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「蟹工船」日本丸から、21世紀の小林多喜二への手紙。

小林多喜二を通じて、現代の反貧困と反戦の表象を考えるブログ。命日の2月20日前後には、秋田、小樽、中野、大阪などで集う。

悲劇ではなく喜劇の「組曲虐殺」

2009-10-23 07:55:40 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報



演劇:組曲虐殺(こまつ座&ホリプロ) 多喜二を井上が清々しく造形

 小説「蟹(かに)工船」などを残したプロレタリア作家の小林多喜二は1933年、特高警察の拷問により、29歳で亡くなった。若すぎる死に至る前の2年9カ月間に焦点を絞って、井上ひさしが評伝劇を書き下ろした。井上らしく、虐殺を糾弾する悲劇というより、涙を秘めた笑いにあふれる音楽劇となっている。演出は栗山民也。

 出演俳優は6人だけ。多喜二(井上芳雄)は大阪の警察署で、古橋(山本龍二)と山本(山崎一)に尋問された。いったんは釈放されるが、特高刑事の2人は終幕まで、さまざまな形で多喜二を追い続ける。だが、それぞれ若いころの切ない思い出を持ち、多喜二と共感する部分があって、奇妙な“伴走者”となる。

 多喜二は同志(後に妻)のふじ子(神野三鈴)と東京・杉並の家に住んでいた。小樽から姉のチマ(高畑淳子)と恋人の瀧子(石原さとみ)が上京し、彼を訪ねてくる。瀧子は酌婦だったが、多喜二が彼女の借金を払い、自由の身にした。女性3人は彼を支え続ける。

 音楽とピアノ演奏はジャズピアニストの小曽根真。井上作品とは初めての出合いだが、即興や複雑に変化する間奏を盛り込んで、時代の空気を映す理不尽な暴力と不安感をうまく表現している。

 伏せ字だらけを嘆く「伏せ字ソング」、女性3人の「豊多摩の低い月」、大詰めに6人全員でかけがえのない風景について歌う「胸の映写機」など、いい歌がそろっている。

 あっという間に命を奪われるけれど、多喜二は明るい楽天主義者で、チャプリンのまねを好んだという。井上が清々(すがすが)しく造形している。



25日まで天王洲・銀河劇場。【高橋豊】

「毎日新聞」10/21付より
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「いのちの記憶~小林多喜二29年の人生」横浜上映会11/10-21のお知らせ

2009-10-19 23:25:11 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
「いのちの記憶 ~小林多喜二 二十九年の人生~」上映会のお知らせ


北海道放送(HBC)が平成20年に制作・放送したテレビ番組「ヒューマンドキュメンタリーいのちの記憶 ~小林多喜二 二十九年の人生~」(平成20年度(第63回)文化庁芸術祭テレビ部門 芸術祭大賞受賞作品)が横浜市で上映されることになりました。

この作品には、ノーマ・フィールドシカゴ大学教授、三浦綾子記念館の三浦光世館長ほかも出演しており素晴しい作品ですので、この機会にぜひご覧下さい。

1.番組上映会
◦①予定日:平成21年11月10日(火)から11月23日(月) ※16日 休館
◦②場 所:放送ライブラリー施設内(横浜市中区・横浜情報文化センター9階)
◦③上映予定番組:今年6月にNHKが放送した『ザ・ベストテレビ』で放送された8番組
◦※各番組は2日間に1回上映予定
【作品内容】

小林多喜二の人間としての面にスポットライトを当て、激しく右傾化していく時代と誠実に対峙し、その時代と激突して志なかばで死んだ人間としての多喜二や、恋に悩み、家族や社会的な弱者に対する暖かく優しい目を持ち続けた多喜二をリベラルな視点から描いています。わずか二十九年で切断された多喜二の無念の人生が、長い年月を超えて、今、鋭く突きつけてくる問いとは何なのかを、北の風土の特性と共に描きながら見つめた作品です。
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SABU監督映画「蟹工船」DVD発売決定!!

2009-10-18 20:46:27 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
映画「蟹工船」DVD発売決定!!
映画

7月公開の映画「蟹工船」のDVDが、来年1月21日(木)に発売されます。
映画「蟹工船」DVD発売決定!!

2009年 7月公開の映画「蟹工船」のDVDが、はやくも来年1月21日(木)に発売されます。





価格 3620円



amazonで予約受付中!!
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多喜二と宮本顕治

2009-10-18 10:40:33 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
昨10月17日は、多喜二の盟友の一人とされる宮本顕治の生誕101年の日だった。

先日、日本共産党は第9回中央委員会総会を開き、来年1月に党大会を開き、総選挙の総括・参議院選挙選への方針、中央委員会役員を改選することを発表した。

志位委員長報告では、「蟹工船」ブームに対する取り組みへの言及、宮本顕治への言及もなかった。

それはそれで結構なことだと思う。


しかし、私は墓誌として、改めて宮本顕治のあゆみを思いおこしておきたい。

                    ◇



宮本顕治 みやもと・けんじ
1908.10.17一 - 2007年(平成19年7月18日) 

 政治家 文芸評論家 日本共産党中央委員会議長 

(学歴)東京帝国大学経済学部卒
(出生)山口県光市上島田
(別名)野沢徹,山崎利一 
(団体)日本プロレタリア作家同盟,日本共産党

松山高校時代からマルクス主義と文芸評論に関心をもち、同人雑誌『白亜紀』を出す。1928(昭和3)年東大入学後は読書会(社会科学研究会)や『無産者新聞』の配布を手伝う。宮本顕治の名が一躍有名になったのは翌29年、芥川龍之介を論じた「「敗北」の文学」が雑誌『改造』の懸賞に第1席で入選したことによる。

この時、同時に次席で入選したのが、小林秀雄「様々な意匠」。受賞後、「評価の科学性について」「同伴者作家論」などの評論を発表する一方で、生江健次とともに戦旗社の仕事を手伝い、東大卒業直後の31年5月、生江と手塚英孝の推薦で共産党に入党、ナップ指導係として戦旗社を担当。

コップ結成(31年11月)にともなう組織の再編で、党の文化団体内フラクションのビューローメンバーとなり、32年3月上旬には党中央アジ・プロ部員となった。

結成直後のコップにたいし、32年3月から弾圧が加えられ、蔵原惟人をはじめ主要な党員はすべて検挙されたが、顕治は中条百合子と結婚(32年2月)して東京を離れていたため逮捕をまぬがれ、そのまま地下生活に入った。

この弾圧は、党中央の指導者として生江健次が連絡していた人物がスパイM(松村)こと飯塚盈延であったことから、官憲側の周到な計画によるものであったことが、今日では明らかになっている。

つまり文化運動の主要なメンバーをつぎつぎに入党させ、コップとその加盟団体の指導部を党員で固めることにより、党員の一網打尽と指導部の破壊を一挙に行なおうとするものであった。官憲側は個々の人物の入党の事情を、その時点ですべて掌握していながら、この弾圧まで「泳がせて」いたわけである。

顕治は地下から小林多喜二、鹿地亘を通じて運動の再建にとり組むとともに、自身も「政治と芸術・政治の優位性に関する問題」(野沢徹・署名)や「文化・芸術運動の基本的方向の歪曲に抗して一基本的方向に『二つの道』『中間の道』はない」(山崎利一・署名)を書き、運動内部の敗北主義を批判した。

党内では、相つぐ弾圧で捨導部がつぎつぎに破壊されるなかで、33年5月に野呂栄太郎委員長のもとで中央委員となり、同年12月26日逮捕された。

予審訊問には一切黙秘を通したが、治安維持法違反のほかに、大泉兼蔵とともにスパイ容疑で査間中の小畑達夫が急死した事件(いわゆるリンチ事件)でも監禁致死を問われ、45年1月に無期懲役の判決を受けた。

同年10月9日、占領軍の治安維持法廃止・政治犯釈放の指令により網走刑務所から解放された。

戦後は共産党中央委員。50年裂では「国際派」に属し、六全協で正式に緒導部に復帰。57年第7回大会後の中央委員会総会で書記長に就任、宮本指導体制を確立。

また国際的な関係では中ソ対立のなかではじめはソ連批判を強めたが、66年には中国共産党とも決裂、いわゆる「自主独立路線」を確立した。

77~89年に参院議員。

1980年11月、『文芸評論集第一巻』「あとがき」を出版。「あとがき」の長大な論文で、プロレタリア文学の総括をおこなった。

82年以降も中央委議長、名誉議長をつづけ、最晩年は一線を離れ、「余生」を生きて、2007年に死去した。




7月のあの暑いなかでの青山葬儀場での葬儀を思いおこす。



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サブ監督「蟹工船」ニューヨークレビュー

2009-10-17 18:56:54 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
Sabu’s “Kanikosen” – New York Film Festival 2009 Review

By Christopher Bourne

“Kanikosen,” or “The Crab Factory Ship,” is a famous work of proletarian literature by Takiji Kobayashi, first published in 1929. It tells the story of a group of men on a crab fishing and canning operation on the sea brutally treated by their greedy, tyrannical boss, and who eventually rise up against their oppressors. The original novel, as well as a manga adaptation, experienced a resurgence in popularity in Japan last year, especially among young readers, who identified with the novel’s oppressed workers, as they saw opportunities in their own lives increasingly hard to come by.

Ryuhei Matsuda (Shinjo) in Sabu's "Kanikosen."
Ryuhei Matsuda (Shinjo) in Sabu's "Kanikosen."

Photo Credit: Film Society of Lincoln Center

Such a work, then, would seem to be an unlikely source for a film by comic auteur Sabu (“Non-Stop,” “Monday,” “Unlucky Monkey,” “Drive”), whose work up to now has consisted mostly of fast-paced, anarchic comedies. “Kanikosen,” the second film adaptation of Kobayashi’s novel (the first film version was made in 1953), finds Sabu in a much more serious, earnest mode – while still retaining his unique brand of humor, however. The film’s opening, in which a worker attempting to escape the ship is rained upon by a torrential shower of crab shells, would not be out of place in any of his other films. There is also a very funny sequence, illustrated with flashback inserts, in which the workers one-up each other in describing how desperately poor their families are. Later, a mass attempted suicide becomes unexpectedly hilarious.

The gear wheels and the endless assembly-line canning work on the ship are an unending source of misery for the men, a sort of Charlie Chaplin’s “Modern Times” without the humor. The men grieve for their families and curse their rotten fate. Brief flashbacks show us their lives before coming to this ship, where they were lured with the promise of great riches to bring back for their families, but instead find themselves trapped in a hellish existence. Sabu departs somewhat from the original novel, which being true to its exaltation of the proletariat class, did not give any of the characters names, making the working class itself the protagonist. In Sabu’s version, one clear leader emerges – Shinjo (Ryuhei Matsuda), who leads the workers in revolt against their despotic boss, Arakawa (Hidetoshi Nishijima), who drives the men literally to death to increase their yield and amass glory for himself and his superiors. Shinjo and another worker attempt to escape the ship and find themselves on a Russian ship, which is revealed to be a worker’s paradise in stark opposition to the fascistic atmosphere of their own ship. Inspired by the Russians, Shinjo returns to lead his co-workers in revolt against Arakawa and the rotten system he represents.

Sabu makes brilliant use of his source material, retaining the agitprop elements of the novel to deliver a truly exhilarating and rousing film. “Kanikosen” is much more structurally sound than most of his other films; as inventive as many of his original scenarios are, they have a tendency to run out of steam at a certain point and become repetitious. The fact that Sabu this time is adapting another author’s material seems to have forced some discipline on his writing, making “Kanikosen” a fully realized and consistent work. Sabu is greatly aided by an impressive cast; Matsuda (“Gohatto,” “Blue Spring,” “Nightmare Detective”) and Nishijima (“License to Live,” “Dolls,” “Vacation”) make for very compelling antagonists.

“Kanikosen” screens at the New York Film Festival on September 27 and 28. To purchase tickets,

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「組曲虐殺」を観て

2009-10-12 10:36:37 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
井上ひさし脚本「組曲虐殺」には二人の特高が登場する。
この二人がこの舞台で大きな存在感を示していた。

なかでも山崎一演ずる「山本巡査」の演技は出色だ。
舞台の詳細は、観劇される方のネタばれとなるためまだここには書き込まない。

                ◇
小林多喜二ファンなら知っていることだが、多喜二に「山本巡査」という戯曲がある。

今回の井上ひさしの脚本は、この「山本巡査」へのオマージュであるとさえ思えるほど、そのエッセンスをとりいれている。


それだけに、この「山本巡査」を読んでお出かけになることをお勧めする(祥伝新書『近代日本の貧困―小林多喜二名作選』におさめられている)。


この作品は、多喜二がプロレタリア文壇でのデビュー作「一九二八年三月十五日」に2か月ほど先だって書かれたものだ。

前衛芸術家同盟の機関誌『前衛』投稿されたが、ボツにされた作品だ。



多喜二の原稿帳にその下書きが残されているので、全集にはおさめられているものあまり一般の注目を浴びることはなかった。




「山本巡査」は、一幕四場の戯曲。多喜二の戯曲はこの他では「女囚徒」があるのみ。




あらすじは以下の通り。

工場労働者の一人が足を切断される事故にあったにもかかわらず、何の補償もなく解雇されたことで、労働争議が持ち上がった。

この争議の間、山本巡査は労働者の集会の見回りを命ぜられていた。山本は、巡査という職業にプライドを持ち、権利を主張する労働者たちを心から敵とみなしていた。

しかし労働者を検束する際、乱闘騒ぎになり、山本は足を痛めてしまう。すると、警察署長は、使いものにならなくなった山本巡査を解雇する。

山本は自身の犠牲を尊いものと考えようとするが、山本の家庭には、身重の妻と、子供が二人あり、生活が困窮するのは眼に見えていた。

その後山本は、署長に面会しにいくが相手にされず、自身がもはや署にとって「壊れた人形」にすぎないことを知る。

その労働争議から二年が経った頃、山本は自分が労働者の立場になり、演説をする夢をみてショックを受け、とうとう自殺する。

しかも、皮肉なことに、山本の死に対し抗議の声を上げたのは、小樽合同組合であった。山本の同僚の巡査たちは、労働者の主張こそ真実であり、全国の巡査が労働者側に寝返りをうつかもしれない、と密かに語りあう。

そこへ、狂乱状態になった山本の妻が怒鳴り込んできた。

[書誌]初収:日本評論社版小林多喜二全集 第二巻 一九四八(昭二十三)年九月発行
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泣けました。何度も・・・

2009-10-12 00:11:36 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
「組曲虐殺」伊藤ふじ子役がとても素敵でした。
声がふじ子さんの声だと思えました。

三鈴のセリフのたびに、ふじ子さんが浮かんでしまい泣けました。


恥ずかしいほど何度も泣きました。


必見!!
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「組曲虐殺」パンフレットより

2009-10-10 07:11:28 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
「組曲虐殺」パンフレットより、小林多喜二とその時代背景をたどる。







≪小林多喜二 二十九歳四ヶ月の生涯≫



小樽

「ぼくが四歳の頃、食えなくなったぼく達の一家は北海道小樽に移住した」



文学を愛し、絵画、音楽を愛し、演劇を愛した少年多喜二が、胸を張って歩き出した街。1907年・・・



伯父が経営していたパン屋に住み込み手伝いをしていた。



多喜二は絵が好きだった。13歳の頃水墨画を描き始めた。

「小羊画会」というサークルを作り、学校の廊下で展覧会を開く。

でも伯父にやめさせられたと言われている。



小樽商業高校へ入学。第2外国語にフランス語を選ぶ。



           



≪プロレタリア文学≫


「この一篇を全国津々浦々の『小作人』と『貧農』に捧げる」

多喜二は、地主や資本家たちに搾取される農民、労働者の立場で、社会や組織と人間関係を描き、官憲の横暴、支配を告発!

『一九二八年三月十五日』 『蟹工船』 『不在地主』を書き、小樽の銀行を辞めさせられた。




小樽商の関東大震災義損外国語劇大会で1923年多喜二20歳、多喜二が演じた劇。

フランス語劇メーテルリンク『青い鳥』。

山羊役で出演。



多くの近代劇戯曲、演劇書に親しんだ。



1923年・・・

社会主義者大杉栄とその妻子、労働組合活動者、平沢計七らが、殺害される。



多喜二は、映画も好きだった。

チャップリンが好きで歩き方などを真似てみせて笑わせた。



1924年(大正13)不幸な境遇にあった田口タキの借金を払って救い出す。(恋人となる)



プロレタリア雑誌『戦旗』

1928年(昭和3)~1931年(昭和6)発売。

しばしば発売禁止になる。



『蟹工船』

海上の移動缶詰工場のようなもの。

作業従事者たちは、劣悪過酷な奴隷のような労働条件で、働かされていた。

蟹工船内で虐待事件があったことも報道された。



1927年(昭和2)多喜二が観た劇。

築地小劇場公演 『海戦』

多喜二は・・・

「自分は『海戦』が益々テンポが早くなってゆく時、ベートーベンの「第九交響楽」のあの最後の暴発的な大叫喚を思い出した。あれよりは、然しもっと強烈な印象だった。

身体が震えてくる程の興奮をうけた」 と。。。


この舞台の成功のためにビラをまき、前売り券を売りさばいた。

大砲の音を表現するためにピアノの調達にも力をつくす。




           



≪東京・独房の中≫



「一九三○年の除夜の鐘を、独房の中できくことだろう」

上京した多喜二を待っていたのは、豊多摩刑務所独房の中。

『北緯50度以北(蟹工船)』 『不在地主』

自作上演を獄中書簡で知人へ知らせた。



1929年(昭和4)7月26日~31日

築地劇団によって『北緯50度以北(蟹工船)』 帝国劇場で上演。



その年10月

市村座で『不在地主』を上演。



           



≪地下活動≫



「仕事を進めています。間に合いそうです。

題名は『党生活者』というのです。『失業者の家』という題名は取り消します。」

同志が次々と検挙・投獄される弾圧が続いた。

多喜二は非合法の党員になり、文化団体の責任者となった。

隠れ家を転々とする日々。。。



非合法活動をしている中で、伊藤ふじ子と結婚。

ふじ子は、画家志望。後に女優として舞台に立つ。

検挙経験あり。

タキは恋人。ふじ子は妻。



伏せ文字

検閲と弾圧時代。命をかけて書き続けた多喜二の作品は、検閲で文章の多くが「××」という伏せ文字や、

「何文字削除」などで記載された。

その時代、不適切な単語。。。



『失業者の家』という題名は取り消します。

手紙の一文、この文章も苦闘したもの・・・



1932年(昭和7) 5・15事件



           



≪警視庁築地警察署の中≫



同志だと信じていた仲間に特高刑事のスパイがいた。

1933年(昭和8)2月20日正午ごろ、同志ともども逮捕される。



午後7時45分死去。 警察は心臓麻痺と発表。



           



≪虐殺者たち≫



警察が公表した死因は、心臓麻痺。

しかし、その実態を証明する写真とデスマスクが残された。

拷問による虐殺!

「お母さんは身体が悪く、頭も悪いらしいから、気をつけて

親切にしてやるといいと思う。じゃ元気で!幸せで!」



多喜二のデスマスクをとった演劇人



この演劇人の中には、「組曲虐殺」の演出家、栗山民也さんの義祖父である大演出家、千田是也さんがいる。



多喜二の母セキには、後年文字を覚え遺した肉筆がある。



「あーまたこの二月がきた ほんとうにこの二月という月が

いやな月 こえをいっぱい なきたい どこへいっても

なかれない あー でもラジオで すこしたすかる

あー なみだがでる ぬがぬがくもる」



           



≪戦争への道≫



多喜二虐殺後、日本は太平洋戦争へひた走った。

虐殺者は、出世の階段を登りつめた。

やがて敗戦。。。。

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井上芳雄さん/「組曲虐殺」の多喜二を語る

2009-10-08 23:40:23 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
月曜インタビュー/俳優・歌手井上芳雄さん/多喜二描く新作舞台で主演/思いを自分なりに伝えたい


 透き通る美声、ずば抜けた歌唱力、演技の巧みさで「ミュージカル界のプリンス」と呼ばれる井上芳雄さん。その井上芳雄さんが、「蟹工船」の作家・小林多喜二を演じます。10月3日から始まる井上ひさしさんの新作芝居「組曲虐殺」。ところが台本がまだ完成していず、毎日ファクスで少しずつ送られてくる状況。緊迫し燃え上がるような、東京都内のけいこ場で、井上芳雄さんにインタビューしました。
 「台本が全部できていないのはつらいところはありますが、できている部分を少しでも自分のものにするので精いっぱい、というところです」
 「台本が届くと、その夜のうちに小曽根真さんが曲をつけ、次の日に役者みんなで歌っていて、すぐ井手茂太さんが振り付けをつけてくれる。みんな一流の素晴らしい人ばかりのけいこ場で、毎日すごいことがおこっていて、いま、幸せな、とても豊かな感じがしています」と井上芳雄さん。

虐殺怖れぬ青年なぜなりえたか
 「蟹工船」「党生活者」などの小説で知られ、当時の人気作家だった29歳の小林多喜二は、1933年2月20日、東京・築地署で特高警察の手により虐殺されました。〝蟻(アリ)一匹殺せないような内気でやさしい少年が、なぜ、三時間にも及ぶ拷問に耐え、しかも虐殺さえも怖れない青年になりえたのだろうか〟(「組曲虐殺」のチラシ)。この疑問にたいする答えを探すように、書き進んでいる「組曲虐殺」。
 「多喜二自身、〝貧しい人がどんどん貧しくなって、一部の誰かが豊かになっていくのは、なぜなんだろう〟という疑問を持って、それを素直に厳しく追及して生きていった人なんじゃないでしょうか。井上ひさしさんの台本や、三浦綾子さんの『母』を読んで、そう思いました」
 「多喜二は、搾取というシステムのこと、人を貧しくする社会の構造の問題を発見してしまって、そのままにしておけなかった。自分のこと、周りのことだけを考えるのではなく、とても広い、世の中全体を見据えていたのが多喜二という人だったと思います」
 芝居の中で、歌がたくさん歌われます。井上さんが美しいテノールで歌う「代用パン」の歌も「代用パンは安いんだ…貧しい人にも買えるのに/売れ残るのはなぜなんだ」と、素朴な疑問を歌っています。

大事なことをやさしい言葉で
 井上ひさしさんの戯曲の特徴について、こう語ります。
 「井上先生のすごいところは、専門用語を使わず、だれにでもわかりやすく社会の仕組みなり、時代なりを描いていることです。こんなことがあったんだ、という大事なことを、やさしい言葉で教えてくれています。井上先生のいっていることが、すごく自分の胸に響いてきて、明日から、そういうことを考えて生きてみよう、と、そんな気持ちになります。よくいえば素直に、悪くいえば何も考えずに生きてきた僕らのような世代にとって、とても大切なことが、たくさん語られているのが、井上先生の芝居です」
 「井上先生の芝居は『日本の優れたミュージカル』だと思っています。音楽の選び方、歌の入れ方がすてきです。楽しく見ているうちに、いつのまにか人生のために必要な言葉をもらっている、これがすごいところです」

役者の使命を感じるように
 ミュージカル、映画、テレビにと、引く手あまたです。これからがいよいよ楽しみな30歳。
 「『ロミオとジュリエット』『ウエスト・サイド・ストーリー』など、若い役は若いうちにやっておいた方がいいですよね。まだ頑張ればやれるかな(笑い)。もっと年をとってやれる役は、たくさんあると思いますけど」
 舞台の仕事の大切さを、最近感じているといいます。
 「ミュージカルをやりたくて舞台に立ち始め、深く考えずにやりつづけてきました。やっと最近、井上先生の作品『ロマンス』(07年)に出演し、ほかの井上先生の作品を見るようになって、役者の使命というものを感じるようになりました。歴史のある部分を今の人に伝える、などの。たとえば多喜二が命をかけて自分の思いを伝え続けた、その一生を調べると、比べてみて自分たちがあまりに心が貧しいのではないか、と感じたり、もったいない生き方をしてはいないか。多喜二と同じことはできないけれど、伝えるということはできるのではないか。自分なりの何かができるようになれればいいな、今考えているところです」
 静かな話し方ですが、ふつふつと芝居への情熱、活力がわいて、抑えきれない様子が感じられました。
 (大井民生)
 ◇
 こまつ座&ホリプロ公演「組曲虐殺」(栗山民也演出)出演=井上芳雄、石原さとみ、山本龍二、山崎一、神野三鈴、高畑淳子、音楽・演奏=小曽根真。10月3~25日=東京・天王洲・銀河劇場、10月28~30日=兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、11月1、2日=山形・川西町フレンドリープラザ。℡03(3862)5941こまつ座

いのうえ・よしお=1979年、福岡県出身。俳優・歌手。東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。在学中の2000年、「ミュージカル エリザベート」の皇太子ルドルフ役で鮮烈デビュー。舞台に多数出演、映画、テレビドラマにも出演。読売演劇大賞杉村春子賞、菊田一夫演劇賞を受賞。
( 2009年09月28日,「赤旗」)
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組曲(多喜二)虐殺@天王洲銀河劇場の感想

2009-10-04 00:26:11 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
 
  •  
    家で冷たくされたり) 多喜二を追いながらも、小説を書いて多喜二にそれを読んでもらって売り込んでもらおうと 企んだり、多喜二を追いかけて大学生やチャップリン風の扮装で変装したり、、、と 何だかコミカルなシーンも多数 最後に多喜二が死んだ後の
  •  
  • い。ただこの「虐殺」ということばだけで正直この作品はあまり興味をそそられなかった。 出演者はたったの6人。小林多喜二(井上くん)、多喜二の姉佐藤チマ(高畑淳子さん)、恋人田口瀧子(石原さとみちゃん)、妻伊藤ふじ子(神野美鈴さん)、
  •  
  • での歌から始まります。 全員で歌う「代用パン」♪小林三ツ星堂パン店~ あぁ、こまつ座!ってやつです! 舞台上はシンプル。 小林多喜二役の井上くんがでてくるまで、取調室で刑事役の山本龍二さんと山崎一さんが二人でかなりの量の会話。 この刑事2人組コンビがやっぱり
  •  
  • マダム向けにお小綺麗に仕上げたんだなーって印象。 全体的に多喜二は愛されてるし、井上ひさしさんも栗山さんも芳雄ヲタを意識してるのが感じられた。 革命仲間のふじ子役の神野三鈴さんと多喜二の姉役の高畑さんは良い仕事をしていた。 二人
     
  • 組曲虐殺 初日 091003 (LUMI hiutale のブログ
  • 『蟹工船』であらためて注目される小林多喜二の短い生涯を 悲劇ではなく、笑いと涙の音楽劇として井上ひさしさんが 書き下ろしたものです。 小林多喜二 井上芳雄 佐藤チマ(多喜二の姉) 高畑淳子 田口瀧子(多喜二の恋人) 石原さとみ 伊藤ふじ子(多喜二の妻) 神野三鈴 古橋鉄雄(特高刑事
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石原さとみがシアターガイドで多喜二さんを語る

2009-10-03 06:39:13 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報

『シアターガイド』11月号(モーニングデスク)  




■井上芳雄&石原さとみ対談/栗山民也インタビュー

井上ひさし書き下ろしによる、舞台『組曲虐殺』。

小林多喜二を演じる井上芳雄さんと、その恋人タキ役の石原さとみさん、そして演出の栗山民也氏が多喜二を語っている。

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新刊紹介 『多喜二の視点から見た 身体 地域 教育』

2009-09-23 20:35:55 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報

新刊紹介 多喜二の視点から見た 身体 地域 教育

 2008年オックスフォード小林多喜二記念シンポジウム論文集

時空を貫き多様な領域へ

(「北海道民医連新聞」2009年3月12日号より)

 

昨年9月16日から18日まで、オックスフォード小林多喜二記念シンポジウムが開催されました。

オーストラリア、ノルウェー、イギリス、日本、アメリカ、カナダ、中国、韓国の33人が発表し、本書には、そのうち 「現在の多喜二研究の水準を示し、さらに今後の研究方向を予測させる」 23編を収載しています。

 一読、多喜二の受容と研究の広がりに目を見張ります。「蟹工船」 をはじめ、「安子」 「不在地主」 「健」「救援ニュースNo.18附録」「暴風警戒報」 などの研究を通して、貧困、暴力、買売春、ジェンダー、グローバリズム、連帯、決起への呼びかけなど、多喜二が提起した諸問題の現代性を浮き彫りにしています。

小樽多喜二祭にも参加した同シンポジウムコーディネーターのヘザー・ボーウエン=ストライクさんは、多喜二への関心は 「単なる学問的関心という以上に、私たち自身が生きる世界のより公正な在り方への切望を惹起するもの」 と評しています。

荻野富士夫、小森陽一、北村隆志氏らの発表は説得力があり、多喜二と村上春樹、松本清張、宮崎駿を関連づけた興味深い研究もあります。多喜二ファンならずとも、挑戦してみたい一冊です。

(丁)

(発行=小樽商科大学出版会、発売=紀伊国屋書店、2000円+税)

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8/29一般発売開始ー多喜二の晩年を描く「組曲虐殺」

2009-08-28 18:01:15 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報

こまつ座&ホリプロが共同制作でお届けする銀河劇場公演第2弾。
井上ひさし新作書下ろしの舞台『組曲虐殺』が

8月29日(土)10:00~一般発売を
開始いたします!

独特の「音楽評伝劇」を創り出す井上ひさしが、プロレタリア文学の旗手・小林多喜二の生きた時代を斬新な手法で描きます。 
『蟹工船』の作者・小林多喜二は昭和の初期に活躍した文学者で、官憲の拷問によって、わずか二十九歳の若さで虐殺……。

演出は“現在日本演劇最高の演出家”と称される栗山民也。
出演は、ミュージカル界のプリンス・井上芳雄。ヒロインには、映像だけでなく舞台でもその存在感が光る石原さとみ。

さらには確実な演技力で多方面の活躍がめざましい高畑淳子らが、井上戯曲の真髄とも言うべき「昭和」の世界に挑みます。
また、井上戯曲に欠かせない音楽は、世界的ジャズピアニストであり、近年はクラシック界にも大旋風を巻き起こしている小曽根真が作曲し、そして生演奏も披露します。

演劇界、そして音楽界もが大注目する舞台『組曲虐殺』は、こまつ座とホリプロが総力を挙げてお届けする、超弩級の新作です。


☆一般発売: 8月29日(土)10:00~ ※先着順

☆作: 井上ひさし
☆演出: 栗山民也
☆出演: 井上芳雄 石原さとみ 山本龍一 神野三鈴 山崎一 高畑淳子
☆音楽・演奏: 小曽根真
☆公演日: 2009年10月3日(土)~10月25日(日)
☆会場: 天王洲 銀河劇場(東京・天王洲アイル)
☆料金: S席8,400円 A席6,300円 (全席指定・税込)
☆手数料: セブン-イレブン引取り:1枚につき105円/宅配:予約1件につき500円
        チケットレス(おサイフケータイ)1枚につき105円

  公演情報はこちら http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=131
 

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8/29 三浦綾子「母」の舞台(入場無料)

2009-08-27 10:48:00 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報
☆北海道文学館主催・舞台に生きる三浦綾子の文学☆

ー大学生、高校生ら若い皆さんによる、朗読と演劇ー

『母』
演出:森一生

日時:8月29日(土)/開場17時30分・開演18時30分(14時30分から公開リハ有)
会場:北翔大学ポルトホール(札幌市中央区南1西22・地下鉄東西線西18丁目下車、徒歩5分)

入場料は、無料で、整理券も必要。


1933(昭和8)年2月20日、無念の拷問死を遂げた作家・小林多喜二。三浦綾子は、その多喜二の母セキの我が子をひたすらに案じながら生きる姿を小説に刻みました。
時代の逆流の中を懸命に生きた人々を現代の若者が演じます。

多喜二ファンの方もそうでない方も、ぜひ見てください!




                  
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ニューヨーク映画祭、SABU監督『蟹工船』を選出!

2009-08-13 16:19:18 | 多喜二関係映画・演劇・書籍・DVD情報

ニューヨーク映画祭、29作品の中にSABU監督の映画『蟹工船』が選出!

2009年8月12日 21時34分 (シネマトゥデイ)

ニューヨーク映画祭、29作品の中にSABU監督の映画『蟹工船』が選出!
映画『蟹工船』より。 - (C) 2009「蟹工船」製作委員会(シネマトゥデイ)

 今年で、第47回を迎えるニューヨーク映画祭(47th N.Y.F.F)のラインナップが発表された。

 オープニングナイトを飾るのは、映画『二十四時間の情事』『去年マリエンバードで』などを手掛けたヌーヴェルバーグ派のアラン・レネ監督による映画『Wild Grass』(原題)。

 クロージングナイトは、スペインのペドロ・アルモドバル監督が描いた映画『Broken Embrace』(原題)になった。

選考された映画は、全部で29作品、18か国から質の高い作品が公開される。

日本からは、SABU監督の映画『蟹工船』が選出されている。

そのほかには、カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたミヒャエル・ハネケ監督の映画『The White Ribbon』(英題)、トッド・ソロンズ監督の映画『Life During Wartime』(原題)、デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーの映画『Antichrist』(原題)などがある。映画祭は、9月25日から10月11日までの17日間行われ、アリス・タリー・ホールで開催される。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)

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