新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

インシデントレポートの目的外転用(9)

2012-11-30 10:59:50 | 臨床検査技師の業務

            ヒヤリハットを減らす対策を再三要求

 病院側は、リスクマネジメント委員会で、満足な対策討議を行わずに、特例的に設置した精度管理委員会なるところからの指示として、検体検査のインシデントレポート件数を減らす対策案を、再三にわたって検査室に要求、検査室は、「声だし、指さし確認」「前回検査値との比較」の徹底を図るなど回答。しかし、病院側は「もっとましな対策を示せ」の一点張りで突き返してきます。

             総合試薬・機器賃貸借方式に珍反論

 検査室は、全国的に急速に波及している「TRL・総合試薬・機器賃貸借方式導入による、オーダリングシステム」を提案。

 これに対する病院側の態度と回答は、TRLの欠点・デメリットを並べ立ててこれを拒否。

 ところが、このTRL導入の拒否理由は、全く別の方式に対して、と云うより、勘違いの大間違い、的外れな拒否理由の回答で、TRLが何たるかも知らない、調査もしない、検討もしない、委員会にもかけない、それは不知と勉強不足そのものの珍回答でした。 

 珍回答は、次回に譲りますが、笑わないで閲覧してください。

 この段階で、「市内の検体検査下請け会社に、ブランチラボ化を委託する」ことが先に決定していて、契約が先行していたのです。


インシデントレポートの目的外転用(8)

2012-11-27 10:25:10 | 臨床検査技師の業務

       検査技師への違法な配置換 

 臨床工学技師で検査科長でもあり、病院事務長も兼任している証人が審問のなかで、次のような重大な過ちを犯していることがはっきりしました。

 

 審査委員の「臨床検査技師の採血行為は、臨床検査技師の本来業務ですか」の審問に「本来業務です」と答えています。

 

 検査技師採血行為について、昭和45年12月3日・医事201・各都道府県医務主管部局長宛・厚生省医務局医事課長通知・第3 臨床検査技師の行う採血行為について

 

 「・・・診療の補助として医師の具体的な指示を受けて・・・採血行為それ自体は臨床検査技師の本来業務ではないこと。・・・その業務として採血行為が明示されていないものであること」このように明確な通知がされていることを、検査科長として認識がされていないことは職務上、重大な過ち、認識不足にあることは明白です。

 

 これによって、インシデントレポートのすべてに、検査技師の「認識不足」によるヒヤリ・ハットだと断定し、患者への危険を避ける目的で検体検査業務から排除し、検査技師の本来業務でない採血専門技師として、外来の小部屋に隔離するような配置転換を強行したのです。

 

 検査技師の遭遇するアクシデントで最も多い業務は、採血行為によるもので、いくつかの裁判も提起されています。

 

 国家試験により免許を取得して30年のベテラン検査技師を、「ミスが多い」「認識が足りない」「モチベーションが低い」との理由をつけて、最も危険の伴う、そして例のない採血行為専従に配置換することは、病院側の大きな自己矛盾です。

 

 その裏には、病院自前の検体検査を、下請け検査所に全面委託する、いわゆるブランチラボ化の計画が着々とすすめられ、労働組合幹部を排除する下心が垣間見えてきます。

 

 「検査技師としての給与を払っているから、不利益はないだろう」という病院側の金銭感覚に怒りさえ覚えました。 

 


インシデントレポートの目的外転用(7)

2012-11-22 12:19:14 | 臨床検査技師の業務

        労働組合対策はいよいよ熾烈に!

 インシデントレポートの収集、整理、共有、原因究明、危険度の判定まではいいとして、その後の討議、研究調査、フイードバック、公開広報、共有、再発防止策がほとんど討議されず、依然として再三にわたってリスクマネジメント委員会は、検査室に対し、「どう改善する気か」と迫るばかりで、病院長は「モチベーションが足りない」というばかり。

 およそ管理者や上司が、部下の職員に「モチベーションの不足」を嘆くとき、自らの管理・指導能力のなさを曝け出し棚にあげて、部下職員を「ダメ人間」にしたがるものです。

 そこには相互信頼も尊敬も協働意識も芽生えません。

 S会病院の臨床工学士が、事務長に抜擢されました。抜擢された事務長は、そのまま検査科長兼任になりました。

 医療労働組合対策の一環としての監視行為か、嫌がらせなのか、これにはある種のプレッシャー的効果を狙った意図がうかがえます。

 検査科内で一緒にインシデントレポートについて、ひざ突き合わせて話し合ったり、改善策を真剣に討議した形跡は微塵もありません。

 およそ検査技師のカリキュラムと違う職員が、病院事務長に抜擢されるのはいいとしても、検査室全般を管理・指導するというのは、あまりにも意図的で異例な人事を感じさせます。 

 そのうえ、検体検査管理加算Ⅱを取得している病院ですから当然、検査室に常勤している医師がいるはずですが、影も形もなく、リスクマネジメント委員にも名を連ねていませんし、検査科中心の発言記録にも一切ありません。

 常時0検査技師の仕事の近くにいて、検体検査全般を管理し、評価・判定し、臨床にフィードバックするのが任務ですから、専従医師は常時、申立人である0検査技師の技術や技量、性格や適格性まで、十分見抜いているはずですが、この専従医師の意見などは一切記録にないのです。

 法に定められた検体検査管理加算Ⅱを診療収入として取得するために必要な専従医師が、もともといないからなのでしょう。

 病院事務長であり、検査科長でもある臨床工学士は、リスクマネジメントの中心的事務を司り、検査科対策のために、新たに創った精度管理委員会の、ここでも中心役割を担って奔走しています。

 この事務長の証言。「検査技師の採血行為は、検査技師の本来業務です」といい切った法規違反の証言や、「インシデントレポートの多いことが、本件労働審問の発端である」などの常識外れの間違った証言は、病院事務長としてあるいは検査科長として、この領域の関係法規不知や知識をわきまえない証明ではないでしょうか。

 今月末か、来月初頭には、労働委員会から審問の決定がだされる模様です。


インシデントレポートの目的外転用(6)

2012-11-18 11:09:48 | 臨床検査技師の業務

           報告者を「吊るし上げ?」 

 厚労省のリスクマネジメントマニュアル作成指針は「インシデントレポートと評価の分析について、「ヒヤリハットレポートを提出した者に対し、当該報告を提出したことを理由に不利益処分を行ってはいけない」と敢えて強調しています

 各大学病院や大学院などについて検索したり、指針を取り寄せたりした結果、ほとんどのマニュアルは、・・・・・

 ①絶対にミスやエラーの責任を問うものであってはいけない。  ②非懲罰性の禁止 ③報告者への配慮  ④報告者へのフォロー体制  ⑤フィードバック体制(作成者に懲罰的な目的を負わせない)  ⑥「吊るし上げなどもってのほか」

 などなど、インシデントレポートの目的をふまえ、より良い制度に高めるために、注意し守るべき具体的な事例まであげて、目的外転用や、経営者にとって都合のいいように悪用することを厳に戒めています。

 標的のように睨まれた検査科についてのインシデントレポートは、7年間で49件、そのうちレベル3は僅かに4件、あとはすべてレベル0~2、外来や障害病棟・一般病棟に比較しても、発生比率・人員比率・数/人にしても、けっして「報告数が多い」とは言えません。

 検査室は、どんな小さなヒヤリハットも、真面目に忠実に報告していた跡が見えます。

  リスクマネジメント委員会の迷走劇

  しかし、病院側は、インシデントレポートの数が多いことで、医療の質が維持できない、と云ったストーリーに添って、リスク(危機・損害)マネジメント(管理・管理者)委員会は、その設置目的と任務を果たすどころか、あらぬ方向に迷走します。

 本来の任務は、レポートの収集、整理、事件の共有、発生原因の究明、危険度の判定、これらを総合して再発防止の具体的方針を策定、これを公開、広報し、危機や損害の再発防止、または最小限にくい止める任務と責任を負うはずです。

 ところが、レポート提出者に対して執拗にレポートの減少と、そのための対策案の提出を求め、再三にわたって、一方的にインシデントの発生の責任追及を迫る挙にでました。

 その裏には、労組結成の中心である検査科と、今回審問の申立人で、労組幹部でもあるO検査技師への標的化の意図が隠されているのでしょうか。

 その一方、裏では、検体検査の全面ブランチラボ化(民間検査会社への外注化)の計画が着々と進められていて、O検査技師の解雇も秘かに練られていました。


インシデントレポートの目的外転用(5)

2012-11-13 15:42:53 | 臨床検査技師の業務

       病院側のボタンの掛け違い?

 S病院側・被申立人代理人(弁護士)による病院事務長に対する審問、冒頭の次の問いかけ「まず、今回の体制というものが行われるきっかけとは何だったのですか」に対する、証人である病院事務長は、「平成22年の5月に起きたインシデントとアクシデント・レポートが発端であります」と証言しおています。明らかに、ボタンの掛け違い!がここにあると直感しました。

 そもそも、インシデント・レポートとは、業務上で起こった小さな事故・事件・ミス、あるいは出来事を、携わった本人が報告書として報告するものです。医療現場で患者に影響を及ぼすことはなかったが、日常検査の中で「ヒヤリ」としたり「ハッ」とした経験を「ヒヤリハット」とよんでいることで、人は、どんなに注意していても過ちを犯す、これを「ヒューマンエラー」すなわち「人間的な過ち」として受け入れることを前提にして成り立っています。

 インシデント・レポートの目的は、報告された事例を分析して、類似する過ちの再発や、医療事故・医療過誤の発生を未然に防止し、共有することにあります。

 このレポートが、多いからといって、「注意力が足らない」とか「素質がない」あるいは「知識や技術が低い」いわんや「勤務評定」の材料にされたのでは、あってはならない、甚だしい目的外の転用です。

 本審問に至った申立ては、病院管理者の、このボタンの掛け違いが発端であり、次から次へと迷走したところに問題があります。

 厚生労働省リスクマネジメントマニュアル作成指針(2000年8月22日発)は、次のように、明確に目的外転用を戒めています。