新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

医療と国民皆保険の崩壊

2008-08-30 09:40:01 | 医師不足の深層探究

      県立大野病院産科事件の波紋(4)Dsc02455

        福島地検、控訴断念、傷痕は?

 昨日(29日夕方)福島地検は「控訴しないことを決めた」と発表しました。

 加藤克彦医師は「支えてくださった皆様に大変感謝しております。これからも、地域医療に私なりに精一杯取り組んでまいります。あらためまして、患者さんのご冥福をお祈り申し上げます」とのコメントがありました。

 弁護団は「検察官が主張する医療措置について、全く立証されない本件では、控訴断念が当然の結論であると考えます」とのコメント。

 控訴断念は、ひとまずホッとしたことは事実ですが、1年以上も経過しての現職医師の逮捕、裁判、福島県当局側のとった「逃げ」の対応、捜査した富岡警察への県警本部長表彰、これはら一体何を残し、どう結末をつけるのか?疑念と悔恨が消え去ることはありません。

 それよりなにより、我が国の産科医療現場に残した、計り知れないほどの大きな傷痕は、どう、そしていつ修復されるのでしょうか?

 安心して、喜んで子供の産める環境は、いつ取り戻せるのでしょうか?

夏休み最後、ラストランのD51が、水上駅を目指して走って行きました。 


医療と国民皆保険の崩壊

2008-08-23 10:45:58 | 医師不足の深層探究

        県立大野病院産科事件の波紋(3)

        逮捕・起訴で、お産の現場が委縮

 裁判の傍聴席25席に対して788人が並びました。13.4倍と、関心の高さを示していました。

 事件後、産科医不在となった大野病院の産科は休診、小児科の診察室にとってかわりました。

 加藤医師に落ち度があったと処分した福島県当局は、急遽、一つの病院を休診にし、2つの県立病院の産科を統合して、2人医師制を敷きました。一人医長の下では、同じ事件が繰り返される危機感を持ったからの措置でした。

 妊娠10か月の20代の女性は、60キロも離れた産科のある病院に、片道2時間、自らハンドルを握っての通院を余儀なくされています。

 福島県立医科大学が産科医を派遣している病院から、医師一人での出産を取りやめるために、医師を引き上げたからです。

 「事件はどこでも起こる」「帝王切開手術等、一人医師体制で続けるのは限界」として訴訟のリスクを回避するためでもあります。

 加藤克彦医師が起訴された3月、それまで福島県内で31の病院がお産を取り扱っていましたが、21病院にまで激減しました。

 その結果、会津中央病院に妊産婦が集中することになりました。5月だけで73件、前年同月より40件も急増したわけです。

 院長は「80件を超えれば、スタフがもたない」と、院長自らも当直に入っています。

         現場の士気が落ちてしまう危機!

 事件の波紋は全国に拡散しました。

 「お産現場の士気が、ムチャクチャ落ちた」

 「こんな仕事は続けられない」と病院勤務を退職してとアルバイト医師への転向。

 「前置胎盤や双子出産は、ハイリスクだ」として、いままで行っていた出産を、大学病院に回すなど、リスク回避の傾向が顕著になっています。

 1人産科医病院の退職による休診や廃止する病院が増え、大学病院をはじめ、複数の産科医のいる大病院に妊産婦が集中することで、こちらは悲鳴を上げる状態となり、妊産婦のタライ回しが続発する可能性は減っていません。

  あらたに1人産科医長になる医師は、ほとんどないほど、萎縮しています。

 結果として、その波紋は、日本中の妊産婦と、おなかの赤ちゃんに降りかかっています。 


医療と国民皆保険の崩壊

2008-08-21 09:39:34 | 医師不足の深層探究

       県立大野病院産科事件の波紋(2)

       福島島地裁「無罪」判決を言い渡す。

 福島島県立大野病院産科医長、加藤克彦医師の判決公判で、鈴木裁判長は「無罪」を言い渡しました。

 検察側は「胎盤剥離による大量出血は予見されたものであり、直ちに中止して、子宮の全摘手術に切り替えるべきだった」と過失を主張、さらに「医療事故を届け出なかった義務を怠った医師法違反」を争点としました。

 弁護側は「いったん剥離にかかったら中断することなく、剥離を終えた段階で止血を図るのが一般的な施術で、最善を尽くした」と反論、届け出なかったことについては「上司にも指示を仰ぎ、異常死とは認識しなかった」としていました。

 検察側の2人の産婦人科医の証人、1人は「週産期医療」の専門家でなく、癒着胎盤手術の経験もない医師と、もう1人は「腫瘍学」が専門で、胎盤の専門的な研究は皆無の医師で、実際の症例を1例もあげることない証言に終りました。

 専門外の医師の証言をもとにした検察側に、逮捕の必然性と、起訴に持ち込むだけの自信も確証もない状態で裁判に持ち込み、しかも現役医師に手錠をかけた逮捕劇、マスコミを煽情的に利用したふしがあります。

        お産施設に与えた衝撃と波紋 

 一部のマスコミは、検察側の一方的な情報に踊らされ、「悪徳医師像」を作り上げ「杜撰な医療」を告発するかの報道も見られました。

 平岩主任弁護士は「巧妙心にはやった起訴としか考えられない」ことを強調していました。

 毎年55人もの妊産婦が亡くなっていることをみても、お産は、妊産婦と生まれくる子供の命を賭けた、人生最大の大仕事であり、それだけに抱えるリスクもまた、大きいものです。 

 お産施設に与えた衝撃は甚大で、現場の士気を極端に「萎え」させる波紋となって広がるきっかけとなりました。 


医療と国民皆保険の崩壊

2008-08-18 14:55:26 | 医師不足の深層探究

     県立大野病院産科事件の波紋(1)

        8月20日・福島地裁判決

 2004年2月17日、福島県立大野病院産婦人科で、29歳(当時)妊婦の帝王切開により、無事赤ちゃんを出産したが、前置胎盤に胎盤癒着が認められ、子宮摘出の必要と診断、一人産科医長の加藤医師は、子宮温存を希望する妊婦の希望を受け入れ胎盤剥離手術を続行、大量出血、高単位の濃厚赤血球輸血を繰り返すうちに、心室細動に至り、懸命な蘇生を施すも死亡するに至りました。

 2年後の2006年2月18日、業務上過失致死罪・医療事故届出義務違反容疑者として富岡署により逮捕、同年3月10日、福島地裁に起訴。

        不可解な逮捕劇演出と報道

 この逮捕をめぐって警察の不可解な行為が注目を集めたのは、事前に逮捕の通知を受けたマスコミが殺到「手錠」をつけられた加藤医師の姿が全国に報道されました。

 年間200人もの出産を一人で取り上げ、休暇も取れず旅行することすらも無かった加藤医師は、臨月の妻おも抱えて、逃亡する意志は皆無であり、しかも、事件の証拠となるカルテ等は既に、福島県医療事故調査委員会の手中にあり、証拠隠滅の恐れも全くない状態での逮捕となりました。

 一人医長の大野病院産科は閉鎖したまま、多くの妊婦は右往左往が続いています。

 拘留中に妻は出産、警察は「嫌がらせ」のタイミングを狙ったか、また、取り調べ中検察官は「あなたは殺人者だ」と暴言、捜査側の人間性を疑うとの声も上がりました。

 裁判中にもかかわらず、捜査に当った富岡署には、福島県警本部長表彰が授与されました。

 中立的であるべき公共放送のNHK・6時のニュースで、加藤医師の有罪に立脚したとみられる、煽情的な報道がなされ、地元医師会をはじめ、多数の専門学会から抗議声明が殺到しています。

 「前置癒着胎盤合併症」、産科医にとっては一生に一度遭遇するかしないか、とも言われている希少な例です。

 検察側は加藤医師に「禁固1年・罰金10万円」を求刑、県当局は、早々と減給1か月の処分を科しました。

 検察側は、論告の中で「臍帯」を「ジンタイ」と読みあげる失態を演じるなど、医学的素人ぶりを曝して失笑をかう場面もあったそうです。 

 この起訴によって、多くの一人産科医が退職したり、産科医の標榜を下ろしたり、産科の集約化による無産科病院や産科の閉鎖が急増し、臨月の妊婦のタライ回しが増えています。

 不幸にして亡くなった妊婦の無念、残された遺族の心情も察するに余りありますが、日本の医療史の分岐点とも云える、注目の一審判決は、いよいよ明後日、20日に迫りました。     


後期高齢者に反乱

2008-08-05 11:05:55 | 後期高齢者医療

      「後期高齢者医療制度」のからくり(16)

         「口座振替」しないと損になる

 後期高齢者の怒りに驚いた政府は、慌てて制度の修正を小出しにしてきたその一つ、年金からの保険料天引きを、「口座振替にしてもいい」と、一部変更してきました。

 内閣支持率低下と、近づく総選挙を意識した、小手先見え見えの修正です。

 とは言っても「口座振替」の手続きをした場合と、手続きをしなかった場合と、どう違うか、比べてみます。

          急いで「口座振替」の手続きを!

 たとえば、8月20日ころまでに「口座振替」の手続きを済ませますと、10月の支払い分から、年金からの「天引き」を中止させることができます。

 もっと大きいのは「口座振替」で支払った保険料(税)は、口座名義人の「所得税」や「住民税」の「社会保険料控除」の適用を受けることができます。

 手続きしないと、「社会保険料控除」の対象になりません。

 手続きは、世帯主(たとえば旦那)の年金が振り込まれる金融機関の受付に、通帳と同じ印鑑を持って、「振替依頼」の書類に書き込む手続きをします。

 このとき、配偶者(妻)の分も、旦那の預金口座から一緒に振替することもできます。配偶者が旦那と別の金融機関に年金が振り込まれていても、かまいません。

 手続きの済んだ「振替依頼書」は、金融機関から市区町村の役所に届けられますから、一度で済みます。

 夫婦合わせると、年間では大きな額になり、少しでも節税のたしにはなるでしょう。

 しかし、後期高齢者のなかには、この手続きの意味がわからない方や、手続きが面倒だと思う方もたくさんいます。

 急いで手続きするように、伝えてください。

 また、「振替納付」できる人には一定の条件もありますので、詳細は役所の窓口に電話で問い合わせると、「口座振替」が可能かどうか調べて教えてくれます。