健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

野菊花

2014年04月10日 | 健康
○野菊花(のぎくか)

 近畿以西、朝鮮半島、中国、台湾に分布しているキク科の多年草シマカンギク(Chrysanthemum indicum)や北野菊の頭状花を用いる。中国では全草も野菊または苦薏と称して薬用にする。

 山地や丘陵地の道端などでみられるキクで、直径1cmくらいの黄色い頭花が咲く。栽培のキクはシマカンギクとチョウセンノギクを交配したものと考えられ、栽培品種のキクの花は菊花という。菊花を甘菊花というのに対し、野菊花は苦いため苦薏とも呼ばれている。

 アブラギク(油菊)という名は、このキクの花や葉からゴマ油で抽出した精油成分を「菊油」として利用していたことに由来する。菊油には殺菌力があり、切り傷ややけどの外用薬として用いたほか、島津藩では蒸留したものを「秘薬薩摩の菊油」と称して下痢や腹痛の薬に使っていた。現在、日本の市場では菊花として、この野菊花が流通している。

 シマカンギクの花にはクリサンテミン、αツヨシ、dl-カンフルなどが含まれ、降圧作用、抗菌作用が認められている。中国医学では清熱解毒・降圧の効能があり、感冒、肺炎、胃腸炎、皮膚化膿症、高血圧などに用いる。乳腺炎や皮膚化膿症には金銀花・蒲公英などと配合する(五味消毒飲)。近年、高血圧の予防に野菊花茶が茶剤としてよく利用されている。本来、菊花と効能は異なっているが、日本漢方では慣例として菊花と同様に用いている。

忍冬

2014年04月09日 | 健康
○忍冬(にんどう)

 日本、朝鮮半島、中国に分布するスイカズラ科のつる性常緑低木スイカズラ(Lonicera japonica)の茎および葉を用いる。中国では忍冬藤あいるは金銀藤という。現在、中国ではおもに花蕾の金銀花を用いて茎や葉はあまり用いないが、日本では民間薬としても、漢方薬としても全草がよく用いられている。

 葉にはタンニンやフラボノイドのロニセリンが含まれている。漢方では清熱解毒・止痛の効能があり、熱病、咽頭痛、下痢、腫れ物、筋肉や関節の痛みに用いる。金銀花とほぼ同じ効能があるが、解毒のほかに関節などの止痛作用もある。また内服だけでなく、外用薬としても皮膚の湿疹や化膿症、痔、関節炎などに用いる。

 日本の民間では葉を利用した忍冬茶(すいかずら茶)が毒消しの妙薬として知られ、腫れ物や痔、淋疾などに用いられている。今日でも家庭薬にしばしば配合されている。また煎液は扁桃炎などのうがい薬としても応用されている。そのほか浴湯料として風呂に入れ、腰痛や冷え性、痔、あせもなどに用いられる。

人参

2014年04月08日 | 健康
○人参(にんじん)

 朝鮮半島、中国東北部を原産とするウコギ科の多年草オタネニンジン(Panax ginseng)の根を用いる。神農本草経に収載されている上薬の一つで、根が人の形に似ていることから人参といわれ、古くから不老長寿、万病薬として珍重されていた。現在、野生の人参は極めて稀である。ときに中国東北部の吉林省や朝鮮で発見され、野人参といわれて非常に高価である。

 日本には天平時代に渤海国からの貢献品として初めて伝えられた。日本では高麗人参とか、朝鮮人参などと呼ばれ、江戸時代には非常に高価な薬であり、偽者や粗悪品が出回った。徳川幕府は事態の改善をはかるため、国内での栽培を推奨した。1728年、田村藍水らの努力により日光の御薬園で栽培に成功し、その人参の種子が各藩に分与されたことからオタネニンジン(御種人参)の名がついた。現在でも長野県の丸子、福島県の会津若松、島根県の大根島などで栽培されている。

 学名はパナックス・ジンセンといい、パナックスとは全てを治療する万能薬という意味であり、ジンセンは中国の発音による。栽培品では播種後4~6年の根を用いる。オタネニンジンと類似した植物として日本ではトチバニンジン(P.japonicus、生薬名:竹節人参)、北アメリカではアメリカニンジン(P.quinquefolium、生薬名:西洋参)、中国南部ではサンシチニンジン(P.notoginseng、生薬名:三七)が知られている。近年、中国で人参の代用品として用いられている党参はキキョウ科の植物の根である。ちなみに野菜のニンジンはセリ科の植物で、中国では人参といわずに紅蘿葡という。

 人参は部位や修治により様々な名称がある。掘り出して水洗いしたままの生の人参を水参といい、薬用酒の原料として用いる。細根を除いて皮を剥かずにそのまま乾燥したものを生干人参、細根を除いて85℃の湯に10分間つけて乾燥したものを御種人参、湯通しした後に周皮を剥いで乾燥したものを白参という。

 一方、切り落とされた細根を乾燥したものを鬚人参あるいは毛人参という。また、せいろで2~4時間蒸した後に熱風乾燥し、赤褐色になったものを紅参という。さらに湯通しや紅参を作るときに使った熱湯を煮つめたエキスを参精という。一般に、播種後4~5年目に間引きしたものは白参や湯通し人参などに加工され、6年間育成したものは紅参に加工される。

 成分には人参サポニンとしてジンセノシドRo、Ra~Rhなどが報告されており、そのほかパナキシノール、βエレメン、ゲルマニウムなどが含まれる。ジンセノシドなどによる薬理作用としてタンパク質、DNA、脂質などの合成促進作用、抗疲労・抗ストレス作用、強壮作用、降圧作用、血糖降下作用、認知症改善効果など数多くの研究結果が報告されている。

 漢方では代表的な補気薬であり、元気を補い、脾胃を健やかにし、神経を安定させ、津液を生じる効能がある。ただし、湯本求真の指摘するように「人参は万能の神薬に非ず」であり、一般に高血圧や実熱証の時には使用すべきではない。

乳香

2014年04月04日 | 健康
○乳香(にゅうこう)

 紅海沿岸、アラビア半島からトルコにかけて分布しているカンラン科の低木ニュウコウジュ(Boswellia carterii)の膠状の樹脂を用いる。インドでは同属植物のボスウェリア・セラータ(B.serrata)の樹脂がインド乳香(サライグッグル)として用いられている。

 幹の皮に傷をつけ、数日後に傷口からしみ出して固まった樹脂を採取する。芳香のある乳白色の樹脂が浸出するため乳香の名がある。主産地はソマリアやエチオピア、アラビア半島南部である。

 没薬とともに古代オリエント、エジプト、ギリシャ・ローマ時代の代表的な香料であり、宗教儀式に葷香料という用いられた。古代からインドでは独自の植物樹脂に乳香を混ぜて用いており、これが5~6世紀の中国に伝わって葷陸香と称されていた。このため乳香の別名を薫陸香ともいうが、薫陸香はインドに産するウルシ科の植物を基原とする説がある。

 また地中海沿岸に分布するウルシ科のマスチックスノキ(Pistacia lentiscus)という植物の樹脂も乳香として伝えられたこともあるが、これは現在では洋乳香(マスティック:Mastic)と称されている。

 乳香の成分としてボスウェリン酸やオリバノセレンなどが知られている。ローマ時代のプリニウスは乳香をドクニンジンの解毒薬とし、アラビア医学では解熱・解毒薬として用いていた。近年、ボスウェリン酸の特異な抗炎症作用が注目されており、リウマチや関節炎などの鎮痛薬として用いられ、また潰瘍性大腸炎などに対する効果も検討されている。

 漢方では活血・止痛・筋肉痛、皮膚化膿症などに用いる。とくに乳香と没薬は瘀血による疼痛に効果があるといわれ、しばしば没薬と併用して外科や整形外科領域の鎮痛薬として用いられる。また没薬とともに粉末にしたものを傷や腫れ物に外用する。

肉桂

2014年04月03日 | 健康
○肉桂(にっけい)

 中国南部やインドシナ半島に自生し、栽培されているクスノキ科の常緑高木ケイ(Cinnamomum cassia)の樹皮を肉桂といい、若枝は桂枝という。ケイは別名をシナ肉桂とかトンキン肉桂ともいう。学名をシナモム・カシアといい、英語ではカシアと呼ばれている。一般に欧米でシナモンといえば、主にセイロン肉桂のことを指す。

 樹皮のうち、おもに樹齢10年以上のケイから採取したものが肉桂として用いられる。その外皮を去ったものを挂心という。現在、日本薬局方では桂枝としてのみ規定しているため、桂枝と肉桂の区別がされていない。

 日本に流通している桂皮の多くは広南桂皮と呼ばれるもので、老木の枝や樹齢6~7年の比較的若くて薄い樹皮である。中国では特に樹齢30年以上の樹皮が肉桂として尊ばれている。一方、日本産の肉桂とは、日本の暖地で栽培されているクスノキ科の常緑高木ニッケイ(C.sieboldii)の根皮であり、かつて京都の八つ橋やニッキなどの菓子の原料や香料として用いられていたが、薬用としては用いられていない。

 ケイの樹皮には芳香性の精油成分であるケイアルデヒドが含まれ、血行促進、鎮静・鎮痙、解熱、抗菌、利尿作用などが知られている。漢方では補陽・温裏・止痛・温通などの効能があり、体や手足の冷え、衰弱、腹痛、下痢、無月経、のぼせなどに用いる。また肉桂は「血脈を疎通する」とか「百薬を宣導する」といわれるが、これは肉桂の血行促進作用を表したものと考えられる。

 肉桂と桂枝はいずれも温める作用があるが、肉桂は大熱で作用が強く、体内(裏)を温め、下って腎陽を補うのに対し、挂枝は温で体表を温めて発表し、おもに上行して経脈を通じるといわれる。このため桂枝は解表薬、肉桂は温裏薬に分類されている。

日日草

2014年04月02日 | 健康
○日日草(にちにちそう)

 マダガスカル島原産で、熱帯地方に栽培されているキョウチクトウ科の多年草ニチニチソウ(Catharanthus roseus)の全草を用いる。日本には江戸時代に渡来し、観賞用に栽培されているが、一日ごとに花が咲き変わるのでその名がある。

 ヨーロッパでは古くから民間療法で糖尿病に用いられてきたが、研究の中で毒性が強いことが問題となり、顆粒球を減少させ骨髄を抑制する作用のあることが明らかになった。その後、抗腫瘍薬の開発が進められ、1958年、葉から抽出されたアルカロイドに抗白血病作用があることが発見された。

 含有アルカロイドとして細胞分裂を阻害し、抗腫瘍活性を有するビンブラスチンとビンクリスチンがあり、ビンブラスチンはホジキン病、悪性リンパ腫、絨毛性腫瘍、ビンクリスチン(オンコビン)は小児の急性白血病、悪性リンパ腫、小児腫瘍に応用されている。副作用には胃腸障害、脱毛、白血球減少などがみられる。

 民間では葉をすり潰して水を加えたものを胃潰瘍、消化不良、便秘などのときに用いるが、毒性があるためあまり使用しないほうがよい。

肉豆ク

2014年04月01日 | 健康
○肉豆蔲(にくずく)

 モルッカ諸島原産の常緑高木であるニクズク科の常緑高木ニクズク(Myristica fragrans)の種子を用いる。現在ではマレーシアやインドネシア、東アフリカ、西インド諸島などの熱帯地方でも栽培されている。

 桃に似た5~9cmの果実の中に3cmくらいの仮種皮に被われた一つの種子があるが、この仮種皮および堅い種皮を除いたものが肉豆蔲、つまり香辛料のナツメグである。この仮種皮は香辛料のメース(Mace)であり、橙色の網目状のため中国では玉果花あるいは肉豆蔲衣と呼ばれている。両者には同じような芳香があるが、メースの香りのほうが強い。ナツメグはハンバーグなどの挽肉料理、メースは焼き菓子などに利用されるスパイスである。

 ニクズクは古代インドで頭痛薬や胃腸薬として有名であり、インド伝承医学アーユルヴェーダではとくにメースを盛んに使用した。さらに10世紀にはアラビアで、16世紀にはヨーロッパでも万能薬として用いられた。中国では宗代の「開宝本草」に初めて収載され、豆蔲に似ていることから名付けられた。豆蔲というのはショウガ科の白豆蔲のことである。

 種子にはミリスチシン、カンフェン、ピネン、オイゲノール、サフロールなどが含まれ、独特の芳香がある。種子やニクズク油には幻覚や知覚障害を引き起こす有毒作用があり、この成分はミリスチシンといわれている。

 漢方では温裏・収渋・理気の効能があり、消化不良、腹痛、下痢、嘔吐などに用いる。とくに胃腸の虚寒や気滞のために腹部が膨満して痛み、嘔吐や食欲不振、下痢などが続くときに用いる。たとえば早朝になると下痢する症状には補骨脂・五味子などと配合する(四神丸)。家庭薬の太田胃酸やパンシロンなどの胃腸薬にも配合されている。

 一般に急性の下痢や炎症性の下痢には用いない。多量に服用すると痙攣や幻覚を生じ、肝臓障害ひきおこすことがあり、また過去には堕胎薬として用いられたこともある。