健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

薔薇花

2013年05月14日 | 健康
○薔薇花(しょうびか)

 日本、朝鮮半島に分布するバラ科のつる性に落葉低木ノイバラ(Rosa multiflora)の花を用いる。ノイバラの果実(偽果)は営実であり、葉を薔薇葉、根を薔薇根という。また花を蒸留したものは薔薇露という。

 ノイバラは最もよく見られる野生のバラで、バラの接ぎ木の台木としても栽培される。花は白色で芳香があり、成分にはアストラガリンなどが含まれる。一方、ヨーロッパでは古くから薬用バラ(Apothecary Rose)としてバラの原種であるガリカ種(R.gallica)の花びら(ローズペタル)が消化薬や口内炎の治療、疲労回復や精神安定などのためにハーブティーとして利用されてきた。

 漢方では解暑・健胃の効能があり、暑気払いや健胃薬として用いる。口内炎や咽頭の腫痛などに桔梗・甘草などと配合する(薔薇湯)。なお薔薇露も口内炎の治療に用いる。また薔薇葉は排膿薬として化膿症に用いる。薔薇根は去風湿・活血・解毒の効能があり、下痢、関節炎、鼻血、痔出血、化膿症などに用いる。

 近年、ガリカ種などのバラの花びらエキスにポリフェノールの一種であるオイゲニンが含まれており、抗酸化作用や抗アレルギー作用(ヒスタミン遊離抑制作用)が認められ、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和する効能が期待されている。

小麦

2013年05月13日 | 健康
○小麦(しょうばく)

 カスピ海南岸を原産とするイネ科の越年草コムギ(Triticum aestivum)の種子あるいは粉を用いる。コムギは紀元前7000年ごろから栽培が始まり、世界で最も生産が多い穀物である。

 この栽培されるコムギの9割はパンコムギで、日本のコムギも全てこれである。コムギはおもに小麦粉にされるが、小麦粉には主成分のデンプンのほかにグルテンの特性により水を加えてねると粘弾性をもったドウ(パン生地)を作ることができる。

 近年、健康食品素材として小麦胚芽が注目されている。小麦胚芽に含まれる栄養素としてビタミンE、ビタミンB1・B2・B6などのビタミン類、カルシウム、鉄などのミネラル、アミノ酸などのほか、オクタコサノールが含まれている。オクタコサノールは、酸素利用を高めて、エネルギー産生を促進する働きがあるとされ、持久力の向上、運動後の筋肉痛の予防などへの効果が報告されている。

 また、外皮は小麦ふすま(小麦ブラン)と呼ばれ、食物繊維が多いため、かつては専ら飼料に利用されていたが、近年、おなかの調子の整える特定保健用食品の素材として認定されている。

 薬用には種子のまま、あるいは小麦粉として用いる。水で研ぐと浮き上がる未成熟な小麦を特に浮小麦という。漢方では安伸・清虚熱・止汗・止渇の効能があり、ヒステリーや煩熱、糖尿病、下痢、癰腫、自汗、盗汗に用いる。

 自汗や盗汗には浮小麦のほうがよいとされ、浮小麦を焦げるまで炒って粉末にしたものを重湯で服用する。女性のヒステリーや子供の夜泣きには甘草・大棗などと配合する(甘麦大棗湯)。自汗や盗汗には黄耆・牡蠣・麻黄根などと配合する(牡蠣散)。また切り傷の止血や火傷には粉を外用する。

樟脳

2013年05月11日 | 健康
○樟脳(しょうのう)

 関東地方以南、四国、九州、台湾、中国南部に分布するクスノキ科の常緑高木クスノキ(Cinnamomum camphora)の根、幹、枝、葉を蒸留精製した顆粒状結晶を樟脳という。

 クスノキは枝や葉をはじめ樹木全体に独特の香りがある。樟脳は特有の芳香を持った極めて消化しやすい白色の結晶でカンフルともいい、水には難溶であるが、エーテルなどの有機溶剤に溶ける。

 樟脳は紀元600年ごろアラビアで貴重な薬として用いられ、アラビア語のカフールがカンフルの語源である。日本には江戸時代に製法が伝わり、薩摩や土佐でつくられ、明治時代には日本の特産品として盛んに輸出された。

 精油成分にはカンファ、カンフェン、カジネン、アセトアルデヒド、ピネン、シネオール、ボルネオール、オイゲノールなどが含まれ、カンファは局所刺激作用、防腐作用のほか、中枢性に血管や呼吸を興奮させ、血圧を上昇して呼吸数を増加させる。また生体内での酸化物であるアロパラオクソカンファは直接的な強心作用がある。

 樟脳は防虫剤や薫香料のほか、セルロイドやフィルム、ボルネオールなどの原料として用いられている。またパイオキソカンファは強心作用のある注射薬(ビタカンファー)として用いられる。

 漢方では開竅・止痛・殺虫の効能があり、意識障害、腹痛、腹部膨満、脚気、歯痛、皮膚病、打撲傷などに用いる。現在ではおもに軟膏やチンキなどの外用薬として神経痛、しもやけ、火傷、打撲傷、皮膚病などに用いる。

 筋肉痛や打ち身、捻挫にはカンフルにハッカ油、チョウジ油などと配合する(タイガーバーム)。チンキ剤を腹部につけると腹部膨満感や腹痛が軽減する。また内服では湿疹や有熱時の意識障害の気付け薬として用いる。ただし服用しすぎると眩暈、頭痛、興奮症状が出現し、さらには痙攣や呼吸衰弱を起こし死に至ることもある。

鍾乳石

2013年05月10日 | 健康
○鍾乳石(しょうにゅうせき)

 石灰岩の洞窟に産出し、つらら状に下がった鍾乳石(スタラサイト:Stalactite)を用いる。

 炭酸塩類の鉱物で、石灰岩の炭酸カルシウム(CaCO3)の水溶液が滴り落ちて長い間に晶出したものである。太いものを鍾乳石といい、細く管状のものは滴乳石という。ただし滴父石は鵝管石のひとつとして扱われることもある。鍾乳石は白色で直径5cmくらいの円柱ないし円錐形したもので硬くて重い。滴乳石は直径1cmくらいの管状で厚さは1mm程度である。

 成分は主に炭酸カルシウムで少量のマグネシウムを含む。漢方では止咳・補陽・通乳の効能があり、咳嗽やインポテンツ、乳汁不足などに用いる。

松藤

2013年05月09日 | 健康
○松藤(しょうとう)

 日本の各地、朝鮮半島の南の済洲島に分布するモクレン科の落葉つる性低木、マツブサ(Schisandra repanda)の蔓や葉を用いる。日本の固有種のため、中国名はなく、中国の松藤とは関係がない。

 樹皮はアカマツに似て、蔓を折るとマツヤニに似た匂いがする。晩秋に果実がつる性の茎にブドウの房のように垂れ下がるため、マツブサ、松藤といった名前がある。

 蔓や葉には精油成分のボルネオール、βピネン、セスキテルペンなどが含まれている。一般に薬湯料として用いられ、皮膚を刺激して血行を改善する作用があり、湯冷めしにくく、リウマチや神経痛、腰痛などの痛みを和らげるといわれている。黒く熟した実は酒に漬けて果実酒として利用されている。

松節

2013年05月08日 | 健康
○松節(しょうせつ)

 中国の中南部の各地に分布しているマツ科の常緑高木タイワンアカマツ(Pinus massoniana)やユショウ(P.tabulaeformis)などのマツの枝や幹の節を用いる。松を基原とする生薬には、幹からとった樹脂の松香、樹皮から抽出したピクノジェノール、葉の松葉、果実の海松子、化石となった琥珀などがある。

 松は赤松、黒松などの五葉松類に区別され、タイワンアカマツなどは二葉松類であり、五葉松に比較すれば材質は硬くて樹脂が多い。松節にはセルロース、リグニン、精油のほか、ピクノジェノールに類似した松ポリフェノールが含まれている。

 漢方では去風湿の効能があり、止痛薬としてリウマチ、こむら返り、膝関節腫張、脚力低下、打撲傷に用いる。煎じて服用するほか、酒に浸したものを内服したり、塗布して用いる。

硝石

2013年05月07日 | 健康
○硝石(しょうせき)

 乾燥地帯の地表や洞窟に風化物として少量産する鉱物、硝石(Niter)を生成してできた結晶を用いる。通常、チリ硝石や瀉利塩、灰硝石、石膏などと同じ場所にある。

 窒素を含む物質や動物質に硝化バクテリアという細菌が作用して産することもある。エジプトやチベットなどの乾燥地帯では糞尿に木灰や石灰を混ぜて堆積し、細菌によって硝酸塩を生じさせ、水で抽出して硝石を作ったという。

 硝石はKNO3を組成とするカリウムの硝酸塩鉱物であり、白色の粉末で水に溶け、焼くと爆発する。黒色火薬の原料であり、日本でも加賀藩がカイコの糞と雑草などを堆肥として生産していた。

 漢方では有毒といわれ、消癥、通便・解毒の効能があり、腹部膨満や腫瘤、腹痛、便秘、腫れ物などに用いる。腹部が硬く膨満して便秘するときには大黄などと配合する(承気丸)。頭痛や頭風、耳聾などに硫黄と配合する(如神丹)。ちなみに傷寒論、金匱要略の中の硝石は芒硝と同じ硫酸マグネシウムであったと考えられている。

生漆

2013年05月06日 | 健康
○生漆(しょうしつ)

 中国、インドを原産とする漆科の落葉高木ウルシ(Rhus verniciflua)の樹脂を用いる。この樹脂を乾燥させて固めたものを乾漆という。ウルシの幹に深い傷をつけ、しみ出てくる半透明で乳白色の粘調な樹液を採取する。

 中国では殷・周の時代から漆液が利用され、日本にも太古に渡来したと考えられ、縄文時代の遺跡から漆塗りの容器が出土している。漆液は空気にさらされると酸化して硬くなり、化学変化に強く、耐久性があるため塗料や接着剤として利用されてきた。

 ウルシに含まれるウルシオールはしばしばアレルギー反応を引き起こし、漆かぶれの状態になる。ちなみに漆かぶれには沢蟹をつぶしたものをつけるという民間療法がよく知られている。

 日本産のウルシの主成分はウルシオールであるが、ベトナム産のアンナンウルシはラッコール、ビルマ産のビルマウルシはチチコールを主成分とし、日本産の品質が最も優れている。一般に薬用には乾漆を用いるが、生薬を丸薬として用いることもある。

生地黄

2013年05月02日 | 健康
○生地黄(なまじおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を用いる。生地黄というのは、採集後3ヶ月以内の新鮮な根のことで、採取した後、乾燥した砂の中で保存したものである。

 日本では国産の新鮮な地黄を生地黄と呼び、入手可能な期間は12~1月と限られている。ただし、実際には日本の市場にはほとんど流通していない。中国では生地黄として鮮地黄(鮮生地)と干地黄(干生地)の両者を含むが、ここでは鮮地黄のことを説明し、干地黄は別項に記す。

 地黄にはイリドイド配糖体のカタルポール、レオヌライド、アウクビン、糖類のマンニトール、スタキオースなどのほか、β-シトステロール、カロテノイドなどの成分が含まれている。地黄エキスでは血糖降下作用や強心・利尿作用、肝庇護作用、抗菌作用などが認められている。

 漢方では清熱・涼血・止血・生津の効能があり、熱病による脱水状態で口渇が激しいとき、斑疹がみられるとき、血熱妄行による出血などに用いる。例えば、熱病に伴う斑疹には犀角・牡丹皮を配合する(犀角地黄湯)。血熱妄行による吐血や下血に搾った汁を単独で、あるいは側柏皮・茜草根などと配合する(四生丸)。発熱時の便秘には玄参・麦門冬などと配合する(増液湯)。微熱や盗汗があり、舌が鏡面舌を呈し、口腔内が乾燥している多ときには沙参・麦門冬なとど配合する(一貫煎)。

 金匱要略ではベーチェット病などと想定されている百合病に対して、百合の煎液に生地黄の汁を加えた処方の記載がある(百合地黄湯)。そのほか傷寒論、金匱要略で生地黄が用いられている処方として炙甘草湯、防已地黄湯がある。ちなみにジオウの汁などを原料とした練り薬に瓊玉膏というのがある。これはジオウの搾汁を3日3晩、蒸しながら練り続けて製造され、薬性を熟地黄へと変化させたものであり、古くから不老長寿の薬として知られているものである。

常山

2013年05月01日 | 健康
○常山(じょうざん)

 東南アジアやインド、中国の南部に自生するユキノシタ科の常緑低木ジョウザンアジサイ(Dichroa febrifuga)の根を用いる。同じユキノシタかにアジサイがあり、やや似ているためにジョウザンアジサイという名がある。

 この若葉も蜀漆と呼ばれて薬用にされる。薬材の根の質は堅くて重く、鶏骨のようであることから、かつて鶏骨常山といわれていた。中国ではクマツヅラ科のクサギ(Clerodendron trichotomum)の根を海洲常山といい、アカネ科のコンロンカ(Mussaenda parviflora)を白常山、ミカン科のコクサギ(Orixz japonica)を臭常山などといい、常山の代用にしていた。

 成分にはアルカロイドのジクロイン(フェブリフジン、イソフェブリフジン)が含まれ、抗マラリア・抗アメーバ赤痢、解熱作用などが認められている。動物のマラリアにはキニーネよりも作用が強いが、人間のマラリアではキニーネより効力が劣る。

 漢方でも抗瘧の効能があり、マラリア(瘧)の治療薬としてよく知られている。マラリアには知母・椰椰子などと配合する(常山飲)。しかし、キニーネよりもはるかに毒性があり、悪心、嘔吐、下痢、胃腸粘膜の充血などの症状がみられる。逆に、この催吐作用を応用して、生のままか大量に用いて痰や毒物を吐かせることもできる。