボロと涙が出た。私だって寒い」山藤章一郎,週刊ポスト 40(31), 2008-07-04



○「700万団塊の老後を襲う 『蟹工船』の次は『楢山節考』だ! 医療年金崩壊はもう始まっている」、サンデ-毎日 87(28), 2008-07-13



◎金曜日「なぜ今『蟹工船』ブームなのか」 16(28), 2008-07-25「貧困から連帯へ これが日本の生きる道--対談」井上ひさし, 雨宮処凛/



◎「予想外のブームになった背景と売れ方を検証する ブームの『蟹工船』は実際、どのくらい売れているのか」長岡義幸,創 38(8), 2008-08



◎「蟹工船」の先の「まぶしさ」酒井信,文学界,2008.8



○「「蟹工船」と「日本国憲法」--私たちは今どう生きるか」畑田重夫,平和運動 (454), 2008-08



◎「私たちはいかに『蟹工船』を読んだか」(月刊全労連」.2008.8)



○「『蟹工船』完全採録シナリオ (特集 蟹工船)」 、シネ・フロント (363), 2008-08



○「 [昭和20年]8・15対談(後編)保阪正康・佐野眞一 満州、沖縄、天皇制、『蟹工船』」保阪 正康,佐野 眞一,サンデ-毎日 87(35), 2008-08-24



○「座談会 世代を超えた連帯で「蟹工船」を抜け出せ!」北崎トシ子,岸敬子,秋元いずみ [他],女性のひろば (355), 2008-09



◎「小説『蟹工船』を地でいった「エトロフ丸」虐待の地獄絵図 (総力特集 昭和&平成 「貧乏」13の怪事件簿) 」、新潮45 27(9), 2008-09



○「知識人はどこに(9)若者がマルクス主義に走った『蟹工船』の時代と現代--社会主義経済が機能しないことを実証したノーベル賞学者 」安井 太郎,月刊テ-ミス 17(9), 2008-09



○「青年労働者のすがた--小説『蟹工船』ブームの裏に」山口さなえ,学習の友 (661), 2008-09



○「一冊の本(新連載・1)いまなぜ「蟹工船」がうけるのか--[小林多喜二著]『蟹工船』」佐藤忠男,ひろばユニオン (559), 2008-09



○「月給5万7000円「毎日新聞は現代の蟹工船だ」 (「格差社会」極まれり!)」,週刊ポスト 40(42), 2008-09-12



◎『蟹工船』は中国でどのように読まれてきたのか、陳 君,小樽商科大学人文研究 116, 2008-09-30



○「私の「蟹工船」日記 (小特集 たかが貧乏、されど貧乏)」末永直海,新潮45 27(10), 2008-10



★コミックパンチ誌で漫画『蟹工船』連載開始、小森陽一解説、2008・10



◎キネマ旬報 (1518), 2008-10○「「蟹工船」原作、映画の時代、そして小林多喜二の映画的思考 (映画「蟹工船」も現代を映すか?) 」/



○「『蟹工船』が描いた世界と人間らしく生きる道 (格差・貧困社会のしくみと労働者の力)」吉田 豊,学習の友 (-),2008-10



○「蟹工船のふるさとでいま、起きていること (なぜ賃金はあがらないのか)」鈴木 徹,まなぶ (613), 2008-10



◎「『蟹工船』小林多喜二は「サルマタ三枚重ね」で勝負する」井上 章一,諸君 40(11), 2008-11



○「『蟹工船』ブームで新規入党急増? "上げ潮"日本共産党の虚実」筆坂秀世,正論 (440), 2008-11



◎「座談会 『蟹工船』では文学は復活しない」柄谷 行人 , 黒井千次 , 津島佑子、文學界 62(11), 2008-11



○「任侠映画から『蟹工船』へ (特集 継承)」深江誠子,公評 45(10), 2008-11



○「貧困を往く 続・私の「蟹工船」日記」末永 直海,新潮45 27(11), 2008-11



◎「2008年の「蟹工船」現象--その背景と展開」島村 輝,日本近代文学 79, 2008-11



○「『蟹工船』の現在--若い人たちの発見 (福祉切捨てと障害者) 」近藤宏子,人権と教育 (49), 2008-11



○「特別ゼミナール 志位和夫共産党委員長が語る 「蟹工船ブーム」と「格差社会」 」、ボス 23(12), 2008-12



○「「こころの時代」解体新書 リーマン・ショックと「蟹工船」ブーム」香山リカ,創 38(11), 2008-12



【2008年】○(特集 『蟹工船』ブームの先へ) 」Posse 2, 2008-12 ○「若者と『蟹工船』のリアリティ--ブームを普遍性にするには/○「国会議員に聞く!『蟹工船』ブームの真実」小池晃, 亀井亜紀子/○「「現代の蟹工船」から脱出するために」雨宮処凛,土屋トカチ/○「プロレタリア文学の「手紙」が世界に舞う」楜沢健、Poss 2, 2008-12/○「対談 ナショナリズムが答えなのか--承認と暴力のポリティクス--高橋哲哉×萱野稔人」高橋哲哉 , 萱野稔人/○「映画紹介 『蟹工船』」大森久雄,人権 21 (197), 2008-12



【2009年】★ノーマ・フィールド『小林多喜二-21世紀にどう読むか』,岩波新書,2009・01



〇「国文学」特集=再読 プロレタリア文学(2009,01)



○「「実践的運動者の立場」で『蟹工船』を「読む」こと--HOWS講座で湯地朝雄氏への質疑を通じて私が考えたこと」飯島聡,社会評論 (156), 2009



○「再録 小林多喜二『蟹工船』の着眼点」湯地朝雄,社会評論 (156), 2009



○「労働者団体の活動と低強度紛争戦略--『蟹工船』をどう読むか 」橘秀和、神戸市外国語大学外国学研究 74, 2009



◎「女性たちは「蟹工船」をいかに読み、なにを書いたか (特集 女性文学は、いま--グローバリズムとナショナリズムを問う) 」島村輝,社会文学 (30), 2009



○「小林多喜二『蟹工船』の「集団描写」--日本自然主義との関係から」梁喜辰 ,中央大学大学院研究年報 (39), 2009



○「宮崎・映画「蟹工船」上映会の成功で変化が生まれた (特集 若者の「二重の苦しみ」の実相に迫る)」馬場真由美,前衛 (838), 2009-01



○「日本の『蟹工船』ブームと中国の国語教科書からの『包身工』の削除について」張新力、言語と文化 (20) (47), 2009-01



○「「蟹工船」論--封じられた光景」 高橋博史,国語と国文学 86(2), 2009-02



○「「蟹工船」と「年越し派遣村」」吉見菱海,水産週報 (1769), 2009-02-01



○「[小林多喜二]蟹工船ってどんな本なの?」浜林正夫、学習の友 (667), 2009-03



民主文学 (521) (571), 2009-03◎「「蟹工船」の成立と今日の文学的課題」 牛久保建男/◎「現代格差社会における『蟹工船』--叛逆(てむかい)の行方 」尾西 康充



○「仕掛け人が明かす「ヒットの理由」 (特集 『人間失格』『蟹工船』『カラマーゾフの兄弟』の次にくるもの リバイバル・ブームを読む!」杉山直隆 , 須貝俊 、綾部二美代 , 池上冬樹,木村潤 ,大崎梢,塚本裕子.石田衣良 , 友清哲,文蔵 42, 8-17, 2009-03



○「雇用「お役所蟹工船」保育士もヘルパーも」 鈴木琢磨, 福山栄子,アエラ 22(10), 2009-03-02



○「『蟹工船』と若い世代」伊豆利彦,経済 (163), 156-159, 2009-04



○「蟹工船」のリアル--2009 (特集 五月病をこじらせろ!--働き方を考える)、 田野新一,解放 (612), 2009-04



○「若者よ、蟹工船はいいが共産党は止めておけ (オピニオンワイド コイツだけは許せない)」筆坂秀世、週刊文春 51(17), 2009-04-30



◎「戯曲 蟹工船」安川修,テアトロ (819), 2009-05



◎「『蟹工船』における労働者の連帯--松阪の「戦旗」防衛関西巡回講演会に触れながら」尾西康充,三重大学日本語学文学 (20), 2009-06



◎「中国における『蟹工船』について」 島村輝,東方 (340), 2009-06



○「中国近代文学と『蟹工船』」阿部幸夫,東方 (340), 2009-06



○「「蟹工船」―「自分で考えろ」がこの映画のメッセージ 」SABU、創 39(7), 2009-07



○「劇評 再演・リメイク・再創造(リ・クリエイション)--座・高円寺=俳優座=「蟹工船」、七字英輔,テアトロ (821), 2009-07



◎「対談:『蟹工船』を語る=SABU監督/小森陽一,シネ・フロント (369),2009-07



○「あなたも知的蟹工船に乗っている」 (特集 全脳思考&統計突破力トレーニング) -- (全脳思考を鍛える!) 、週刊ダイヤモンド 97(28), 33-35, 2009-07-11



○「シネマ館 「蟹工船」」大黒昭,エコノミスト 87(38), 2009-07-14



○「演劇時評(第3回) 蟹工船」 悲劇喜劇 62(8), 2009-08



○「ため息平成「蟹工船」」 筆坂秀世,正論 (450), 2009-09



○「格差と貧困の文学(4)蟹工船」 宮本阿伎,女性のひろば (368), 9, 2009-10



○小林多喜二『党生活者』--『蟹工船』とともに (特集 この一冊(part 1)) 山田正行,季報唯物論研究 (110), 2009-11



○『蟹工船』の読めない労働者 : 貴司山治と徳永直の芸術大衆化論の位相 (特集 プロレタリア文学)和田崇,立命館文學 (614), 2009-12



【2010年】◎井上ひさし作戯曲「組曲虐殺」,すばる,2010・01



◎「特集=プレカリアート文学とプロレタリア文学のあいだに--ホラー小説・『蟹工船』・雨宮処凛的転回」、高橋敏夫,国文学 : 解釈と鑑賞 75(4), 2010-04



○「劇評 貧困と官僚主義--ティーファクトリー=大市民、東京芸術座=蟹工船 二兎社=かたりの椅子」七字英輔,テアトロ (834), 2010-06



○「「格差」ある世界を写す鏡として--中国における『蟹工船』受容」 、島村輝,中国 (25),2010-07



【2011年】★2月18日 神田雑学大学定例講座N0544「浮かび上がる検閲の実態」を実施。「小林多喜二「蟹工船」の場合」大滝則忠・元国会図書館副館長



★「歴史秘話ヒストリアン―小林多喜二」の番組(2/24放送)>



○「実践記録/高校 映画「ああ野麦峠」「蟹工船」で生徒は何を考えたか」 (特集 子どもの成長と社会科) 浅尾弘子,歴史地理教育 (771), 2011-03



【2012年】○「蟹工船の史実を求めて」宇佐美昇三 ,日本水産学会誌 78(2), 2012-03



〇「歴史的岐路と「蟹工船」」北村隆志,クラルテ第4号、2012.9

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