新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

インシデントレポートの目的外転用(5)

2012-11-13 15:42:53 | 臨床検査技師の業務

       病院側のボタンの掛け違い?

 S病院側・被申立人代理人(弁護士)による病院事務長に対する審問、冒頭の次の問いかけ「まず、今回の体制というものが行われるきっかけとは何だったのですか」に対する、証人である病院事務長は、「平成22年の5月に起きたインシデントとアクシデント・レポートが発端であります」と証言しおています。明らかに、ボタンの掛け違い!がここにあると直感しました。

 そもそも、インシデント・レポートとは、業務上で起こった小さな事故・事件・ミス、あるいは出来事を、携わった本人が報告書として報告するものです。医療現場で患者に影響を及ぼすことはなかったが、日常検査の中で「ヒヤリ」としたり「ハッ」とした経験を「ヒヤリハット」とよんでいることで、人は、どんなに注意していても過ちを犯す、これを「ヒューマンエラー」すなわち「人間的な過ち」として受け入れることを前提にして成り立っています。

 インシデント・レポートの目的は、報告された事例を分析して、類似する過ちの再発や、医療事故・医療過誤の発生を未然に防止し、共有することにあります。

 このレポートが、多いからといって、「注意力が足らない」とか「素質がない」あるいは「知識や技術が低い」いわんや「勤務評定」の材料にされたのでは、あってはならない、甚だしい目的外の転用です。

 本審問に至った申立ては、病院管理者の、このボタンの掛け違いが発端であり、次から次へと迷走したところに問題があります。

 厚生労働省リスクマネジメントマニュアル作成指針(2000年8月22日発)は、次のように、明確に目的外転用を戒めています。