山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

正義の行き先は

2023-02-20 22:06:03 | アート・文化

 最近注目している戯曲家は三好十郎だ。すでに故人だが戦前に書かれた「斬られの仙太」は三好自身の姿でもあり、今日の政治・宗教を告発しているかのようだ。それを原作とする映画「天狗党」をDVDで観る。監督は社会派の巨匠・山本薩夫。空前の学生運動が華やかなりし時代を背景とする1969年の製作。仲代達矢がうってつけの百姓上がりの無頼役「仙太郎」を好演している。原作は「仙太」。

       

 脇役だが、利根の甚伍左親分の中村翫右衛門の風格が見事だ。孤児を保育するお妙役の十朱幸代のはつらつとした演技も光る。仲代と若尾文子とは本作が初共演となる。神山繁・山田吾一の顔も懐かしい。天狗党内部の抗争や矛盾は学生運動の過激派テロをも想起させるが、それは監督の狙いでもあるのかもしれない。

       

 百姓の仙太郎が貢租を減免してもらいたいと百姓を代表して訴えたことで、気を失うほどの百叩きの刑を受ける。それを救ったのが天狗党の侍・加藤剛と親分の中村翫右衛門だった。加藤剛の真っ直ぐな説得で仙太郎は天狗党に入るが、その正義とは裏腹に内部は身分格差や略奪・略取が横行する。また、指導者の二面性も見てしまう。尊王攘夷というイデオロギーの教条に固執する武士やインテリの限界を仙太郎は血と汗を流しながら体感していく。

       

 山本薩夫としては組織や指導者を一律的に見ないというところは原作に忠実で優れていた。また、武士の殺陣や残酷な処刑、農民の乱入などの迫力ある描写はさすがだ。畢竟、組織や指導者の実態、その理想と現実との大きな虚しさを仙太郎を通して描いているところはわかりやすい。  (画像は、サザンクロス情報局webから)

 吉野弘のポエムから。

 「正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい。正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと気づいているほうがいい」という、言葉が沁みてくる。

 

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